０１００００α　古今倭歌集巻第一
０１００００β　春歌上
０１０００１δ　ふるとしにはるたちける日よめる
０１０００１ε　ありはらのもとかた
０１０００１ζ　としのうちに｜はるはきにけり｜ひととせを｜こそとやいはむ｜ことしとやいはむ
０１０００２δ　はるのたちけるひよめる
０１０００２ε　きのつらゆき
０１０００２ζ　そてひちて｜むすひしみつの｜こほれるを｜はるかたけふの｜かせやとくらむ
０１０００３δ　たいしらす
０１０００３ε　よみひとしらす
０１０００３ζ　はるかすみ｜たゝるやいつこ｜みよしのゝ｜よしのゝやまに｜ゆきはふりつゝ
０１０００４δ　二条のきさいのはるのはしめのおほみうた
０１０００４ζ　ゆきのうちに｜はるはきにけり｜うくひすの｜こほれるなみた｜いまやとくらむ
０１０００６δ　ゆきのきにふりかゝれるよめる
０１０００６ε　そせいほうし
０１０００６ζ　はるたては｜ゝなとやみらむ｜しらゆきの｜かゝれるえたに｜うくひすのなく
０１０００７δ　たいしらす
０１０００７ε　よみひとしらす
０１０００７ζ　こゝろさし｜ふかくそめてし｜をりけれは｜きえあへぬゆきの｜はなとみゆるか
０１０００７η　あるひとのいはくさきのおほきおほいまふちきみのうたなり
０１０００８δ　二条のきさきの東宮のみやすむところとまうしけるときにむつきのみかの日おまへにめしておほせことあるあひたにひはてりなからゆきのかしらにふりかゝりたるをよませたまひける
０１０００８ε　ふむやのやすひて
０１０００８ζ　はるの日の｜ひかりにあたる｜はなゝれと｜かしらのゆきと｜なるそわひしき
０１０００９δ　ゆきのふりけるをよめる
０１０００９ε　貫之
０１０００９ζ　かすみたち｜このめもはるの｜ゆきふれは｜はなゝきさとも｜はなそちりける
０１００１０δ　はるのはしめによめる
０１００１０ε　ふちはらのことなほ
０１００１０ζ　はるやとき｜はなやおそきと｜きゝわかむ｜うくひすたにも｜なかすもあるかな
０１００１２δ　寛平のおほむときのきさいの宮のうたあはせのうた
０１００１２ε　みなもとのまさすみ
０１００１２ζ　やまかせに｜とくるこほりの｜ひまことに｜うちつるなみや｜はるのはな
０１００１３ε　紀友則
０１００１３ζ　はなのかを｜かせのたよりに｜たくへてそ｜うくひすさそふ｜しるへにはやる
０１００１９ζ　みやまには｜まつのゆきたに｜きえなくに｜みやこはのへに｜わかなつみけり
０１００２０ζ　あつさゆみ｜おしてはるさめ｜けふゝりぬ｜あすさへふらは｜わかなつみてむ
０１００２１δ　仁和のみかとのみこにおましましけるときにひとにわかたまひけるおほみうた
０１００２１ζ　きみかため｜はるのゝにいてゝ｜わかなつむ｜わかころもてに｜ゆきはふりつゝ
０１００２５δ　うたゝてまつれとおほせられしときによみてたてまつれる
０１００２５ε　つらゆき
０１００２５ζ　わかせこか｜ころもはるさめ｜ふるときは｜のへのみとりそ｜いろまさりける
０１００２８δ　たいしらす
０１００２８ε　よみひとしらす
０１００２８ζ　もゝちとり｜なくなるはるは｜ものことに｜あらたまれとも｜われそふりゆく
０１００２９ζ　をちこちの｜たつきもしらぬ｜やまなかに｜おほつかなくも｜よふことりかな
０１００３０δ　かりのこゑをきゝてこしへまかりけるひとをおもてよめる
０１００３０ε　おふしかふちのみつね
０１００３０ζ　はるくれは｜かりかへるなり｜しらくもの｜みちゆきふりに｜ことやつてまし
０１００３１δ　かへるかりをよめる
０１００３１ε　いせ
０１００３１ζ　はるかすみ｜たつをみすてゝ｜ゆくかりは｜はなゝきさとに｜すみやならへる
０１００３２δ　たいしらす
０１００３２ε　よみひとしらす
０１００３２ζ　をりつれは｜そてこそにほへ｜むめの花｜ありとやこゝに｜うくひのなく
０１００３３ζ　いろよりも｜かこそあはれと｜おもほゆれ｜たかそてふれし｜やとのむめそも
０１００４１δ　はるのよむめのはなをよめる
０１００４１ζ　はるのよの｜やみはあやなし｜むめのはな｜いろこそみえね｜かやはかくるゝ
０１００４２δ　はつせにまうつることにやとりけるひとのいへにひさしくやとらてほとへてのちにいたりけれはかのあるしのかくさたかになむやとりはあるといひいたしたりけれはそこにたてりけるむめのはなをゝりてよめる
０１００４２ε　つらゆき
０１００４２ζ　ひとはいさ｜こゝろもしらす｜ふるさとは｜はなそむかしの｜かにゝほひける
０１００４３δ　みつのほとりにむめのはなのさけりけるをよめる
０１００４３ε　い勢
０１００４３ζ　はることに｜なかるゝかはを｜はなと見て｜をられぬみつに｜そてやぬれなむ
０１００４４ζ　としをへて｜はなのかゝみと｜なるみつは｜ちりかゝるをや｜くもといふらむ
０１００４６δ　寛平のおほむときのきさいのみやのうたあはせのうた
０１００４６ε　よみひとしらす
０１００４６ζ　むめのかを｜そてにうつして｜とゝめては｜はるはすくとも｜かたみならまし
０１００４７ε　そせい
０１００４７ζ　ちるとみて｜あるへきものを｜むめのはな｜うたてにほひの｜そてにとまれる
０１００４８δ　たいしらす
０１００４８ε　よみひとしらす
０１００４８ζ　ちりぬとも｜かをたにのこせ｜はるのはな｜こひしきときの｜おもひいてにせむ
０１００４９δ　ひとのいへにうゑたりけるさくらのはなさきはしめたりけるをみてよめる
０１００４９ε　つらゆき
０１００４９ζ　ことしより｜はるしりそむる｜さくら花｜ちるてふことは｜ならはさらなむ
０１００５５δ　やまさくらをみてよめる
０１００５５ε　そせい
０１００５５ζ　みてのみや｜ひとにかたらむ｜さくらはな｜てことにをりて｜いへつとにせむ
０１００６２δ　さくらのはなのさかりにひさしくとはさりけるひとのきたりけるときによみける
０１００６２ε　よみひとしらす
０１００６２ζ　あたなりと｜なにこそたてれ｜さくらはな｜としにまれなる｜ひともまちけり
０１００６３δ　かへし
０１００６３ε　なりひらのあそむ
０１００６３ζ　けふこすは｜あすはゆきとそ｜ふりなまし｜きえすはありとも｜はなとみましや
０１００６４δ　たいしらす
０１００６４ε　よみひとしらす
０１００６４ζ　ちりぬれは｜こふれとしるし｜なきものを｜けふこそさくら｜をらはをりてめ
０１００６５ζ　をりとらは｜をしけにもあるか｜さくらはな｜いさやとかりて｜はるまてはみむ
０１００６６ε　きのありとも
０１００６６ζ　さくらいろに｜ころもはふかく｜そめてけり｜はなのちりなむ｜のちのかたみに
０１００６６ζｎ３句「けり」右傍「きむ」。
０１００６８δ　亭子院のうたあはせのときによめる
０１００６８ε　いせ
０１００６８ζ　みるひとも｜なきやまさとの｜さくらはな｜ほかのちりなむ｜のちそさかまし
０２００００α　古今倭歌集巻第二
０２００００β　春歌下
０２００６９δ　たいしらす
