000000　‖　漢字比率　異なり 000000　‖　01　3.34B　 62　1648正保_5年板行_尊円　　　　　　これ単独の漢字はない。 000000　‖　02　4.45D　 72　1692元禄_5年板行_尊円 000000　‖　03　4.52E　 69　1782天明_2年板行_再刻_沢井随山 　これ単独の漢字はない。 000000　‖　04　4.22C　 92　1824文政_7年板行_竜章堂閑斎 000000　‖　05　7.55H　 166　1683天和_3年板行_首書　　　　　　独自漢字最多27。これと06とのみの漢字29，07とのみの漢字10。 000000　‖　06　6.43G　 133　1706宝永_3年板行_旁訓 000000　‖　07　2.65@　 42　1642寛永19年板行_和歌　　　　　　これ単独の漢字はない。 000000　‖　08　3.31A　 76　1725享保10年板行_図解 000000　‖　09　4.98F　 123　1703元禄16年板行_大成　　　　　　独自漢字次多24。 000000　‖　‖旋頭歌処理　……このファイルは短歌のみである。 000000　‖　‖処理 000000　‖　ゝヽゞヽ処理 011006　としのうちにはるはきにけりひとゝせをこぞとやいはんことしとやいはむ 011007　袖ひちてむすびしみづのこほれるをはるたつけふの風やとくらむ 011008　はるたつといふばかりにやみよしのゝやまもかすみてけさはみゆらん 011015　いはそゝくたるみのうへのさわらびのもえいづる春になりにけるかな 011016　やまかぜにとくるこほりのひまごとにうちいづるなみやはるのはつはな 011017　見わたせばひらのたかねにゆききえてわかなつむべく野はなりにけり 011025　もゝしきのおほみや人はいとまあれやさくらかざしてけふもくらしつ 011026　はるはなをわれにてしりぬはなざかりこゝろのどけき人はあらじな 011028　はるのよのやみはあやなしむめのはな色こそみえねかやはかくるゝ 011031　ねのびする野辺にこまつのなかりせばちよのためしになにをひかまし 011032　千とせまでかぎれるまつもけふよりは君にひかれてよろづ世やへん 011033　ねのびしにしめつる野べのひめこまつひかでやちよのかげをまたまし 011035　あすからはわかなつませんかたをかのあしたのはらはけふぞやくめる 011036　あすからはわかなつまんとしめし野にきのふもけふもゆきはふりつゝ 011037　ゆきてみぬ人もしのべとはるのゝのかたみにつめるわかななりけり 011044　三ちとせになるてふもゝのことしよりはなさくはるにあひにけるかな 011049　いたづらにすぐる月日はおほかれどはなみてくらす春ぞすくなき 011056　けふのみとはるをおもはぬときだにもたつことやすき花のかげかは 011057　はなもみなちりぬるやどはゆくはるのふるさとゝこそなりぬべらなれ 011058　またもこんときぞとおもへどたのまれぬ我身にしあればおしきはるかな 011062　さくらばなはるくはゝれるとしだにも人のこゝろにあかれやはせぬ 011072　あらたまのとしたちかへるあしたよりまたるゝものはうぐひすのこゑ 011073　あさみどりはるたつそらにうぐひすのはつこゑまたぬ人はあらじな 011074　うぐひすのこゑなかりせばゆきゝえぬ山ざといかではるをしらまし 011077　きのふこそとしはくれしかはるがすみかすがのやまにはやたちにけり 011078　はるがすみたてるやいづこみよしのゝよしのゝ山にゆきはふりつゝ 011079　あさひさすみねのしらゆきむらぎえてはるのかすみはたなびきにけり 011085　さくらがりあめはふりきぬおなじくはぬるとも花のかげにかくれん 011086　あをやぎのえだにかゝれるはるさめはいともてぬけるたまかとぞみる 011093　いにしとしねこじてうへしわがやどのわかぎのむめははなさきにけり 011094　わがせこにみせんとおもひしむめの花それともみえずゆきのふれゝば 011095　かをとめてたれおらざらんむめの花あやなしかすみたちなかくしそ 011100　君ならでたれにかみせむむめのはないろをもかをもしる人ぞしる 011101　色かをばおもひもいれずむめのはなつねならぬよによそへてぞみる 011110　あをやぎのいとよりかくるはるしもぞみだれて花はほころびにける 011111　はるくればしだりやなぎにまよふいとのいもがこゝろによりにけるかな 011112　あをやぎのまゆにこもれるいとなれば春のくるにぞ色まさりける 011123　よの中にたえてさくらのなかりせばはるのこゝろはのどけからまし 011124　わがやどのはな見がてらにくる人はちりなむのちぞこひしかるべき 011125　みてのみや人にかたらんやまざくらてごとにおりていへづとにせむ 011131　さくらちるこのしたかぜはさむからでそらにしられぬ雪ぞふりける 011132　とのもりのとものみやつここゝろあらばこのはるばかりあさぎよめすな 011135　おもひいづるときはのやまのいはつゝじいはねばこそあれこひしきものを 011138　かはづなくかみなびがはに影みえていまかさくらん山ぶきの花 011139　わがやどのやへのやまぶきひとへだにちりのこらなむはるのかたみに 011142　たごのうらのそこさへにほふふぢなみをかざしてゆかんみぬ人のため 011143　ときはなるまつのなだてにあやなくもかゝれるふぢのさきてちる哉 011146　はなの色にそめしたもとのおしければころもかへうきけふにもあるかな 011149　わがやどのかきねやはるをへだつらんなつきにけりとみゆるうのはな 011153　なつのよをねぬにあけぬといひをきし人はものをやおもはざりけむ 011154　ほとゝぎすなくやさつきのみじかよもひとりしぬればあかしかねつも 011155　なつのよのふすかとすればほとゝぎすなくひとこゑにあくるしのゝめ 011157　わかごまとけふにあひくるあやめぐさおひをくるゝやまくるなるらん 011158　きのふまでよそにおもひしあやめぐさけふわがやどのつまとみるかな 011165　すゞしやとくさむらごとにたちよればあつさぞまさるとこなつのはな 011166　したくゝるみづにあきこそかよふらしむすぶいづみのてさへすゞしき 011167　まつかげのいは井のみづをむすびあげてなつなきとしとおもひけるかな 011169　夏はつるあふぎとあきのしらつゆといづれかまづはをかんとすらん 011170　ねぎごともきかであらぶる神だにもけふはなごしと人はいふなり 011173　さつきまつはなたちばなのかをかげばむかしの人の袖のかぞする 011181　はちすばのにごりにしまぬこゝろもてなにかはつゆをたまとあざむく 011183　さつきやみおぼつかなきをほとゝぎすなくなるこゑのいとゞはるけき 011184　ゆきやらでやまぢくらしつほとゝぎすいまひとこゑのきかまほしさに 011185　さよふけてねざめざりせばほとゝぎすひとづてにこそきくべかりけれ 011190　草ふかきあれたるやどのともしびの風にきえぬはほたるなりけり 011191　つゝめどもかくれぬものはなつむしの身よりあまれるおもひなりけり 011197　なつ山のみねのこずゑのたかければ空にぞせみのこゑはきこゆる 011198　これをみよひともとがめぬこひすとてねをなくむしのなれるすがたを 011201　あまの川かはべすゞしきたなばたにあふぎのかぜをなをやかさまし 011202　あまのがはあふぎのかぜに霧はれてそらすみわたるかさゝぎのはし 011203　きみがてにまかするあきの風なればなびかぬくさもあらじとぞおもふ 011206　あきゝぬとめにはさやかにみえねどもかぜのをとにぞおどろかれぬる 011207　うちつけにものぞかなしきこのはちるあきのはじめをけふとおもへば 011211　あきたちていくかもあらねどこのねぬるあさけのかぜはたもとさむしも 011218　あまのがはとをきわたりにあらねどもきみがふなではとしにこそまて 011219　ひとゝせにひとよとおもへどたなばたのあひみんあきのかぎりなきかな 011220　としごとにあふとはすれどたなばたのぬるよのかずぞすくなかりける 011228　うづらなくいはれのゝべのあきはぎをおもふ人ともみつるけふかな 011229　あきはなをゆふまぐれこそたゞならねおぎのうはかぜはぎのしたつゆ 011232　をぐらやまふもとのゝべのはなすゝきほのかにみゆるあきの夕ぐれ 011238　あしびきのやまどりのおのしだり尾のながヽヽしよをひとりかもねん 011239　むつごともまだつきなくにあけにけりいづらはあきのながしてふよは 011251　みづのおもにてる月なみをかぞふればこよひぞあきのもなかなりける 011258　あまのはらふりさけみればかすがなるみかさの山をいでし月かも 011259　しらくもにはねうちかはしとぶかりのかずさへみゆるあきのよの月 011260　よにふればものおもふとしもなけれども月にいくたびながめしつらん 011265　わがやどのきくのしら露けふごとにいくよつもりてふちとなるらん 011272　こゝろあてにおらばやおらむはつしものをきまどはせるしらぎくの花 011273　ひさかたの雲のうへにて見るきくはあまつほしとぞあやまたれける 011277　やまさびしあきもくれぬとつぐるかもまきの葉ごとにをけるあさしも 011278　くれてゆくあきのかた見にをくものはわがもとゆひのしもにぞありける 011280　をみなへしおほかる野辺にやどりせばあやなくあだの名をやたつべき 011281　をみなへしみるにこゝろはなぐさまでいとゞむかしのあきぞ恋しき 011283　あきのゝにはぎかるをのこなはをなみねるやねりそのくだけてぞおもふ 011284　うつろはんことだにおしきあきはぎにおれぬばかりもをけるつゆかな 011285　あきのゝのはぎのにしきをわがやどにしかのねながらうつしてしがな 011290　ぬししらぬかはにほひつゝあきのゝにたがぬぎかけしふぢばかまぞも 011293　おぼつかなたれとかしらむあきゞりのたえまにみゆるあさがほのはな 011294　あさがほをなにはかなしとおもひけん人をもはなはさこそ見るらめ 011299　ちりをだにすへじとぞおもふさきしよりいもとわがぬるとこなつのはな 011300　はなによりものをぞおもふしらつゆのをくにもいかゞあらむとすらん 011305　しらつゆもしぐれもいたくもるやまはした葉のこらずもみぢしにけり 011306　むらヽヽのにしきとぞみるさほやまのはゝそのもみぢきりたゝぬまは 011314　あすかゞはもみぢ葉ながるかづらきのやまのあきかぜふきぞしくらし 011315　神なづきしぐれとゝもにかみなびのもりのこのはゝふりにこそふれ 011316　みる人もなくてちりぬるおくやまのもみぢはよるのにしきなりけり 011324　あきかぜにはつかりがねぞきこゆなるたがたまづさをかけてきつらん 011326　はるがすみたつを見すてゝ行かりははなゝきさとにすみやならへる 011332　いまこんとたれたのめけむあきのよをあかしかねつゝまつむしのなく 011333　きりヾヾすいたくなゝきそあきの夜のながきおもひはわれぞまされる 011336　もみぢせぬときはのやまにすむしかはおのれなきてや秋をしるらん 011337　ゆふづくよをぐらのやまになくしかのこゑのうちにやあきはくるらん 011340　さをしかのあさたつをのゝ秋はぎにたまとみるまでをけるしらつゆ 011344　たがためのにしきなればかあきゞりのさほのやまべのたちかくすらん 011351　からころもうつこゑきけば月きよみまだねぬ人をそらにしるかな 011355　神なづきふりみふらずみさだめなきしぐれぞふゆのはじめなりける 011358　おもひかねいもがりゆけばふゆのよのかはかぜさむみちどりなくなり 011361　ゆくとしのおしくもあるかなますかゞみみるかげさへにくれぬとおもへば 011366　うづみびのしたにこがれしときよりもかくにくまるゝおりぞわびしき 011373　よをさむみねざめてきけばをしぞなくはらひもあへずしもやをくらん 011381　こゝにわがめづらしとみるはつゆきをよしのゝやまはふりやしぬらん 011382　みよしのゝやまのしら雪つもるらしふるさとさむくなりまさるなり 011383　雪ふれば木ごとに花ぞさきにけるいづれをむめとわきておらまし 011386　おほぞらの月のひかりしさむければかげみし水ぞまづこほりける 011390　やまかはのみぎはまされるはるかぜにたにのこほりはけふやとくらむ 011392　みやまにはあられふるらしとやまなるまさきのかづら色づきにけり 011395　あらたまのとしもくるればつくりけむつみものこらずなりやしぬらん 011397　かぞふればわが身につもるとし月ををくりむかふとなにいそぐらむ 012401　あきかぜのふくにつけてもとはぬかなおぎの葉ならばをとはしてまし 012402　ほのヾヾとありあけの月の月かげにもみぢふきおろす山おろしのかぜ 012409　よそにのみ見てやゝみなむかづらきやたかまの山のみねのしら雲 012415　かすみはれみどりのそらものどけくてあるかなきかにあそぶいとゆふ 012420　あかつきのなからましかばしらつゆのをきてわびしきわかれせましや 012427　ときはなるまつのみどりもはるくればいまひとしほの色まさりけり 012428　われみてもひさしくなりぬすみよしのきしのひめまついくよへぬらん 012429　あまくだるあら人がみのあひをひをおもへばひさしすみよしのまつ 012434　よにふればことの葉しげきくれ竹のうきふしごとにうぐひすのなく 012441　おほあらきのもりのした草おいぬればこまもすさめずかる人もなし 012442　やかずともくさはもえなんかすが野をたゞはるの日にまかせたらなん 012451　わかのうらにしほみちくればかたをなみあしべをさしてたづなきわたる 012452　おほぞらのむれたるたづのさしながらおもふこゝろのありげなるかな 012453　あまつかぜふけゐのうらにゐるたづのなどかくも井にかへらざるべき 012461　わびしらにましらなゝきそあしひきのやまのかひあるけふにやはあらぬ 012469　ことのねにみねのまつかぜかよふらしいづれのをよりしらべそめけむ 012478　いつはりのなきよなりせばいかばかりひとのことのはうれしからまし 012490　ありあけの心地去年すれさかづきに日かげもそひていでぬとおもへば 012496　なのみしてやまはみかさもなかりけりあさひゆふひのさすにぞありける 012497　くものゐるこしのしらやまおひにけりおほくのとしのゆきつもりつゝ 012498　みわたせばまつのはしろきよしのやまいくよつもれるゆきにかあるらむ 012509　神なびのみむろのきしやくづるらんたつたの川の水のにごれる 012520　としをへて花のかゞみとなる水はちりかゝるをやくもるといふ覧 012520　みなかみのさだめてければ君が世にふたゝびすめる堀川のみづ 012526　みかきもり衛じのたくひにあらねどもわれもこゝろのうちに去年たけ 012527　こゝにだにひかりさやけき秋のつき雲のうへこそ思ひやらるれ 012529　いそのかみふるきみやこをきてみればむかしかざゝし花さきにけり 012537　きみなくてけぶりたえにししほがまのうらさびしくもみえわたるかな 012538　きみなくてあれたるやどのいたまより月のもるにも袖はぬれけり 012539　いにしへはちるをやひとのおしみけむいまははなこそむかしこふらし 