０２００６９ε　よみひとしらす
０２００６９ζ　はるかすみ｜たなひくやまの｜さくらはな｜うつろはむとや｜いろかはりゆく
０２００７０ζ　まてといふに｜ちらてしとまる｜ものならは｜なにをさくらに｜おもひまさまし
０２００７１ζ　のこりなく｜ちるそめてたき｜さくらはな｜あきてよのなか｜はてのうけれは
０２００７２ζ　このさとに｜たひねしぬへし｜さくらはな｜ちりのまかひに｜いへちわすれて
０２００７３ζ　うつせみの｜よにもにたるか｜はなさくら｜さくとみしまに｜かつちりにけり
０２００７６δ　よみける
０２００７６ζ　はなちらす｜かせのやとりは｜たれかしる｜われにをしへよ｜ゆきてうらみむ
０２００７７δ　雲林院にてさくらのはなをよめる
０２００７７ε　そせい
０２００７７ζ　いさゝくら｜われもちりなむ｜いとさかり｜ありなはひとに｜うきめみえなむ
０２００９０δ　ならのみかとのおほみうた
０２００９０ζ　ふるさとゝ｜なりにしならの｜みやこにも｜いろはかはらす｜はなはさきけり
０２００９１δ　はるのうたとてよめる
０２００９１ε　よしみねのむねさた
０２００９１ζ　はなのいろは｜かすみにこめて｜みせすとも｜かをたにぬすめ｜はるのやまかせ
０２００９２δ　寛平のおほむときのきさいのみやのうたあはせのうた
０２００９２ε　そせい
０２００９２ζ　はなのきも｜いまはほりうゑし｜はるたては｜うつろふいろに｜ひとならひけり
０２００９５δ　雲林院のみこのともにはなみにきたやまのほとりにまかれりけるときによめる
０２００９５ε　そせい
０２００９５ζ　いさけふは｜ゝるのやまへに｜まとひなむ｜くれなはなけの｜はなのかけかは
０２００９６δ　はるのうたとてよめる
０２００９６ζ　いつまてか｜のへにこゝろの｜あくかれむ｜はなしちらすは｜としもへぬへし
０２０１００ζ　まつひとも｜こぬものゆゑに｜うくひすの｜なきつるはなを｜ゝりてけるかな
０２０１０１δ　寛平のおほむときのきさいのみやのうたあはせのうた
０２０１０１ε　ふちはらのおきかせ
０２０１０１ζ　さくらはな｜ちくさなからに｜あたなれと｜たれかはゝるを｜うらみはてたる
０２０１０５δ　たいしらす
０２０１０５ε　よみひとしらす
０２０１０５ζ　うくひすの｜なくのへことに｜きてみれは｜うつろふはなに｜かせそふきける
０２０１０６ζ　ふくかせを｜なきてうらみよ｜うくひすは｜われやはゝなに｜てたにふれたる
０２０１０７ε　洽子のあそむ
０２０１０７ζ　ちるはなの｜なくにしとまる｜ものならは｜われうくひすに｜おとらましやは
０２０１０８δ　仁和の中将のやすむところのいへにうたあはせゝむとしけるときによめる
０２０１０８ε　ふちはらのゝちかけ
０２０１０８ζ　はなのちる｜ことやわひしき｜はるかすみ｜たつたのやまの｜うくひすのこゑ
０２０１０９δ　うくひすのなくをよめる
０２０１０９ε　そせい
０２０１０９ζ　こつたへは｜おのかはふきに｜ちるはなを｜たれにおほせて｜こゝらなくらむ
０２０１１５δ　しかのやまこえにてをむなのおほくあへりけるによみてつかはしける
０２０１１５ε　つらゆき
０２０１１５ζ　あつさゆみ｜はるのやまへを｜こえくれは｜みちもさりあへす｜はなそちりける
０２０１１６δ　寛平のおほむときのきさいのみやのうたあはせのうた
０２０１１６ζ　はるのゝに｜わかなつまむと｜こしものを｜ちりかふはなに｜みちはまとひぬ
０２０１１９δ　しかよりかへりけるをむなともの華山にいりてふちのはなのもとにたちよりてかへりけるによみておくりける
０２０１１９ε　僧正遍照
０２０１１９ζ　よそにみて｜かへらむひとに｜ふちのはな｜はひまつはれよ｜えたはをるとも
０２０１２０δ　いへにふちのはなのさけりけるをひとのたちとまりてみけるをよめる
０２０１２０ε　みつね
０２０１２０ζ　わかやとに｜さけるふちなみ｜たちかへり｜すきかてにのみ｜ひとのみるらむ
０２０１２１δ　たいしらす
０２０１２１ε　よみひとしらす
０２０１２１ζ　いまもかも｜さきにほふらむ｜たちはなの｜こしまのくまの｜やまふきのはな
０２０１２４δ　よしのかはのほとりにやまふきのさけりけるをよめる
０２０１２４ε　つらゆき
０２０１２４ζ　よしのかは｜きしのやまふき｜ふくかせに｜そこのかけさへ｜うつろひにけり
０２０１２５δ　たいしらす
０２０１２５ε　よみひとしらす
０２０１２５ζ　かはつなく｜ゐてのやまふき｜ちりにけり｜はなのさかりに｜あはましものを
０２０１２５η　このうたはあるひとのいはくたちはなのきよともかうたなり
０２０１２７δ　はるのとくすくるをよめる
０２０１２７ε　みつね
０２０１２７ζ　あつさゆみ｜はるたちしより｜としつきの｜いるかことくも｜おもほゆるかな
０２０１２８δ　やよひにうくひすのこゑのひさしくきこえさりけれはよめる
０２０１２８ε　つらゆき
０２０１２８ζ　なきとむる｜はなしなけれは｜うくひすも｜いまはものうく｜なりぬへらなり
０２０１３２δ　やよひのつこもりのひはなつみよりかへりけるをむなともをみてよめる
０２０１３２ε　みつね
０２０１３２ζ　とゝむへき｜ものとはなしに｜はかなくも｜ちるはなことに｜たくふこゝろか
０２０１３４δ　亭子院のうたあはせのはてのうた
０２０１３４ε　みつね
０２０１３４ζ　けふとのみ｜はるをおもはぬ｜ときたにも｜たつことやすき｜はなのかけかは
０３００００α　古今倭歌集巻第三
０３００００β　夏歌
０３０１３５δ　たいしらす
０３０１３５ε　よみひとしらす
０３０１３５ζ　わかやとの｜いけのふちなみ｜さきにけり｜やまほとゝきす｜いつかきなかむ
０３０１３６ε　きのとしさた
０３０１３６ζ　あはれてふ｜ことをあまたに｜やらしとや｜はるにおくれて｜ひとりさくらむ
０３０１３８ε　いせ
０３０１３８ζ　さつきこは｜なきてふりなむ｜ほとゝきす｜またしきほとの｜こゑをきかはや
０３０１４４δ　ならのいそのかみてらにてほとゝきすのなくをよめる
０３０１４４ζ　いそのかみ｜ふるきみやこの｜ほとゝきす｜こゑはかりこそ｜むかしなりけれ
０３０１４７ζ　ほとゝきす｜なかなくさとの｜あまたあれは｜なほうとまれぬ｜おもふものから
０３０１４８ζ　おもひいつる｜ときはのやまの｜ほとゝき□｜からくれなゐの｜ふりいてゝそなく
０３０１５７ε　たゝみね
０３０１５７ζ　くるゝかと｜みれはあけぬる｜なつのよを｜あかすとやなく｜やまほとゝきす
０３０１５７ζｎ現状は，１５８番歌・１５７番歌が歌序逆転して，２首１紙で記される。
０３０１５８ε　きのあきみね
０３０１５８ζ　なつやまに｜こひしきひとや｜いりにけむ｜こゑふりたてゝ｜なくほとゝきす
０３０１５９ε　よみひとしらす
０３０１５９ζ　こそのなつ｜なきふるしてし｜ほとゝきす｜それかあらぬか｜こゑのかはらぬ
０３０１６７ε　みつね
０３０１６７ζ　ちりをたに｜すゑしとそおもふ｜さきしより｜いもとわかぬる｜とこなつの花