012553　ぬれてほすやまぢのきくの露のまにいかでかわれは千世をへぬらむ 012563　やまざとはものさびしかることこそあれよのうきよりはすみよかりけり 012564　山ざとはふゆぞさびしさまさりける人めもくさもかれぬとおもへば 012569　はるのたを人にまかせてわれはたゞはなにこゝろをつくるころかな 012570　時すぎばさなへもいたくおいぬべしあめにもたごはさはらざりけり 012571　きのふこそさなへとりしかいつのまにいな葉もそよとあきかぜのふく 012577　きみがやどわがやどわけるかきつばたうつろはんときみむ人もがな 012585　山でらのいりあひのかねのこゑごとにけふもくれぬときくぞわびしき 012586　このもとをすみかとすればをのづからはなみるひとになりぬべきかな 012600　いつしかと君にとおもひしわかなをばのりのためにぞけふはつみつる 012601　ごくらくははるけきほどゝきゝしかどつとめていたるところなりけり 012602　このよにてぼだいのたねをうへつればきみがひくべき身とぞなりぬる 012603　阿のく多羅三みやく三ぼだいの仏たちわがたつそまに冥加あらせたまへ 012610　たらちねはかゝれとてしもむばたまのわがくろかみをなでずやありけむ 012611　よの中にうしのくるまのなかりせばおもひのいへをいかでいでまし 012612　みわがはのきよきながれにすゝぎてしわが名をさらにまたやけがさむ 012623　わがやどはみちもなきまであれにけりつれなき人をまつとせしまに 012630　見わたせばやなぎさくらをこきまぜてみやこぞはるのにしきなりける 012638　おもひやるこゝろばかりはさはらじをなにへだつらんみねのしら雲 012639　としごとのはるのわかれをあはれとも人にをくるゝ人ぞしりける 012640　いのちだにこゝろにかなふものならばなにかわかれのかなしかるべき 012647　ほのヾヾとあかしのうらのあさぎりにしまがくれゆくふねをしぞ思ふ 012648　わたのはらやそしまかけてこぎ出ぬと人にはつげよあまのつりぶね 012649　たよりあらばいかでみやこへつげやらんけふしらかはのせきはこえぬと 012652　おきなかのえざるかたなきつりぶねはあまやさきだつうをやさきだつ 012664　なにはづにさくやこのはなふゆごもりいまははるべとさくやこの花 012665　ちりぬれどまたくるはるはさきぬめり千とせのゝちは君をたのまん 012673　いかるがやとみのをがはのたえばこそわがおほきみのみなはわすれめ 012680　やまざくらあくまで色をみつるかなはなちるべくもかぜふかぬまに 012688　たまくしげふたとせあはぬ君が身をあけながらやはみむとおもひし 012692　たかき屋にのぼりてみればけぶりたつたみのかまどはにぎはひにけり 012696　かぞいろはいかにあはれとおもふらん三とせになりぬあしたゝずして 012704　あしびきのやまがくれなるほとゝぎすきく人もなきねをやなくらむ 012717　あまつかぜ雲のかよひぢ吹とぢよおと女のすがたしばしとゞめむ 012721　しら浪のよするなぎさに世をすぐすあまのこなればやどもさだめず 012732　いづくにか身をばよせましよの中においをいとはぬひとしなければ 012738　君とわれいかなることをちぎりけむむかしの世こそしらまほしけれ 012739　たれをかもしる人にせんたかさごのまつもむかしのともならなくに 012747　いにしへの野中のしみづぬるけれどもとのこゝろをしる人ぞくむ 012748　むかしをばかけじとおもへどいかばかりあやしくめにもみつるみだかな 012749　よの中にあらましかばとおもふ人なきがおほくもなりにけるかな 012762　なにをして身のいたづらにおいぬらんとしのおもはんこともやさしく 012763　よの中はとてもかくてもおなじことみやもわら屋もはてしなければ 012764　かくばかりへがたくみゆるよの中にうらやましくもすめる月かな 012772　うれしさはむかしはそでにつゝみけりこよひは身にもあまりぬるかな 012775　わがきみは千世にやちよにさゞれいしのいはほとなりてこけのむすまで 012776　よろづ世とみかさのやまぞよばふなるあめのしたこそたのしかるらし 012786　わが恋はゆくゑもしらずはてもなしあふをかぎりとおもふばかりぞ 012787　たのめつゝこぬよあまたになりぬればまたじとおもふぞまつにまされる 012788　いまこんといひしばかりにながつきのありあけの月をまちいでつるかな 012795　よの中をなにゝたとへむあさぼらけこぎゆくふねのあとのしらなみ 012795　世のなかはゆめかうつゝかうつゝともゆめともみえずありてなければ 012796　手にむすぶみづにやどれる月かげのあるかなきかの世にこそありけれ 012797　すゑのつゆもとのしづくやよの中のをくれさきだつためしなるらん 012803　しらヽヽししらけたるよの月かげにゆきかきわけてむめの花おる 021006　としのうちにはるはきにけりひとゝせをこぞとやいはむことしとやいはむ 021007　袖ひちてむすびしみづのこほれるをはるたつけふのかぜやとくらむ 021008　春たつといふばかりにやみよし野の山もかすみてけさはみゆらむ 021015　いはそゝくたるひのうへのさわらびのもえいづるはるになりにけるかな 021016　やまかぜにとくるこほりのひまごとにうちいづるなみやはるのはつはな 021017　見わたせばひらのたかねにゆきゝえてわかなつむべく野はなりにけり 021025　もゝしきのおほみや人はいとまあれやさくらかざしてけふもくらしつ 021026　春はなをわれにてしりぬはなざかり心のどけき人はあらじな 021028　はるの夜のやみはあやなしむめのはな色こそみえねかやはかくるゝ 021031　ねのびする野辺にこまつのなかりせばちよのためしになにをひかまし 021032　千とせまでかぎれるまつもけふよりは君にひかれてよろづ世やへむ 021033　ねの日しにしめつる野べのひめこまつひかでやちよのかげをまたまし 021035　あすからはわかなつませんかたをかのあしたのはらはけふぞやくめる 021036　あすからはわかなつまんとしめし野にきのふもけふもゆきはふりつゝ 021037　ゆきてみぬ人もしのべとはるの野ゝかたみにつめるわかななりけり 021044　三ちとせになるてふもゝのことしよりはなさくはるにあひにけるかな 021049　いたづらにすぐる月日はおほけれどはな見てくらす春ぞすくなき 021056　けふのみとはるをおもはぬときだにもたつことやすき花のかげかは 021057　はなもみなちりぬるやどはゆくはるのふるさとゝこそなりぬべらなれ 021058　またもこむときぞと思へどたのまれぬ我身にしあればおしき春かな 021062　さくらばなはるくはゝれるとしだにも人のこゝろにあかれやはせぬ 021072　あらたまのとし立かへるあしたよりまたるゝものはうぐひすの声 021073　あさみどりはるたつそらにうぐひすのはつこゑまたぬ人はあらじな 021074　うぐひすのこゑなかりせばゆきゝえぬ山ざといかではるをしらまし 021077　きのふこそとしはくれしかはるがすみかすがのやまにはやたちにけり 021078　春がすみたてるやいづこみよし野のよしのゝ山に雪はふりつゝ 021079　あさひさすみねのしらゆきむらぎえてはるのかすみはたなびきにけり 021085　さくらがり雨はふりきぬおなじくはぬるともはなのかげにかくれむ 021086　あをやぎのえだにかゝれる春さめはいともてぬけるたまかとぞみる 021093　いにしとしねこじてうへしわがやどのわか木のむめははなさきにけり 021094　わがせこに見せむと思ひしむめの花それともみえず雪のふれゝば 021095　かをとめてたれおらざらんむめの花あやなしかすみたちなかくしそ 021100　君ならでたれにかみせむむめのはな色をもかをもしる人ぞしる 021101　色かをばおもひもいれずむめのはなつねならぬよによそへてぞみる 021110　あをやぎのいとよりかくるはるしもぞみだれてはなはほころびにける 021111　はるくればしだりやなぎにまよふいとのいもがこゝろによりにけるかな 021112　あをやぎのまゆにこもれるいとなれば春のくるにぞ色まさりける 021123　世中にたえてさくらのなかりせばはるのこゝろはのどけからまし 021124　わがやどのはな見がてらにくる人はちりなむのちぞこひしかるべき 021125　見てのみや人にかたらむやまざくらてごとにおりていへづとにせむ 021131　さくらちるこのしたかぜはさむからで空にしられぬ雪ぞふりける 021132　とのもりのとものみやつここゝろあらばこのはるばかりあさぎよめすな 021139　おもひいづるときはのやまの岩つゝじいはねばこそあれこひしきものを 021142　かはづなくかみなび川に影みえていまやさくらん山ぶきのはな 021143　わがやどのやへのやまぶき一えだにちりのこらなむはるのかた見に 021135　たごのうらのそこさへにほふふぢなみをかざしてゆかむみぬひとのため 021136　ときはなるまつのなだてにあやなくもかゝれるふぢのさきてちるかな 021146　はなの色にそめしたもとのおしければころもかへうきけふにもあるかな 021149　わがやどのかきねやはるをへだつらんなつきにけりとみゆるうのはな 021153　なつのよをねぬにあけぬといひ置し人はものをやおもはざりけむ 021154　ほとゝぎすなくやさつきのみじか夜もひとりしぬればあかしかねつも 021155　夏の夜のふすかとすればほとゝぎすなくひとこゑにあくるしのゝめ 021157　わかごまとけふにあひくるあやめぐさおひをくるゝやまくるなるらん 021158　きのふまでよそに思ひしあやめぐさけふわがやどのつまとみるかな 021165　すゞしやとくさむらごとにたちよればあつさぞまさるとこなつのはな 021166　したくゝる水にあきこそかよふらしむすぶいづみの手さへすゞしき 021167　まつかげのいは井のみづを結びあげて夏なきとしとおもひけるかな 021169　夏はつるあふぎと秋のしらつゆといづれかさきにをかんとすらん 021170　ねぎごともきかであらぶる神だにもけふはなごしと人はいふなり 021173　さつきまつはなたちばなのかをかげばむかしの人の袖のかぞする 021181　はちす葉のにごりにしまぬ心もてなにかはつゆをたまとあざむく 021183　さつきやみおぼつかなきをほとゝぎすなくなるこゑのいとゞはるけき 021184　ゆきやらで山ぢくらしつほとゝぎすいまひとこゑのきかまほしさに 021185　さよふけてねざめざりせばほとゝぎすひとづてにこそきくべかりけれ 021190　草ふかきあれたるやどのともしびのかぜにきえぬはほたるなりけり 021191　つゝめどもかくれぬものはなつむしの身よりあまれるおもひなりけり 021197　夏やまのみねのこずゑのたかければ空にぞせみのこゑはきこゆる 021198　これを見よひともとがめぬこひすとて音をなくむしのなれるすがたを 021201　あまの川かはべすゞしきたなばたにあふぎのかぜをなをやかさまし 021202　あまのがはあふぎのかぜに霧はれてそらすみわたるかさゝぎのはし 021203　君が手にまかするあきのかぜなればなびかぬくさもあらじとぞおもふ 021206　あきゝぬとめにはさやかに見えねどもかぜのをとにぞおどろかれぬる 021207　うちつけにものぞかなしきこの葉ちるあきのはじめをけふとおもへば 021211　あきたちていくかもあらねどこのねぬるあさけのかぜはたもとさむしも 021218　あまの川とをきわたりにあらねどもきみがふなではとしにこそまて 021219　ひとゝせにひと夜とおもへどたなばたのあひみんあきのかぎりなきかな 021220　としごとにあふとはすれどたなばたのぬるよのかずぞすくなかりける 021228　うづらなくいはれの野辺のあきはぎをおもふ人ともみつるけふかな 021229　あきはなをゆふまぐれこそたゞならねおぎのうはかぜはぎのした露 021232　をぐらやまふもとの野辺のはなすゝきほのかにみゆるあきの夕ぐれ 021238　あし引の山どりのおのしだり尾のながヽヽしよをひとりかもねむ 021239　むつごともまだつきなくにあけにけりいづらはあきのながしてふよは 021251　水のおもにてる月なみをかぞふればこよひぞあきのもなかなりける 021258　あまのはらふりさけみればかすがなるみかさの山にいでし月かも 021259　しらくもにはねうちかはしとぶかりのかずさへみゆるあきの夜の月 021260　よにふればものおもふとしもなけれ共月にいくたびながめしつらむ 021265　わがやどのきくのしらつゆけふごとにいく代つもりてふちとなるらん 021273　こゝろあてにおらばやおらんはつしものをきまどわせるしらぎくの花 021272　ひさかたの雲のうへにて見るきくはあまつほしとぞあやまたれける 021277　山さびしあきもくれぬとつぐるかもまきの葉ごとにをけるあさしも 021278　くれてゆくあきのかた見にをく物はわがもとゆひのしもにぞありける 021280　をみなへしおほかる野辺にやどりせばあやなくあだの名をやたつべき 021281　をみなへしみるにこゝろはなぐさまでいとゞむかしのあきぞこひしき 021283　秋の野にはぎかるおのこなはをなみねるやねりそのくだけてぞおもふ 021284　うつろはむことだにおしきあきはぎにおれるばかりにをけるつゆかな 021285　あきのゝのはぎのにしきをわがやどにしかの音ながらうつしてしがな 021290　ぬししらぬかはにほひつゝあきのゝにたがぬぎかけしふぢばかまぞも 021293　おぼつかなたれとかしらむあきゞりのたえまにみゆるあさがほのはな 021294　あさがほをなにはかなしとおもひけむ人をもはなはさこそ見るらめ 021299　ちりをだにすへじとぞおもふさきしよりいもとわがぬるとこなつのはな 021300　はなによりものをぞおもふしらつゆのをくにもいかゞあらんとすらん 021305　しらつゆもしぐれもいたくもるやまはした葉のこらずもみぢしにけり 021306　むらヽヽのにしきとぞみるさほやまのはゝそのもみぢきりたゝぬまは 021314　あすからはもみぢばながるかづらきのやまのあきかぜふきぞしぬらし 021315　神なづきしぐれとゝもにかみなびのもりのこのはゝふりにこそふれ 021316　見る人もなくてちりぬるおくやまのもみぢはよるのにしきなりけり 021324　あきかぜにはつかりがねぞきこゆなるたがたまづさをかけてきつらん 021326　はるがすみたつを見すてゝ行かりははなゝきさとにすみやならへる 021332　いまこんとたれたのめけむ秋のよをあかしかねつゝまつむしのなく 021333　きりヾヾすいたくなゝきそあきの夜のながきおもひはわれぞまされる 021336　もみぢせぬときはのやまにすむしかはをのれなきてや秋をしるらむ 021337　ゆふづくよをぐらの山になくしかのこゑのうちにやあきはくるらん 021340　さをしかのあさたつをのゝあきはぎにたまとみるまでをけるしら露 021344　たがためのにしきなればかあきゞりのさほのやまべをたちかくすらん 021351　からころもうつこゑきけば月きよみまだねぬ人をそらにしるかな 021355　神なづきふりみふらずみさだめなきしぐれぞふゆのはじめ成ける 021358　おもひかねいもがりゆけばふゆの夜の川かぜさむみちどりなくなり 021361　