０３０１６８δ　みなつきのつこもりのひよめる
０３０１６８ζ　なつとあきと｜ゆきかふそらの｜かよひちは｜かたへすゝしく｜かせやふくらむ
０５００００α　古今倭歌集巻第五
０５００００αｎ「歌」は字形「謌」。
０５００００β　秋哥下
０５０２４９δ　これさたのみこのいへのうたあはせによめる
０５０２４９ε　ふむやのあさやす
０５０２４９ζ　ふくからに｜あきのくさきの｜しをるれは｜むへやまかせを｜あらしてふらむ
０５０２５０ζ　くさもきも｜いろかはれとも｜わたつみの｜なみのはなにそ｜あきなかりける
０５０２５１δ　あきのうたあはせしけるときによめる
０５０２５１ε　きのよしもち
０５０２５１ζ　もみちせぬ｜ときはのやまは｜ふくかせの｜おとにやあきを｜きゝわたるらむ
０５０２５２δ　たいしらす
０５０２５２ε　よみひとしらす
０５０２５２ζ　きりたちて｜かりそなくなる｜かたをかの｜あしたのはらは｜もみちしぬらむ
０５９０５１ζ　わかゝとの｜わせたもいまた｜かりあけぬに｜またきもみつる｜かみなひのもり
０５０２５４ζ　ちはやふる｜かみなひやまの｜もみちはに｜おもひはかけし｜うつろふものを
０５０２５５δ　貞観のおほむときに弘徽殿のおまへにむめのきありけりにしのかたにさせりけるえたもみちしはしめたりけるをうへにさふらふをのこともうたよむついてによめる
０５０２５５ε　ふちはらのかちおむ
０５０２５５ζ　おなしえを｜わきてこのはの｜いろつくは｜にしこそあきの｜はしめなりけれ
０５０２５６δ　いしやまへまうてけるときおとはやまのもみちをみて
０５０２５６ε　きのつらゆき
０５０２５６ζ　あきかせの｜ふきにしひより｜おとはやま｜みねのこすゑも｜いろつきにけり
０５０２５７δ　これさたのみこのいへのうたあはせに
０５０２５７ε　としゆきのあそむ
０５０２５７ζ　しらつゆの｜いろはひとつを｜いかにして｜あきのこのはを｜ちゝにそむらむ
０５０２５８ε　たゝみね
０５０２５８ζ　あきのよの｜つゆをはつゆと｜おきなから｜かりのなみたや｜のへをそむらむ
０５０２５９δ　たいしらす
０５０２５９ε　よみひとしらす
０５０２５９ζ　あきのつゆ｜いろことヽヽに｜おけはこそ｜やまのこのはも｜ちくさなるらめ
０５０２６０δ　もるやまのほとりにてよめる
０５０２６０ε　つらゆき
０５０２６０ζ　しらつゆも｜しくれもいたく｜もるやまは｜したはのこらす｜いろつきにけり
０５０２６１δ　あきのうたとてよめる
０５０２６１ε　もとかた
０５０２６１ζ　あめふれと｜つゆもゝりしを｜かさとりの｜やまはいかてか｜もみちそめけむ
０５０２６２δ　かみのやしろのあたりをまかりけるときいかきのうちのもみちをみてよめる
０５０２６２ε　つらゆき
０５０２６２ζ　ちはやふる｜かみのいかきに｜はふくすも｜あきにはあへす｜うつろひにけり
０５０２６３δ　これさたのみこのいへのうたあはせに
０５０２６３ε　にふのたゝみね
０５０２６３ζ　あめふれは｜かさとりやまの｜もみちはゝ｜ゆきかふひとの｜そてさへそてる
０５０２６４δ　寛平のおほむときのきさいのみやのうたあはせに
０５０２６４ε　よみひとしらす
０５０２６４ζ　ちらねとも｜かねてそをしき｜もみちはゝ｜いまはかきりの｜いろとみつれは
０５０２６５δ　やまとのくにへまかりけるときにさほやまにきりのたちけるをみてよめる
０５０２６５ε　きのとものり
０５０２６５ζ　たかための｜にしきなれはか｜あきゝりの｜さほのやまへを｜たちかくすらむ
０５０２６６δ　これさたのみこのいへのうたあはせに
０５０２６６ε　よみひとしらす
０５０２６６ζ　あきゝりは｜けさはなたちそ｜さほやまの｜はゝそのもみち｜よそにてもみむ
０５０２６７δ　あきのうたとてよめる
０５０２６７ε　さかのうへのこれのり
０５０２６７ζ　さほやまの｜はゝそのいろは｜うすけれと｜あきはふかくも｜なりにけるかな
０５０２６８δ　ひとのいへの前栽のきくにゆひつけてうゑけるうた
０５０２６８ε　なりひらのあそむ
０５０２６８ζ　うゑしうゑは｜あきなきときや｜さかさらむ｜はなこそちらめ｜ねさへかれめや
０５０２６９δ　寛平のおほむときにきくのはなをよませたまける
０５０２６９δｎ「たまひける」の「ひ」脱。
０５０２６９ε　としゆきのあそむ
０５０２６９ζ　ひさかたの｜くものうへにて｜みるきくは｜あまつほしとそ｜あやまたれける
０５０２６９η　このうたはまたうへゆるされさりけるときめしあけられてつかうまつれりけるなり
０５０２７０δ　これさたのみこのいへのうたあはせのうた
０５０２７０ε　きのともひら
０５０２７０ζ　つゆなから｜をりてかさゝむ｜きくのはな｜おいせぬあきの｜ひさしかるへく
０５０２７０δｎこれさたのみこのうたあはせのうた
０５０２７０εｎきのともひら
０５０２７０ζｎつゆなから｜をりてかさゝむ｜きくのはな｜おいせぬあきの｜ひさしかるへく
０５０２７０ζｎ一首はこの一首のみの零本てある。別に記された本かあったことになる。
０５０２７１δ　寛平御時のきさいのみやの哥合のうた
０５０２７１ε　おほえのちさと
０５０２７１ζ　うゑしとき｜はなまとほに｜ありしきく｜うつろふあきに｜あはむとやみし
０５０２７１ζｎ２「はなまちとほに」の「ち」脱。
０５０２７２δ　おなしおほむときにせられけるきくあはせにすはまをつくりてきくのはなうゑたりけるにそゑたりけるうた
０５０２７２δ　ふきあけのはまのかたにきくうゑたりけるをよめる
０５０２７２δｎ詞書二様あり，一方衍か，別の切か。
０５０２７２ε　すかはらのあそむ
０５０２７２ζ　あきかせの｜ふきあけにたてる｜しらきくは｜はなかあらぬか｜なみのよするか
０５０２７３δ　仙宮にきくをわけてひとのいたれるをよめる
０５０２７３ε　そせいほうし
０５０２７３ζ　ぬれてほす｜やまちのきくの｜つゆのまに｜いつかちとせを｜われはへにけむ
０５０２７４δ　きくのはなのもとにてひとのひとをまてるかたをよめる
０５０２７４ε　友則
０５０２７４ζ　はなみつゝ｜ひとまつときの｜しろたへの｜そてかとのみそ｜あやまたれける
０５０２７５δ　おほさはのいけのかたにきくうゑたるをよめる
０５０２７５ζ　ひともとゝ｜おもひしはなを｜おほさはの｜いけのそこまて｜たれかうゑけむ
０５０２７６δ　よのなかのはかなきことをおもひけるをりにきくの花をみてよみける
０５０２７６ε　つらゆき
０５０２７６ζ　あきのきく｜にほふかきりは｜かさしてむ｜はなよりさきと｜しらぬわかみを
０５０２７７δ　しらきくのはなをよめる
０５０２７７ε　凡河内躬恒
０５０２７７ζ　こゝろあてに｜をらはやをらむ｜はつしもの｜おきまとはせる｜しらきくのはな
０５０２７８δ　これさたのみこのいへのうたあはせの哥
０５０２７８ε　よみひとしらす
０５０２７８ζ　いろかはる｜あきのきくをは｜ひとゝせに｜ふたゝひにほふ｜はなとこそみれ
０５０２７９δ　仁和寺にきくのはなめしけるときにうたそへてたてまつれとおほせられけれはよみてたてまつりける
０５０２７９ε　たひらのさふむ
０５０２７９εｎ「さたふむ」の「た」脱。
０５０２７９ζ　あきをおきて｜ときこそありけれ｜きくの花｜うつろふからに｜いろのまされは
０５０２８０δ　ひとのいへなりけるきくのはなをうつしてうゑたりけるをよめる
０５０２８０ε　貫之
０５０２８０ζ　さきそめし｜やとしかはれは｜きくのはな｜いろさへにこそ｜うつろひにけれ
０５０２８１δ　たいしらす
０５０２８１ε　よみひとしらす
０５０２８１ζ　さほやまの｜はゝそのもみち｜ゝりぬへみ｜よるさへみよと｜てらすつきかけ
０５０２８２δ　みやつかへひさしてつかうまつらてやまさとにこもりはへりけるときによめる
０５０２８２δｎ「ひさして」は「ひさしく」誤歟。
０５０２８２ε　ふちはらのせきを
０５０２８２ζ　おくやまの｜いはかけもみち｜ゝりぬへし｜てるひのひかり｜みるときなくて
０５０２８３δ　たいしらす
０５０２８３ε　よみひとしらす
０５０２８３ζ　たつたかは｜もみちみたれて｜なかるめり｜わたらはにしき｜なかやたえなむ
０５０２８３η　このうたあるひとならのみかとのおほみうたとなむまうす
０５０２８４ζ　たつたかは｜もみちはなかる｜かみなひの｜みむろのやまに｜しくれふるらし
０５０２８４η　またはあすかゝはもみちはなかる
０５０２８５ζ　こひしくは｜みてもしのはむ｜もみちはを｜ふきなちらしそ｜やまおろしのかせ
０５０２８６ζ　あきかせに｜あへすちりぬる｜もみちはの｜ゆくへさためぬ｜われそかなしき
０５０２８７ζ　あきはきぬ｜もみちはやとに｜ふりしきぬ｜みちふみわけて｜とふひともなし
０５０２８８ζ　ふみわけて｜さらにやとはむ｜もみちはの｜ふりかくしてし｜みちとみなから
０５０２８９ζ　あきのつき｜やまへさやかに｜てらせるは｜おつるもみちの｜かすをみよとか
０５０２９０ζ　ふくかせの｜ちくさのいろに｜みえつるは｜あきのこのはの｜ちれはなりけり
０５０２９１ε　せきを
０５０２９１ζ　しものたて｜つゆのぬきこそ｜もろからし｜やまのにしきの｜おれとかつちる
０５０２９２δ　雲林院のきのかけにたゝすみてよみける
０５０２９２ε　僧正遍照
０５０２９２ζ　わひゝとの｜わきてたちよる｜このもとは｜たのむかけなく｜もみちゝりけり
０５０２９３δ　二条のきさきの東宮の女御ときこえけるとき御屏風にたつたかはにもみちなかれたるかたかけるをたいにて
０５０２９３ε　そせいほうし
０５０２９３ζ　もみちはの｜なかれてとまる｜みなとには｜くれなゐふかき｜なみやたつらむ
０５０２９４ε　なりひらのあそむ
０５０２９４ζ　ちはやふる｜かみよもきかす｜たつたかは｜からくれなゐに｜みつくゝるとは
０５０２９５δ　これさたのみこのいへのうたあはせのうた
０５０２９５ε　としゆきのあそむ
０５０２９５ζ　わかきつる｜みちもしられす｜くらふやま｜ききのこのはの｜ちるとまかふに
０５０２９６ε　たゝみね
０５０２９６ζ　かみなひの｜みむろのやまを｜あきゆけは｜にしきたちきる｜こゝちこそすれ
０５０２９７δ　きたやまにもみちをらむとてまかれりけるときに
０５０２９７ε　つらゆき
０５０２９７ζ　みるひとも｜なくてちりぬる｜おくやまの｜もみちはよるの｜にしきなりけり
０５０２９８δ　あきのうたとてよめる
０５０２９８ε　かねみのおほきみ
０５０２９８ζ　たつたひめ｜たむくるかみの｜あれはこそ｜あきのこのはの｜ぬさとちるらめ
０５０２９８ζｎ一首は原本で３０８番歌の後に位置する。
０５０２９８δｎあきのうた
０５０２９８εｎかねみのおほきみ
０５０２９８ζｎたつはひめ｜たむくるかみの｜あれはこそ｜あきのこのはの｜ちらさなるらめ
０５０２９８ζｎ一首はこの一首のみの零本てある。別に記された本かあったことになる。
０５０２９９δ　をのといふところにすみはへりけるときによめる
０５０２９９ζ　あきのやま｜もみちをぬさと｜たむくれは｜すむわれさへそ｜たひこゝちする
０５０３００δ　かみなひやまをこえすきてたつたかはをわたりけるときにもみちのなかれけるを
０５０３００ε　きよはらのふかやふ
０５０３００ζ　かみなひの｜やまをすきゆく｜あきなれは｜たつたかはにそ｜ぬさはたむくる
０５０３０１δ　寛平のおほむときのきさいのみやのうたあはせのうた
０５０３０１ε　ふちはらのおきかせ
０５０３０１ζ　しらなみに｜あきのこのはの｜うかへるを｜あまのなかせる｜ふねかとそみる
０５０３０２δ　たつたかはのほとりにて
０５０３０２ε　これのり
０５０３０２ζ　もみちはの｜なかれさりせは｜たつたかは｜みつのあきをは｜たれかしらまし
０５０３０３δ　しかのやまこえにてよめる
０５０３０３ε　はるみちのつらき
０５０３０３ζ　やまかはに｜かせのかけたる｜しからみは｜なかれもあへぬ｜もみちなりけり
０５０３０４δ　いけのほとりにてもみちのちるをよめる
０５０３０４ε　みつね
０５０３０４ζ　かせふけは｜おつるもみちは｜みつきよみ｜ちらぬかけさへ｜そらにみえつゝ
０５０３０５δ　亭子院の御屏風のゑにかはわたらむとするひとのもみちするきのもとにむまひかへてたてるをよませたまけれはつかうまつれる
０５０３０５δｎ「よませたまひけれは」の「ひ」脱。
０５０３０５ε　よみひとしらすみつねなるへし
０５０３０５εｎ「みつねなるへし」を，後補とせす，本文の一部とする。
０５０３０５ζ　たちとまり｜みてをわたらむ｜もみちはゝ｜あめとふるとも｜みつはまさらし
０５０３０６δ　これさたのみこのいへのうたあはせによめる
０５０３０６ε　たゝみね
０５０３０６ζ　やまたもる｜あきのかりいほに｜おくつゆは｜いなおほせとりの｜なみたなりけり
０５０３０６ζｎ一首は原本で３０７番歌の後に位置する。
０５０３０７δ　たいしらす
０５０３０７ε　よみひとしらす
０５０３０７ζ　ほにもいてぬ｜やまたをもると｜ふちころも｜いなはのつゆに｜ぬれぬよはなし
０５０３０８δ　たいしらす
０５０３０８ε　よみひとしらす
０５０３０８ζ　かれるたに｜おふるひつちの｜ほにいてぬは｜よをいまさらに｜あきはてぬとか
０５０３０９δ　きたやまにたけかりにまかれりけるひよめる
０５０３０９ε　そせいほうし
０５０３０９ζ　もみちはゝ｜そてにこきれて｜もてゝなむ｜あきをかきりと｜みむひとのため
０５０３１０δ　寛平御時にふるうたゝてまつれとおほせられけれはたつたかはもみちはなかるといふうたをかきてそのおなしこゝろをよめる
０５０３１０δｎ「そのおなしこゝろを」の「そ」下，「れ」見消。
０５０３１０ε　おきかせ
０５０３１０ζ　みやまより｜おちくるみつの｜いろみてそ｜あきはかきりと｜おもひしりぬる
０５０３１１δ　あきのはつるこゝろをたつたかはをおもひやりて
０５０３１１ε　つらゆき