ゆくとしのおしくもあるかなますかゞみみるかげさへにくれぬとおもへば 021366　うづみびのしたにこがれしときよりもかくにくまるゝおりぞわびしき 021373　夜をさむみねざめてきけばをしぞなくはらひもあへずしもやをく覧 021381　こゝにわがめづらしとみるはつゆきをよしのゝやまにふりやしぬらん 021382　みよしのゝやまのしら雪つもるらしふるさとさむくなりまさるなり 021383　雪ふれば木ごとにはなぞさきにけるいづれをむめとわきておらまし 021386　おほぞらの月のひかりしさむければかげ見し水ぞまづこほりける 021390　やまかはのみぎはまされるはるかぜにたにのこほりはけふやとくらむ 021392　みやまにはあられふるらしとやまなるまさきのかづら色づきにけり 021395　あらたまのとしもくるればつくりけむつみものこらずなりやしぬらん 021395　としのうちにつくれるつみはかきくらしふるしらゆきと共にきえなむ 021396　かぞふればわが身につもるとしつきををくりむかふとなにいそぐらむ 022401　あきかぜのふくにつけてもとはぬかなおぎの葉ならばをとはしてまし 022402　ほのヾヾとありあけの月の月かげにもみぢふきおろす山おろしのかぜ 022409　よそにのみ見てやゝみなむかづらきやたかまの山のみねのしら雲 022415　かすみはれみどりの空ものどけくてあるかなきかにあそぶいとゆふ 022420　あかつきのなからましかばしら露のをきてわびしきわかれせましや 022427　ときはなるまつのみどりもはるくればいまひとしほの色まさりけり 022428　われ見てもひさしくなりぬすみよしのきしのひめまついくよへぬらん 022429　あまくだるあら人がみのあひをひをおもへばひさしすみよしの松 022434　よにふればことのはしげきくれ竹のうきふしごとにうぐひすのなく 022441　おほあらきのもりのした草おいぬればこまもすさめずかる人もなし 022442　やかずともくさはもえなむかすが野をたゞはるの日にまかせたらなむ 022451　わかのうらにしほみちくればかたをなみあしべをさしてたづなきわたる 022452　おほぞらのむれたるたづのさしながらおもふこゝろのありげなるかな 022453　あまつかぜふけゐのうらにゐるたづのなどかくも井にかへらざるべき 022461　わびしらにましらなゝきそあしひきのやまのかひあるけふにやはあらぬ 022469　ことの音にみねのまつかぜかよふらしいづれのをよりしらべそめけむ 022478　いつはりのなき世なりせばいかばかりひとのことのはうれしからまし 022490　ありあけの心ちこそすれさかづきに日かげもそひて出ぬとおもへば 022496　なのみしてやまはみかさもなかりけりあさひゆふ日のさすにぞありける 022497　くものゐるこしのしらやまおひにけりおほくのとしのゆきつもりつゝ 022498　見わたせばまつのはしろきよしのやま幾世つもれる雪にかあるらん 022509　神なびのみむろのきしやくづるらむたつたの川の水のにごれる 022520　としをへてはなのかゞみとなる水はちりかゝるをやくもるといふらん 022520　みなかみのさだめてければ君が代にふたゝびすめるほり川のみづ 022526　みかきもり衛じのたく火にあらねどもわれもこゝろのうちにこそたけ 022527　こゝにだにひかりさやけきあきの月雲のうへこそおもひやらるれ 022529　いそのかみふるきみやこをきてみればむかしかざしみはなさきにけり 022538　きみなくてけぶりたえにししほがまのうらさびしくも見えわたるかな 022537　きみなくてあれたるやどのいたまより月のもるにも袖はぬれけり 022539　いにしへはちるをやひとのおしみけむいまははなこそむかしこふらし 022553　ぬれてほすやまぢのきくの露のまにいかでかわれは千世をへぬらむ 022563　山里はものさびしかることこそあれよのうきよりはすみよかりけり 022564　山ざとはふゆぞさびしさまさりける人めも草もかれぬとおもへば 022569　はるの田を人にまかせてわれはたゞはなにこゝろをつくるころかな 022570　時すぎばさなへもいたくおいぬべしあめにもたごはさはらざりけり 022571　きのふこそさなへとりしかいつのまにいな葉そよぎてあきかぜのふく 022577　きみがやどわがやどわくるかきつばたうつろはぬまにみむ人もがな 022585　山でらのいりあひのかねのこゑごとにけふもくれぬときくぞわびしき 022586　このもとをすみかとすればをのづからはなみるひとになりぬべきかな 022600　いつしかと君にとおもひしわかなをばのりのためにぞけふはつみつる 022601　ごくらくははるけきほどゝきゝしかどつとめていたるところなりけり 022603　このよにてぼだいのたねをうへつればきみがひくべき身とぞなりぬる 022602　阿のく多ら三みやく三ぼだいの仏たちわがたつそまに冥加あらせたまへ 022610　たらちねはかゝれとてしもむばたまのわがくろかみをなでずやありけん 022611　よの中にうしのくるまのなかりせばおもひのいへをいかでいでまし 022612　みわがはのきよきながれにすゝぎてしわが名をさらにまたやけがさむ 022623　わがやどはみちもなきまであれにけりつれなき人をまつとせしまに 022630　見わたせばやなぎさくらをこきまぜてみやこぞはるのにしきなりける 022638　おもひやるこゝろばかりはさはらじをなにへだつらんみねのしら雲 022639　としごとのはるのわかれをあはれとも人にをくるゝ人ぞしりける 022640　いのちだにこゝろにかなふものならばなにかわかれのかなしかるべき 022647　ほのヾヾとあかしのうらのあさきりにしまがくれゆくふねをしぞ思ふ 022648　わたのはらやそしまかけてこぎ出ぬと人にはつげよあまのつりぶね 022649　たよりあらばいかでみやこへつげやらむけふしらかはのせきはこえぬと 022652　おきなかのえざるかたなきつりぶねはあまやさきだつうをやさきだつ 022652　いかになをひとりもとはんあやしきはおもはぬなかのえさるまじきを 022664　なにはづにさくやこのはなふゆごもりいまははるべとさくやこの花 022665　ちりぬれどまたくるはるはさきぬめり千とせのゝちは君をたのまむ 022673　いかるがやとみのをがはのたえばこそわがおほきみのみなはわすれめ 022680　やまざくらあくまで色をみつるかなはなちるべくもかぜふかぬまに 022688　たまくしげふたとせあはぬ君が身をあけながらやはみむとおもひし 022692　たかき屋にのぼりてみればけぶり立たみのかまどはにぎはひにけり 022696　かぞいろはいかにあはれとおもふらんみとせになりぬあしたゝずして 022704　あしびきのやまがくれなるほとゝぎすきく人もなきねをやなくらむ 022717　あまつかぜ雲のかよひぢふきとぢよをとめのすがたしばしとゞめむ 022721　しらなみのよするなぎさに世をすぐるあまのこなればやどもさだめず 022732　いづくにか身をばよせましよの中においをいとはぬひとしなければ 022738　君とわれいかなることをちぎりけむむかしの世こそしらまほしけれ 022739　たれをかもしる人にせむたかさごのまつもむかしのともならなくに 022747　いにしへの野中のしみづぬるけれどもとのこゝろをしる人ぞくむ 022748　むかしをばかけじとおもへどいかばかりあやしくのにもみつなみだかな 022749　よの中にあらましかばとおもふ人なきがおほくもなりにけるかな 022762　なにをして身のいたづらにおいぬらむとしのおもはんこともやさしく 022763　よの中はとてもかくてもおなじ事みやもわら屋もはてしなければ 022764　