０５０３１１ζ　としことに｜もみちはなかす｜たつたかは｜みなとやあきの｜とまりなるらむ
０５０３１２δ　九月卅日おほゐにてよめる
０５０３１２ζ　ゆふつくよ｜をくらのやまに｜なくしかの｜こゑのうちにや｜あきはくるらむ
０５０３１３δ　おなしつこもりのひ
０５０３１３ε　みつね
０５０３１３ζ　みちしらは｜たつねもいなむ｜もみちはを｜ぬさにたむけて｜あきはいぬめり
０５００００α　巻第五
０８００００α　古今倭歌集巻第八
０８００００β　離別
０８０３６５δ　たいしらす
０８０３６５ε　ありはらのゆきひらのあそむ
０８０３６５ζ　たちわかれ｜いなはのやまの｜みねにおふる｜まつとしきかは｜いまかへりこむ
０８０３６６ε　よみひとしらす
０８０３６６ζ　すかるなく｜あきのはきはら｜あさたちて｜たひゆくひとを｜いつとかまたむ
０８０３６７ζ　かきりなき｜くもゐのよそに｜わかるとも｜ひとをこゝろに｜おくらさむやは
０８０３６８δ　をのゝのちふかみちのくにのすけにまかりけるときにはゝのよめりける
０８０３６８δｎ「をののちふるか」の「の」１字衍，「る」脱。
０８０３６８ζ　たらちねの｜おやのまもりと｜あひそふる｜こゝろはかりは｜せきなとゝめそ
０８０３６９δ　さたときのみこのいへにてふちはらのきよふむかあふみのすけにまかりけるときにむまのはなむけしけるよゝめる
０８０３６９ε　きのとしさた
０８０３６９ζ　けふわかれ｜あすはあふみと｜おもへとも｜よやふけぬらむ｜そてのつゆけき
０８０３７０δ　こしへまかりけるひとによみてつかはしける
０８０３７０ζ　かへるやま｜ありとはきけと｜はるかすみ｜たちわかれなは｜こひしかるへし
０８０３７１δ　ひとのむまのはなむけによめる
０８０３７１ε　きのつらゆき
０８０３７１ζ　をしむから｜こひしきものを｜しらくもの｜たちなむのちは｜なにこゝちせむ
０８０３７２δ　とものひとのくにへまかりけれはよめる
０８０３７２ε　ありはらのしけはる
０８０３７２ζ　わかれては｜ほとをへたつと｜おもへはや｜かつみなからに｜かねてこひしき
０８０３７３δ　あつまのかたにまかりけるひとによみてつかはしける
０８０３７３ε　いかこのあつゆき
０８０３７３ζ　おもへとも｜みをしわけねは｜めにみえぬ｜こゝろをきみに｜たくへてそやる
０８０３７４δ　あふさかにてひとをわかれけるときによめる
０８０３７４ε　なにはのよろつを
０８０３７４ζ　あふさかの｜せきしまさしき｜ものならは｜あかすわかるゝ｜きみをとゝめよ
０８０３７５δ　たいしらす
０８０３７５ε　よみひとしらす
０８０３７５ζ　からころも｜たつひはきかし｜あさつゆの｜おきてしゆけは｜けぬへきものを
０８０３７５η　このうたはあるひとつかさをたうはりてあたらしきめにつきてとしへてすみけるひとをはすてゝたゝあすなむたつとはかりをいへりけるときにともかくもいはてよみてつかはしける
０８０３７６δ　ひたちへまかりけるときにふちはらのきむとしによみてつかはしける
０８０３７６ζ　あさなけに｜みへきゝみとし｜たのまねは｜おもひたちぬる｜くさまくらなり
０８０３７７δ　きのむねさたかあつまへまかれりけるときにひとのいへにやとりてあかつきにいてたつとてまかりまうしゝけれはをむなのよみていたせりける
０８０３７７ε　よみひとしらす
０８０３７７ζ　えそしらぬ｜いまこゝろみむ｜いのちあらは｜われやわするゝ｜ひとやとはぬと
０８０３７８δ　あひしりてはへりけるひとのあつまのかたへまかりけるをおくるとてよめる
０８０３７８ε　きよはらのふかやふ
０８０３７８ζ　くもゐにも｜ふかきこゝろの｜おくれねは｜わかるとひとに｜みゆはかりなり
０８０３７９δ　とものあつまへまかりけるときによめる
０８０３７９ε　よしみねのひてをか
０８０３７９ζ　しらくもの｜こなたかなたに｜たちわかれ｜こころをぬさと｜くたくたひかな
０８０３８０δ　みちのくへまかりけるひとによみてつかはしける
０８０３８０ε　つらゆき
０８０３８０ζ　しらくもの｜やへかさなれる｜をちにても｜おもはむひとに｜こゝろへたつな
０８０３８１δ　ひとをわかれけるときによみける
０８０３８１ζ　わかれてふ｜ことはいろにも｜あらなくに｜こころにしみて｜わひしかるらむ
０８０３８２δ　あひしれるひとのこしのくにゝまかりてとしへて京にまうてきてまたかへりけるときによめる
０８０３８２ε　おふしかふちのみつね
０８０３８２ζ　かへるやま｜なそはありての｜あるかひは｜きてもとまらぬ｜なにこそありけれ
０８０３８３δ　こしのくにへまかりけるひとによみてつかはしける
０８０３８３ζ　よそにのみ｜こひやわたらむ｜しらやまの｜ゆきみるへくも｜あらぬわかみは
０８０３８４δ　おとはやまのほとりにてひとをわかるとてよめる
０８０３８４ε　つらゆき
０８０３８４ζ　おとはやま｜こたかくなきて｜ほとゝきす｜きみかわかれを｜ゝしむへらなり
０８０３８５δ　ふちはらのゝちかけかゝらものゝつかひになかつきのつこもりかたにまかりけるにうへのをのこともさけたうひけるついてに
０８０３８５ε　ふちはらのかねもち
０８０３８５ζ　もろともに｜なきてとゝめよ｜きりヽヽす｜あきのわかれは｜をしくやはあらぬ
０８０３８６ε　たひらのもとのり
０８０３８６ζ　あきゝりの｜ともにたちてゝ｜わかれなは｜ゝれぬおもひに｜こひやわたらむ
０８０３８７δ　みなもとのさねかつくしへゆあみむとてまかりけるときにやまさきにてわかれをしみけるところにてよめる
０８０３８７ε　しろめ
０８０３８７ζ　いのちたに｜こゝろにかなふ｜ものならは｜なにかわかれの｜かなしからまし
０８０３８８δ　やまさきよりかみなゐのもりまておくりのひとヽヽのまかりてかへりかてにしてわかれをしみけれはよみける
０８０３８８ε　みなもとのさね
０８０３８８ζ　ひとやりの｜みちならなくに｜おほかたは｜いきうしといひて｜いさかへりなむ
０８０３８９δ　いまはこれよりかへりねとさねかいひけるをりによめる
０８０３８９ε　かねもち
０８０３８９ζ　したはれて｜きにしこゝろの｜みにしあれは｜かへるさまには｜みちもしられす
０８０３９０δ　ふちはらのこれをかゝむさしのすけにまかりけるときにおくりにあふさかをこゆとてよみける
０８０３９０ε　つらゆき
０８０３９０ζ　かつこえて｜わかれもゆくか｜あふさかは｜ひとたのめなる｜なにこそありけれ
０８０３９１δ　おほえのちふるかこしへまかりけるむまのはなむけによめる
０８０３９１ε　ふちはらのかねすけ
０８０３９１ζ　きみかゆく｜こしのしらやま｜しらねとも｜ゆきのまにヽヽ｜あとはたつねむ
０８０３９２δ　ひとの花山にまうてきてゆふさりつかたかへりなむとしけるときによめる
０８０３９２ε　僧正遍照
０８０３９２ζ　ゆふくれの｜まかきはやまと｜みえぬかな｜よるはこえしと｜やとりとるへく
０８０３９３δ　ひえにのほりてかへりまうてきけるひとヽヽわかれけるついてによめる
０８０３９３ε　律師有仙
０８０３９３ζ　わかれをは｜やまのさくらに｜まかせてむ｜とめむとめしは｜ゝなのまにヽヽ
０８０３９４δ　雲林院のみこ舍利ゑにひえにのほりてかへりけるときにさくらのはなのもとにてよめる
０８０３９４ε　遍照
０８０３９４ζ　やまかせに｜さくらふきまき｜みたれなむ｜はなのまきれに｜たちとまるへく
０８０３９５ε　有仙
０８０３９５ζ　ことならは｜きみとまるへく｜にほはなむ｜かへすはゝなの｜うきにやはあらぬ
０８０３９６δ　仁和のみかとのみこにおはしましけるときにふるのたきこらむしにおはしましてかへりたまひけるによめる
０８０３９６ε　けむけいほうし
０８０３９６ζ　あかすして｜わかるゝなみた｜ゝきにそふ｜みつまさるとや｜しもはみるらむ
０８０３９７δ　かむなりのつほにめしたりけるひおほみきなとたうへてあめのいたくふりけれはゆふさりまてはへりてまかりけるをりにきのつらゆきかさかつきをとりてよめる
０８０３９７ζ　あきはきの｜はなをはあめに｜ぬらせとも｜きみをはまして｜をしとこそおもへ
０８０３９８δ　とよめりけるかへしによめる
０８０３９８δｎ詞書が前歌から独立していない。
０８０３９８ε　かねみのおほきみ
０８０３９８ζ　をしむらむ｜ひとのこゝろを｜しらぬまに｜あきのしくれと｜みそふりにける
０８０３９９δ　かねみのおほきみにはしめてあひものかたりしてわかれけるときによめる
０８０３９９ε　みつね
０８０３９９ζ　わかるれと｜うれしくもあるか｜こよひより｜あひみぬさきに｜なにをこひまし
０８０４００δ　たいしらす
０８０４００ε　よみひとしらす
０８０４００ζ　あかすして｜わかるゝそての｜しらたまを｜きみかゝたみと｜つゝみてそゆく
０８０４００ζｎ５「く」の字形存疑。
０８０４０１ζ　かきりなく｜おもふなみたに｜そほちぬる｜そてはかわかし｜あはむひまてに
０８０４０２ζ　かきくへし｜ことはふらなむ｜はるさめに｜ぬれきぬきせて｜きみをとゝめむ
０８０４０２ζｎ１「かきくらし」の「ら」を「へ」に誤る。
０８０４０３ζ　しひてゆく｜ひとをとゝめむ｜さくらはな｜いつれかみちと｜まとふまてちれ
０８０４０４δ　しかのやまこえにいしゐのもとにてものいひけるひとのわかれけるときによめる
０８０４０４ε　つらゆき
０８０４０４ζ　むすふての｜しつくにゝこる｜やまのゐの｜あかてもひとを｜わかれぬるかな
０８０４０５δ　みちにあへりけるひとのくるまにものをいひつきてわかれけるところにてよめる
０８０４０５ε　紀友則
０８０４０５ζ　したのおひの｜みちはかたヽヽ｜わかるとも｜ゆきめくりても｜あはむとそおもふ
０８００００α　巻第八
０９００００α　古今倭歌集巻第九
０９００００β　羇旅哥
０９０４０６δ　もろこしにてつきをみてよみける
０９０４０６ε　あへのなかまろ
０９０４０６ζ　あまのはら｜ふりさけみれは｜かすかなる｜みかさのやまに｜いてしつきかも
０９０４０６η　このうたはむかしなかまろをもろしにものならはしにつかはしたりけるにあまたのとしをへてえかへりまうてこさりけるをこのくによりまたつかひまかりいたれりけるにたくひてまうてきなむとていてたちけるに明州といふところのうみへにてかのくにのひとむまのはなむけしけるになりてつきのいとおもしろさしいてたりけるをみてよみけるとなむかたりつたふる
０９０４０６ηｎ「ろし」右傍「こ」。「むまのはなむけしけりよるに」の「りよ」脱歟。「おもしろく」の「く」脱歟。
０９０４１７δ　たちまのくにのゆへまかりけるときにふるみのうらといふところにとまりてゆふさりのかれいひたうへけるとありけるひとヽヽうたよみけるついてによめる
０９０４１７ε　ふちはらのかねすけ
０９０４１７ζ　ゆふつくよ｜おほつかなきに｜たまくしけ｜ふたみのうらを｜あけてこそみめ
０９０４１８δ　これたかのみこのともにかりにまかれりけるときにあまのかはといふところのかはほとりにおりゐてさけなとのみけるついてにみこのいひけらくかりしてあまのかはにいたるといふこころをよみてさかつきはさせといひけれはよめる
０９０４１８ζ　かりくらし｜たなはたつめに｜やとからむ｜あまのかはらに｜われはきにけり
０９０４１９ε　きのありつね
０９０４１９ζ　ひとゝせに｜ひとたひきます｜きみまては｜やとかすひとも｜あらしとそおもふ
０９０４２０δ　朱雀院のならにおはしましたりけるときにたむけやまにてよみける
０９０４２０ε　すかはらのあそむ
０９０４２０ζ　このたひは｜ぬさもとりあへす｜たむけやま｜もみちのにしき｜かみのまにヽヽ
１８０９４０ε　よみひとしらす
１８０９４０ζ　あはれてふ｜ことのはことに｜おくつゆは｜むかしをこふる｜なみたなりけり
１８０９４１ζ　よのなかの｜うきもつらきも｜つけなくに｜まつしるものは｜なみたなりけり
１８０９４２ζ　よのなかは｜ゆめかうつゝか｜うつゝとも｜ゆめともしらす｜ありてなけれは
１８０９４８ε　よみひとしらす
１８０９４８ζ　よのなかは｜むかしよりやは｜うかりけむ｜わかみひとつの｜ためになれるか
１８０９４９ζ　よのなかを｜いとふやまちの｜くさきとや｜あなうのはなの｜いろにいてにけむ
１８０９５０ζ　みよしのゝ｜やまのかなたに｜いへもかな｜よのうきときの｜かくれかにせむ
１８０９５１ζ　よにふれは｜うさこそまされ｜みよしのゝ｜いはのかけみち｜ふみならしてむ
１８０９５２ζ　いかならむ｜いはほのなかに｜すまはかも｜よのうきことの｜きこえこさらむ
１８０９５３ζ　あしひきの｜やまのまにヽヽ｜かくれなむ｜うきよのなかは｜あるかひもなし
１８０９５６δ　やまほうしのもとにつかはしける
１８０９５６ε　凡河内躬恒
１８０９５６ζ　よをすてゝ｜やまにいるひと｜やまにても｜なほうきときは｜いつちゆくらむ
１８０９６３ε　をのゝはるかせ
１８０９６３ζ　あまひこの｜おとつれしとそ｜いまはおもふ｜われかひとかと｜みをたとるよに
１８０９６４δ　つかさとけてはへりけるときによめる
１８０９６４ε　たひらのさたふむ
１８０９６４ζ　うきよには｜かとさせりとも｜みえなくに｜なとかわかみの｜いてかてにする
１８０９６５ζ　ありはてぬ｜いのちまつまの｜ほとたにも｜うきことしけく｜おもはすもかな
１８０９６６δ　みこのみやのたちはきにはへりけるをみやつかへつかうまつらすとてとけてはへりけるときに
１８０９６６ε　みやちのきよき
１８０９６６ζ　つくはねの｜このもかのもに｜たちそよる｜はるのみやまの｜かけをこひつゝ
１８０９６７δ　ときなりけるひとのにはかにときなくなりてなけくをみてみつからのなけきもなくよろこひもなきことをおもひてよめる
１８０９６７ε　きよはらのふかやふ
１８０９６７ζ　ひかりなき｜たにゝはゝるも｜よそなれは｜さきてとくちる｜ものおもひもなし
１８０９６８δ　＿
１８０９６８ε　伊勢
１８０９６８ζ　ひさかたの｜なかにおひたる｜さとなれは｜ひかりをのみそ｜たのむへらなる