かくばかりへがたくみゆるよの中にうらやましくもすめる月かな 022772　うれしさをむかしはそでにつゝみけりこよひは身にもあまりぬるかな 022775　わがきみは千世にやちよにさゞれいしのいはほとなりてこけのむすまで 022776　よろづ世とみかさのやまぞよばふなるあめがしたこそたのしかるらし 022786　わが恋はゆくゑもしらずはてもなしあふをかぎりとおもふばかりぞ 022787　たのめつゝこぬよあまたになりぬればまたじとおもふぞまつにまされる 022788　いまこんといひしばかりにながつきのありあけの月をまちいでつるかな 022795　よの中をなにゝたとへむあさぼらけこぎゆくふねのあとのしらなみ 022795　世中はゆめかうつゝかうつゝともゆめともみえずありてなければ 022796　てにむすぶ水にやどれる月かげのあるかなきかの世にこそありけれ 022797　すゑのつゆもとのしづくやよの中のをくれさきだつためしなるらん 022803　しらヽヽししらけたる夜の月かげにゆきかきわけてむめの花おる 031006　としのうちにはるはきにけりひとゝせをこぞとやいはむことしとやいはん 031007　袖ひちてむすびしみづのこほれるをはるたつけふのかぜやとくらむ 031008　春たつといふばかりにやみよし野の山もかすみてけさは見ゆらむ 031015　いはそゝくたるひのうへのさわらびのもえいづるはるになりにけるかな 031016　やまかぜにとくるこほりのひまごとにうちいづるなみやはるのはつはな 031017　見わたせばひらのたかねにゆききえてわかなつむべく野はなりにけり 031025　もゝしきのおほみや人はいとまあれやさくらかざしてけふもくらしつ 031026　春はなをわれにてしりぬはなざかりこゝろのどけき人はあらじな 031028　はるの夜のやみはあやなしむめのはな色こそ見えねかやはかくるゝ 031031　ねのびする野辺にこまつのなかりせばちよのためしになにをひかまし 031032　千とせまでかぎれる松もけふよりは君にひかれてよろづ世やへむ 031033　ねの日しにしめつる野べのひめこまつひかでや千よのかげをまたまし 031035　あすからはわかなつませんかたをかのあしたのはらはけふぞやくめる 031036　あすからはわかなつまんとしめし野にきのふもけふもゆきはふりつゝ 031037　ゆきてみぬ人もしのべとはるの野にかたみにつめるわかななりけり 031044　三ちとせになるてふもゝのことしよりはなさくはるにあひにけるかな 031049　いたづらにすぐる月日はおほけれどはな見てくらす春ぞすくなき 031056　けふのみとはるをおもはぬときだにもたつことやすき花のかげかは 031057　はなもみなちりぬるやどはゆくはるのふるさとゝこそなりぬべらなれ 031058　またもこむときぞと思へどたのまれぬわが身にしあればおしき春かな 031062　さくらばなはるくはゝれるとしだにも人のこゝろにあかれやはする 031072　あらたまのとし立かへるあしたよりまたるゝものはうぐひすの声 031073　あさみどりはるたつそらにうぐひすのはつこゑまたぬ人はあらじな 031074　うぐひすのこゑなかりせばゆきゝえぬ山ざといかではるをしらまし 031077　きのふこそとしはくれしかはるがすみかすがのやまにはやたちにけり 031078　春がすみたてるやいづこみよし野のよしのゝ山に雪はふりつゝ 031079　あさひさすみねのしらゆきむらぎえてはるのかすみはたなびきにけり 031085　さくらがり雨はふりきぬおなじくはぬるともはなのかげにかくれむ 031086　あをやぎのえだにかゝれる春さめはいともてぬけるたまかとぞ見る 031093　いにしとしねこじてうへしわがやどのわか木のむめははなさきにけり 031094　わがせこに見せむと思ひしむめの花それともみえず雪のふれゝば 031095　かをとめてたれおらざらんむめの花あやなしかすみたちなかくしそ 031100　君ならでたれにか見せむむめのはな色をもかをもしる人ぞしる 031101　色かをばおもひもいれずむめのはなつねならぬよによそへてぞみる 031110　あをやぎのいとよりかくるはるしもぞみだれてはなはほころびにける 031111　はるくればしだりやなぎにまよふいとのいもがこゝろによりにけるかな 031112　あをやぎのまゆにこもれるいとなれば春のくるにぞ色まさりける 031123　世中にたえてさくらのなかりせばはるのこゝろはのどけからまし 031124　わがやどのはな見がてらにくる人はちりなむのちぞこひしかるべき 031125　見てのみや人にかたらむやまざくらてごとにおりていへづとにせむ 031131　さくらちるこのしたかぜはさむからで空にしられぬ雪ぞふりける 031132　とのもりのとものみやつここゝろあらばこのはるばかりあさぎよめすな 031139　おもひいづるときはのやまの岩つゝじいはねばこそあれこひしきものを 031142　かはづなくかみなび川に影みえていまやさくらむ山ぶきのはな 031143　わがやどのやへのやまぶき一えだにちりのこらなむはるのかた見に 031135　たごのうらのそこさへにほふふぢなみをかざしてゆかむみぬひとのため 031136　ときはなるまつのなだてにあやなくもかゝれるふぢのさきてちるかな 031146　はなの色にそめしたもとのおしければころもかへうきけふにもあるかな 031149　わがやどのかきねやはるをへだつらんなつきにけりとみゆるうのはな 031153　なつのよをねぬにあけぬといひをきし人はものをやおもはざりけむ 031154　ほとゝぎすなくやさつきのみじか夜もひとりしぬればあかしかねつも 031155　夏の夜はふすかとすればほとゝぎすなくひとこゑにあくるしのゝめ 031157　わかごまとけふにあひくるあやめぐさおひをくるゝやまくるなるらん 031158　きのふまでよそに思ひしあやめぐさけふわがやどのつまとみるかな 031165　すゞしやとくさむらごとにたちよればあつさぞまさるとこなつのはな 031166　したくゝる水にあきこそかよふらしむすぶいづみの手さへすゞしき 031167　まつかげのいは井のみづを結びあげて夏なきとしとおもひけるかな 031169　夏はつるあふぎと秋のしらつゆといづれかさきにをかんとすらん 031170　ねぎごともきかであらぶる神だにもけふはなごしと人はいふなり 031173　さつきまつはなたちばなのかをかげばむかしの人の袖のかぞする 031181　はちす葉のにごりにしまぬ心もてなにかはつゆをたまとあざむく 031183　さつきやみおぼつかなきをほとゝぎすなくなるこゑのいとゞはるけき 031184　ゆきやらで山ぢくらしつほとゝぎすいまひとこゑのきかまほしさに 031185　さよふけてねざめざりせばほとゝぎすひとづてにこそきくべかりけれ 031190　草ふかきあれたるやどのともしびのかぜにきえぬはほたるなりけり 031191　つゝめどもかくれぬものはなつむしの身よりあまれるおもひなりけり 031197　夏やまのみねのこずゑのたかければ空にぞせみのこゑはきこゆる 031198　これを見よひともとがめぬこひすとて音をなくむしのなれるすがたを 031201　あまの川かはべすゞしきたなばたにあふぎのかぜをなをやかさまし 031202　あまのがはあふぎのかぜに霧はれてそらすみわたるかさゝぎのはし 031203　君が手にまかするあきのかぜなればなびかぬくさもあらじとぞおもふ 031206　あきゝぬとめにはさやかに見えねどもかぜのをとにぞおどろかれぬる 031207　うちつけにものぞかなしきこの葉ちるあきのはじめをけふとおもへば 031211　あきたちていくかもあらねどこのねぬるあさけのかぜはたもとさむしも 031218　あまの川とをきわたりにあらねどもきみがふなではとしにこそまて 