１８０９６９δ　きのとしさたかあはのすけにてまかりけるときにむまのはなむけせむとてけふといひおくれりけるにこゝかしこまかりありきてよふくるまてみえさりけれはよみてつかはしける
１８０９６９ε　ありはらのなりひらの朝臣
１８０９６９ζ　いまそしる｜くるしきものと｜ひとまたむ｜さとをはかれす｜とふへかりけり
１８０９７０δ　これたかのみこのもとにかよひけるをかしらおろしてをのといふところにはへりけるときにむつきにとふらはむとてまかりてはへりけるにひえのやまもとなりけれはゆきいとふかゝりけれとしひてかのむろにまかりいたりてをかみけるにつれヽヽとしていとものかなしくてかへりまうてきてよみておくりける
１８０９７０ζ　わすれつゝ｜ゆめかとそおもふ｜おもひきや｜ゆきふみわけて｜きみをみむとは
１８０９７１δ　ふかくさのさとにすみはへりて京へまうてくとてそこなりけるひとによみておくりける
１８０９７７δ　＿りにあひてうらみけれはよめる
１８０９７７ζ　みをすてゝ｜いにやしにけむ｜おもひより｜ほかなるものは｜こゝろなりけり
１８０９７８δ　むねをかのおほよりかこしよりまうてきたりけるときにものかたりなとしはへりけるにゆきのふりけるをみておのかおもひこのゆきのことなむつもれるといひけるをりによめる
１８０９７８ζ　きみかおもひ｜ゆきとつもらは｜たのまれす｜はるよりのちは｜あらしとおもへは
１８０９７９δ　かへし
１８０９７９ε　おほより
１８０９７９ζ　きみをのみ｜おもひこしちの｜しらやまは｜いつかはゆきの｜きゆるときのある
１８０９８０δ　こしなるひとにつかはしける
１８０９８０ε　つらゆき
１８０９８０ζ　おもひやる｜こしのしらねの｜しらねとも｜ひとよもゆめの｜こえぬよそなき
１８０９８２ζ　わかいほは｜みわのやまもと｜こひしくは｜とふらひきませ｜すきたてるかと
１８０９８３ε　基泉法師
１８０９８３ζ　わかいほは｜みやこのたつみ｜しかそすむ｜よをうちやまと｜ひとはいふなり
１８０９８４ε　よみひとしらす
１８０９８４ζ　あれにけり｜あはれいくよの｜やとなれや｜すみけむひとの｜おとつれもせぬ
１８０９８５δ　ならへまかりけるときにあれたるいへにをむなのことひきけるをきゝてよみていれたりける
１８０９８５ε　よしみねのむねさた
１８０９８５ζ　わひゝとの｜すむへきさとゝ｜みるなへに｜なけきくはれる｜ことのねそする
１８０９８６ε　二条みなもとのいたるのあそむのむすめ
１８０９８６ζ　ひとふるす｜さとをいとひて｜こしかとも｜ならのみやこも｜うきなゝりけり
１８０９８７δ　たいしらす
１８０９８７ε　よみひとしらす
１８０９８７ζ　よのなかは｜いつれかさして｜わかならむ｜ゆきとまるをそ｜やとゝさたむる
１８０９９１δ　つくしにはへりけるときにまかりかよひつゝこうちけるひとのもとに京にまうてきてつかはしける
１８０９９１ε　きのとものり
１８０９９１ζ　ふるさとは｜みしこともあらす｜をのゝえの｜くちしところそ｜こひしかりける
１８０９９７δ　貞観御時に万葉集はいつはかりつくれるそとゝはせたまひけれはよみてたてまつりける
１８０９９７ε　ふむやのあり末
１８０９９７ζ　かみなつき｜しくれふりおける｜ならのはの｜なにおふみやの｜ふることそこれ
１８０９９８δ　寛平の御時にうたゝてまつりけるついてにたてまつりける
１８０９９８ε　大江のちさと
１８０９９８ζ　あしたつの｜ひとりおくれて｜なくこゑは｜くものうへまて｜きこえつかなむ
１８０９９９ε　ふちはらのかちおむ
１８０９９９ζ　ひとしれす｜おもふこゝろは｜ゝるかすみ｜たちてゝきみか｜めにもみえなむ
１８１０００δ　うたをめしけるときにたてまつるとてよみておくにかきつけてたてまつりける
１８１０００ε　伊勢
１８１０００ζ　やまかはの｜おとにのみきく｜もゝしきを｜みをはやなから｜みるよしもかな
１８００００α　巻第十八
１９００００β　旋頭歌
１９１００７δ　たいしらす
１９１００７ε　よみひとしらす
１９１００７ζ　うちわたす｜をちかたひとに｜ものまうすわれ｜そのそこに｜しろくさけるは｜なにのはなそも
１９１００８ε　かへし
１９１００８ζ　はるされは｜のへにまつさく｜みれとあかぬはな｜まひなしに｜たゝにのるへき｜はなのなゝれや
１９１００９δ　たいしらす
１９１００９ζ　はつせかは｜ふるかはのへに｜ふたもとあるすき｜としをへて｜またもあひみむ｜ふたもとあるすき
１９１０１０ε　貫之
１９１０１０ζ　きみかさす｜みかさのやまの｜もみちはのいろ｜かみなつき｜しくれのあめの｜そめるなりけり
１９１０１１δ　誹諧哥
１９１０１１δ　たいしらす
１９１０１１ε　よみひとしらす
１９１０１１ζ　むめのはな｜みにこそきつれ｜うくひすの｜ひとくヽヽと｜いとひしもをる
１９１０１２ε　素性法師
１９１０１２ζ　やまふきの｜はないろころも｜ぬしやたれ｜とへとこたへす｜くちなしにして
１９１０１３ε　藤原敏行朝臣
１９１０１３ζ　いくはくの｜たをつくれはか｜ほとゝきす｜してのたをさを｜あさなヽヽよふ
１９１０１４δ　ふむつきのむゆかの日たなはたのこゝろをよみける
１９１０１４ε　ふちはらのかねすけ
１９１０１４ζ　いつしかと｜またくこゝろを｜はきにあけて｜あまのかはらを｜けふやわたらむ
１９１０１５δ　たいしらす
１９１０１５ε　凡河内躬恒
１９１０１５ζ　むつことも｜またつきなくに｜あけにけり｜いつらはあきの｜なかしてふよは
１９１０１６ε　僧正遍照
１９１０１６ζ　あきのゝに｜なまめきたてる｜をみなへし｜あなかしかまし｜はなはひとゝき
１９１０１７ε　よみひとしらす
１９１０１７ζ　あきくれは｜のへにたはるゝ｜をみなへし｜いつれのひとか｜つまてすくへき
１９１０１８ζ　あきゝりの｜はれてくもれは｜をみなへし｜はなのすかたも｜みえかくれする
１９１０１９ζ　はなとみて｜をらむとすれは｜をみなへし｜うたゝるさまの｜なにこそありけれ
１９１０２０δ　寛平の御時のきさいのみやのうたあはせのうた
１９１０２０ε　ありはらのむねやな
１９１０２０ζ　あきかせに｜ほころひぬらし｜ふちはかま｜つゝりさせてふ｜きりヽヽすなく
１９１０２１δ　あすはるたゝむとしけるひとなりのいへのかたよりかせのゆきをふきこしけるをみてそのとなりのつかはしける
１９１０２１ε　きよはらのふかやふ
１９１０２１ζ　ふゆなれと｜はるのとなりの｜ちかけれは｜なかゝきよりそ｜はなはちりける
１９１０３２δ　たいしらす
１９１０３２ε　よみひとしらす
１９１０３２ζ　おもへとも｜なほうとまれぬ｜はるかすみ｜かゝらぬやまの｜あらしとおもへは
１９１０３３ε　たひらのさたふむ
１９１０３３ζ　はるのゝの｜しけきくさはの｜つまこひに｜とひたつきしの｜ほろゝとそなく
１９１０３４ε　きのよしひと
１９１０３４ζ　あきのゝに｜つまなきしかの｜としをへて｜なそわかこひの｜かひよとそなく