031219　ひとゝせにひと夜とおもへどたなばたのあひみんあきのかぎりなきかな 031220　としごとにあふとはすれどたなばたのぬるよのかずぞすくなかりける 031228　うづらなくいはれの野辺のあきはぎをおもふ人ともみつるけふかな 031229　あきはなをゆふまぐれこそたゞならねおぎのうはかぜはぎのした露 031232　をぐらやまふもとの野辺のはなすゝきほのかにみゆるあきの夕ぐれ 031238　あしびきの山どりのおのしだり尾のながヽヽしよをひとりかもねむ 031239　むつごともまだつきなくにあけにけりいづらはあきのながしてふよは 031251　水のおもにてる月なみをかぞふればこよひぞあきのもなかなりける 031258　あまのはらふりさけみればかすがなるみかさの山にいでし月かも 031259　しらくもにはねうちかはしとぶかりのかずさへみゆるあきの夜の月 031260　よにふればものおもふとしもなけれ共月にいくたびながめしつらむ 031265　わがやどのきくのしらつゆけふごとにいく代つもりてふちとなるらん 031273　こゝろあてにおらばやおらんはつしものをきまどはせるしらぎくの花 031272　ひさかたの雲のうへにて見るきくはあまつほしとぞあやまたれける 031277　山さびしあきもくれぬとつぐるかもまきの葉ごとにをける朝しも 031278　くれてゆくあきのかた見にをく物はわがもとゆひのしもにぞありける 031280　をみなへしおほかる野辺にやどりせばあやなくあだの名をやたつべき 031281　をみなへしみるにこゝろはなぐさまでいとゞむかしのあきぞこひしき 031283　秋の野にはぎかるおのこなはをなみねるやねりそのくだけてぞおもふ 031284　うつろはむことだにおしきあきはぎにおれるばかりにをけるつゆかな 031285　あきのゝのはぎのにしきをわがやどにしかの音ながらうつしてしがな 031290　ぬししらぬかはにほひつゝあきのゝにたがぬぎかけしふぢばかまぞも 031293　おぼつかなたれとかしらむあきゞりのたえまにみゆるあさがほのはな 031294　あさがほをなにはかなしとおもひけむ人をもはなはさこそ見るらめ 031299　ちりをだにすへじとぞおもふさきしよりいもとわがぬるとこなつのはな 031300　はなによりものをぞおもふしらつゆのをくにもいかゞあらんとすらん 031305　しらつゆもしぐれもいたくもるやまはした葉のこらずもみぢしにけり 031306　むらヽヽのにしきとぞみるさほやまのはゝそのもみぢきりたゝぬまは 031314　あすからはもみぢ葉ながるかづらきのやまのあきかぜふきぞしぬらし 031315　神なづきしぐれとゝもにかみなびのもりのこのはゝふりにこそふれ 031316　見る人もなくてちりぬるおくやまのもみぢはよるのにしきなりけり 031324　あきかぜにはつかりがねぞきこゆなるたがたまづさをかけてきつらん 031326　はるがすみたつを見すてゝ行かりははなゝきさとにすみやならへる 031332　いまこんとたれたのめけむ秋のよをあかしかねつゝまつむしのなく 031333　きりヾヾすいたくなゝきそあきの夜のながきおもひはわれぞまされる 031336　もみぢせぬときはのやまにすむしかはをのれなきてや秋をしるらむ 031337　ゆふづくよをぐらの山になくしかのこゑのうちにやあきはくるらん 031340　さをしかのあさたつをのゝあきはぎにたまとみるまでをけるしら露 031344　たがためのにしきなればかあきゞりのさほのやまべをたちかくすらん 031351　からころもうつこゑきけば月きよみまだねぬ人をそらにしるかな 031355　神なづきふりみふらずみさだめなきしぐれぞふゆのはじめ成ける 031358　おもひかねいもがりゆけばふゆの夜の川かぜさむみちどりなくなり 031361　ゆくとしのおしくもあるかなますかゞみみるかげさへにくれぬとおもへば 031366　うづみびのしたにこがれしときよりもかくにくまるゝおりぞわびしき 031373　夜をさむみねざめてきけばをしぞなくはらひもあへずしもやをく覧 031381　こゝにわがめづらしとみるはつゆきをよしのゝやまにふりやしぬらん 031382　みよしのゝやまのしら雪つもるらしふるさとさむくなりまさるなり 031383　雪ふれば木ごとにはなぞさきにけるいづれをむめとわきておらまし 031386　おほぞらの月のひかりしさむければかげ見し水ぞまづこほりける 031390　やまかはのみぎはまされるはるかぜにたにのこほりはけふやとくらむ 031392　みやまにはあられふるらしとやまなるまさきのかづら色づきにけり 031395　あらたまのとしもくるればつくりけむつみものこらずなりやしぬらん 031395　としのうちにつくれるつみはかきくらしふるしらゆきと共にきえなむ 031396　かぞふればわが身につもるとしつきををくりむかふとなにいそぐらむ 032401　あきかぜのふくにつけてもとはぬかなおぎの葉ならばをとはしてまし 032402　ほのヾヾとありあけの月の月かげにもみぢふきおろす山おろしのかぜ 032409　よそにのみ見てややみなむかづらきやたかまの山のみねのしら雲 032415　かすみはれみどりの空ものどけくてあるかなきかにあそぶいとゆふ 032420　あかつきのなからましかばしら露のをきてわびしきわかれせましや 032427　ときはなるまつのみどりもはるくればいまひとしほの色まさりけり 032428　われ見てもひさしくなりぬすみよしのきしのひめまついくよへぬらん 032429　あまくだるあら人がみのあひをひをおもへばひさしすみよしの松 032434　よにふればことのはしげきくれ竹のうきふしごとにうぐひすのなく 032441　おほあらきのもりのした草おいぬればこまもすさめずかる人もなし 032442　やかずともくさはもえなんかすが野をたゞはるの日にまかせたらなむ 032451　わかのうらにしほみちくればかたをなみあしべをさしてたづなきわたる 032452　おほぞらのむれたるたづのさしながらおもふこゝろのありげなるかな 032453　あまつかぜふけゐのうらにゐるたづのなどかくも井にかへらざるべき 032461　わびしらにましらなゝきそあしひきのやまのかひあるけふにやはあらぬ 032469　ことの音にみねのまつかぜかよふらしいづれのをよりしらべそめけむ 032478　いつはりのなき世なりせばいかばかりひとのことのはうれしからまし 032490　ありあけの心ちこそすれさかづきの日かげもそひて出ぬとおもへば 032496　なのみしてやまはみかさもなかりけりあさひゆふ日のさすにぞありける 032497　くものゐるこしのしらやまおひにけりおほくのとしのゆきつもりつゝ 032498　見わたせばまつのはしろきよしの山いくよつもれる雪にかあるらん 032509　神なびのみむろのきしやくづるらむたつたの川の水のにごれる 032520　としをへてはなのかゞみとなる水はちりかゝるをやくもるといふらん 032520　みなかみのさだめてければ君が代にふたゝびすめるほり川のみづ 032526　みかきもり衛じのたく火にあらねどもわれもこゝろのうちにこそたけ 032527　こゝにだにひかりさやけきあきの月雲のうへこそおもひやらるれ 032529　いそのかみふるきみやこをきてみればむかしかざしゝはなさきにけり 032538　きみなくてけぶりたえにししほがまのうらさびしくも見へわたるかな 032537　きみなくてあれたるやどのいたまより月のもるにも袖はぬれけり 032539　いにしへははるをやひとのおしみけむいまははなこそむかしこふらし 032553　ぬれてほすやまぢのきくの露のまにいかでかわれは千世をへぬらむ 032563　山里はものさびしかることこそあれよのうきよりはすみよかりけり 