１９１０３５ε　みつね
１９１０３５ζ　せみのはの｜ひとへにうすき｜なつころも｜なれはよりなむ｜ものにやはあらぬ
１９１０５１ε　伊勢
１９１０５１ζ　なにははなる｜なからのはしも｜つくるなり｜いまはわかみを｜なにゝたとへむ
１９１０５２ε　よみひとしらす
１９１０５２ζ　まめなれと｜なにそはよけく｜かるかやの｜みたれてあれと｜あしけくもなし
１９１０５３ε　興風
１９１０５３ζ　なにかその｜なのたつことの｜をしからむ｜しりてまとふは｜われひとりかは
１９１０５４δ　いとゝなありけるをとこによそへてひとのいひけれはよめる
１９１０５４ε　くそ｜みなもとのつくるかむすめ
１９１０５４ζ　よそなから｜わかみをいとの｜くるといはゝ｜たゝいつはりに｜すくはかりなり
１９１０５５δ　＿
１９１０５５ε　さぬき｜あへのきよゆきのあそむのむすめ
１９１０５５ζ　ねきことを｜さのみきゝけむ｜やしろこそ｜はてはなけきの｜もりとなるらめ
１９１０５６ε　たいふ｜みなもとのたすくかむすめ
１９１０５６ζ　なけきこる｜やまとしたかく｜なりぬれは｜つらつゑのみそ｜まつゝかれける
１９１０５７ε　よみひとしらす
１９１０５７ζ　なけきをは｜こりのみつめて｜あしひきの｜やまのかひなく｜なりぬへらなり
１９１０５８ζ　ひとこふる｜ことをおもにと｜おもひもて｜あふこなきこそ｜わひしかりけれ
１９１０５９ζ　よひのまに｜いてゝいりぬる｜みかつきの｜われてものおもふ｜ころにもあるかな
１９１０６０ζ　そゑにとて｜とすれはかゝり｜かくすれは｜あないひしらす｜あふさきるさに
１９１０６１ζ　よのなかの｜うきたひことに｜みをなけは｜ふかきたにこそ｜あさくなりなめ
１９１０６２ε　在原元方
１９１０６２ζ　世中は｜いかにくるしと｜おもふらむ｜こゝらのひとに｜うらみらるれは
１９１０６３ε　よみひとしらす
１９１０６３ζ　なにをして｜みのいたつらに｜おいぬらむ｜としのおもはむ｜ことそやさしき
１９１０６４ε　おきかせ
１９１０６４ζ　みはすてつ｜こゝろをたにも｜はふらさし｜つひにはいかゝ｜なるとしるへく
１９１０６５ε　千里
１９１０６５ζ　しらゆきの｜ともにわかみは｜ふりぬれと｜こゝろはきえぬ｜ものにそありける
１９１０６６δ　たいしらす
１９１０６６ε　よみひとしらす
１９１０６６ζ　うめのはな｜さきてのゝちの｜みなれはや｜すきものとのみ｜ひとのいふらむ
２０００００α　古今和歌集巻第二十
２０００００αｎ巻子軸題と思われるものにも「古今和歌集巻代二十」とあるか，今は無視する。
２０００００β　雑｜神歌
２０１０６９δ　おほなほひのうた
２０１０６９ζ　あたらしき｜としのはしめに｜かくしこそ｜ちとせをかねて｜たのしよをつめ
２０１０６９η　続日本にはつかまつらめ｜よろつよまてに
２０１０６９ηｎ「つかまつらめ」の「かま」の間で１字消えた歟。
２０１０７０δ　ふるきやまとまひのうた
２０１０７０ζ　しもとゆふ｜かつらきやまに｜ふるゆきの｜まなくときなく｜おもほゆるかな
２０１０７１δ　あふみふり
２０１０７１ζ　あふみより｜あさたちくれは｜うねのゝに｜たつそなくなる｜あけぬこのよは
２０１０７２δ　みつくきふり
２０１０７２ζ　みつくきの｜をかのやかたに｜いもとあれと｜ねてのあさあけの｜しものふりはも
２０１０７３δ　しはつやまふり
２０１０７３ζ　しはつやま｜うちてゝみれは｜かさゆひの｜しまこきかくる｜たなゝしをふね
２０００００β　神楽哥
２０１０７４δ　とりものゝうた
２０１０７４ζ　かみかきの｜みむろのやまの｜さかきはゝ｜かみのみむろに｜しけりあひにけり
２０１０７５ζ　しもやたひ｜おけともかれぬ｜さきはの｜たちさかゆへき｜かみのきねかも
２０１０７５ζｎ３句「さかきはの」の「か」脱。
２０１０７６ζ　まきもくの｜あなしのやまの｜やまひとゝ｜ひともみるかね｜やまかつらせよ
２０１０７８ζ　みちのくの｜あたゝのまゆみ｜わかひかは｜すゑさへよりこ｜しのひヽヽに
２０１０７９ζ　わかゝとの｜いたゐのしみつ｜さとゝほみ｜ひとしくまねは｜みくさおひにけり
２０１０８０δ　ひるめうた
２０１０８０ζ　さゝのくま｜ひのくまかはに｜こまとめて｜しはしみつかへ｜かけをたにみむ
２０１０８１δ　翻物歌
２０１０８１ζ　あをやきを｜かたいとによりて｜うくひすの｜ぬふといふかさは｜むめのはなかさ
２０１０８２ζ　まかねふく｜きひのなかやま｜おひにせる｜ほそたにかはの｜おとのさやけさ
２０１０８２η　このうたは承和のおほむへのきひのくにのうた
２０１０８３ζ　みまさかや｜くめのさらやま｜さらヽヽに｜わかなはたてし｜よろつよまてに
２０１０８３η　このうたは貞観のおほむへのみまさかのうた
２０１０８４ζ　みのゝくに｜せきのふちかは｜たえすして｜きみにつかへむ｜よろつよまてに
２０１０８４η　これは元慶のおほむへのみのゝうた
２０１０８５ζ　きみかよは｜かきりもあらし｜なかはまの｜いさこのかすは｜よみつくすとも
２０１０８５η　これは仁和の御贄のいせのくにのうた
２０１０８６ε　大伴黒主
２０１０８６ζ　あふみのや｜かゝみのやまを｜たてたれは｜かねてそみゆる｜きみかちとせは
２０１０８６η　これは今上のおほむへのあはみのうた
２０００００β　東歌
２０１０８７δ　みちのくにうた
２０１０８７ζ　あふくまに｜きりたちわたり｜あけぬとも｜きみをはやらし｜まてはすへなし
２０１０８８ζ　みちのくは｜いつくはあれと｜しほかまの｜うらこくふねの｜つなてかなしも
２０１０８９ζ　わかせなを｜みやこにやりて｜しほかまの｜まかきのしまの｜まつそこひしき
２０１０９０ζ　をくろさき｜みつのこしまの｜ひとならは｜みやこのつとに｜いさといはましを
２０１０９１ζ　みさふらひ｜みかさとまうせ｜みやきのゝ｜このしたつゆは｜あめにまされり
２０１０９２ζ　もかみかは｜のほれはくたる｜いなふねの｜いなにはあらす｜このつきはかり
２０１０９３ζ　きみをおきて｜あたしこゝろを｜わかもたは｜すゑのまつやま｜なみもこえなむ
２０１０９４δ　さかみうた
２０１０９４ζ　こよろきの｜いそたちならし｜いそなつむ｜あさしぬらすな｜おきにをれなみ
２０１０９５δ　ひたちうた
２０１０９６ζ　つくはねの｜みねのもみちは｜おちつもり｜しるもしらぬも｜なへくかなしも
２０１０９７δ　かひうた
２０１０９７ζ　かひかねを｜さやにもみしか｜けゝらなく｜きこほりくやる｜さやのなかやま
２０１０９９δ　い勢うた
２０１０９９ζ　をふのうらに｜かたえさしおほひ｜なるなしの｜なりもならすも｜ねてかたらはむ
２０１１００δ　ふゆのかものまつりのうた
２０１１００ε　ふちはらのとしゆきの朝臣
２０１１００ζ　ちはやふる｜かものまつりの｜ひめこまつ｜よろよふとも｜いろはかはらし
２０１１００ζｎ４句「よろつよ」の「つ」脱。
２０００００α　巻第二十