032564　山ざとはふゆぞさびしさまさりける人めも草もかれぬとおもへば 032569　はるの田を人にまかせてわれはたゞはなにこゝろをつくるころかな 032570　時すぎばさなへもいたくおいぬべしあめにもたごはさはらざりけり 032571　きのふこそさなへとりしかいつのまにいな葉もそよとあきかぜのふく 032577　きみがやどわがやどわくるかきつばたうつろはぬまにみむ人もがな 032585　山でらのいりあひのかねのこゑごとにけふもくれぬときくぞわびしき 032586　このもとをすみかとすればをのづからはなみるひとになりぬべきかな 032600　いつしかと君にとおもひしわかなをばのりのためにぞけふはつみつる 032601　ごくらくははるけきほどゝきゝしかどつとめていたるところなりけり 032603　このよにてぼだひのたねをうへつればきみがひくべき身とぞなりぬる 032602　阿のく多ら三みやく三ぼだひの仏たちわがたつそまに冥加あらせたまへ 032610　たらちねはかゝれとてしもむばたまのわがくろかみをなでずやありけん 032611　よの中にうしのくるまのなかりせばおもひのいゑをいかでいでまし 032612　みわがはのきよきながれにすゝぎてしわが名をさらにまたやけがさむ 032623　わがやどはみちもなきまであれにけりつれなき人をまつとせしまに 032630　見わたせばやなぎさくらをこきまぜてみやこぞはるのにしきなりける 032638　おもひやるこゝろばかりはさはらじをなにへだつらんみねのしら雲 032639　としごとのはるのわかれをあはれとも人にをくるゝ人ぞしりける 032640　いのちだにこゝろにかなふものならばなにかわかれのかなしかるべき 032647　ほのヾヾとあかしのうらのあさぎりにしまがくれゆくふねをしぞ思ふ 032648　わたのはらやそしまかけてこぎ出ぬと人にはつげよあまのつりぶね 032649　たよりあらばいかでみやこへつげやらむけふしらかはのせきはこえぬと 032652　おきなかのえざるかたなきつりぶねはあまやさきだつうをやさきだつ 032652　いかになをひとりもとはんあやしきはおもはぬなかのえさるまじきを 032664　なにはづにさくやこのはなふゆごもりいまははるべとさくやこの花 032665　ちりぬれどまたくるはるはさきぬめり千とせのゝちは君をたのまむ 032673　いかるがやとみのをがはのたえばこそわがおほきみのみなはわすれめ 032680　やまざくらあくまで色をみつるかなはなちるべくもかぜふかぬまに 032688　たまくしげふたとせあはぬ君が身をあけながらやはみむとおもひし 032692　たかき屋にのぼりてみればけぶり立たみのかまどはにぎはひにけり 032696　かぞいろはいかにあはれとおもふらん三とせになりぬあしたゝずして 032704　あしびきのやまがくれなるほとゝぎすきく人もなきねをやなくらむ 032717　あまつかぜ雲のかよひぢふきとぢよをとめのすがたしばしとゞめむ 032721　しらなみのよするなぎさに世をすぐすあまのこなればやどもさだめず 032732　いづくにか身をばよせましよの中においをいとはぬひとしなければ 032738　君とわれいかなることをちぎりけむむかしの世こそしらまほしけれ 032739　たれをかもしる人にせんたかさごのまつもむかしのともならなくに 032747　いにしへの野中のしみづぬるけれどもとのこゝろをしる人ぞくむ 032748　むかしをばかけじとおもへどいかばかりあやしくめにもみつなみだかな 032749　よの中にあらましかばとおもふ人なきがおほくもなりにけるかな 032762　なにをして身のいたづらにおいぬらむとしのおもはんこともやさしく 032763　よの中はとてもかくてもおなじ事みやもわら屋もはてしなければ 032764　かくばかりへがたくみゆるよの中にうらやましくもすめる月かな 032772　うれしさをむかしはそでにつゝみけりこよひは身にもあまりぬるかな 032775　きみがよは千世にやちよにさゞれいしのいはほとなりてこけのむすまで 032776　よろづ世とみかさのやまぞよばふなるあめがしたこそたのしかるらし 032786　わが恋はゆくゑもしらずはてもなしあふをかぎりとおもふばかりぞ 032787　たのめつゝこぬよあまたになりぬればまたじとおもふぞまつにまされる 032788　いまこんといひしばかりにながつきのありあけの月をまちいでつるかな 032795　よの中をなにゝたとへむあさぼらけこぎゆくふねのあとのしらなみ 032795　世中はゆめかうつゝかうつゝともゆめともみえずありてなければ 032796　手にむすぶ水にやどれる月かげのあるかなきかの世にこそありけれ 032797　すゑのつゆもとのしづくやよの中のをくれさきだつためしなるらん 032803　しらヽヽししらけたる夜の月かげにゆきかきわけてむめの花おる 041003　年のうちにはるはきにけりひとゝせをこぞとやいはんことしとやいはむ 041007　袖ひちてむすびし水のこほれるをはるたつけふのかぜやとくらむ 041008　はるたつといふばかりにやみよし野ゝやまもかすみてけさはみゆらん 041016　山かぜにとくるこほりのひまごとにうちいづるなみやはるのはつはな 041015　いはそゝくたるみのうへのさわらびのもえいづる春になりにけるかな 041017　見わたせばひらのたかねにゆききへてわかなつむべく野はなりにけり 041025　もゝしきの大宮人はいとまあれやさくらかざしてけふもくらしつ 041026　はるはなをわれにてしりぬ花ざかりこゝろのどけき人はあらじな 041028　はるのよのやみはあやなしむめのはな色こそ見えねかやはかくるゝ 041031　子日する野辺にこまつのなかりせば千世のためしになにをひかまし 041032　ちとせまでかぎれるまつもけふよりは君にひかれてよろづ代やへん 041033　ねのびしにしめつる野べのひめこまつひかでやちよのかげをまたまし 041035　あすからはわかなつませんかたをかのあしたのはらはけふぞやくめる 041036　あすからはわかなつまんとしめし野にきのふもけふもゆきはふりつゝ 041037　ゆきてみむ人もしのべとはるの野ゝかたみにつめるわかなゝりけり 040044　三ちとせになるてふもゝのことしよりはなさくはるにあひにけるかな 041049　いたづらにすぐる月日はおほかれどはなみてくらす春ぞすくなき 041056　けふのみと春をおもはぬときだにもたつことやすきはなのかげかは 041057　はなもみなちりぬるやどはゆくはるのふるさとゝこそなりぬべらなれ 041058　またもこむときぞと思へどたのまれぬわが身にしあればおしきはるかな 041062　さくら花はるくはゝれるとしだにもひとのこゝろにあかれやはする 041072　あらたまのとしたちかへるあしたよりまたるゝものはうぐひすのこゑ 041073　あさみどりはるたつ空にうぐひすのはつこゑまたぬ人はあらじな 041074　うぐひすのこゑなかりせばゆきゝえぬ山ざといかではるをしらまし 041077　きのふこそとしはくれしかはるがすみかすがのやまにはやたちにけり 041078　はるがすみたてるやいづこみよし野ゝよしのゝ山にゆきはふりつゝ 041079　あさひさすみねのしらゆきむらぎえてはるのかすみはたなびきにけり 041085　さくらがりあめはふりきぬおなじくはぬるともはなのかげにかくれん 041086　あをやぎのえだにかゝれるはるさめはいともてぬけるたまかとぞ見る 041093　いにしとしねこじてうへしわがやどのわかぎのむめははなさきにけり 041094　わがせこにみせむとおもひし梅のはなそれともみへずゆきのふれゝば 041095　かをとめてたれおらざらんむめの花あやなしかすみたちなかくしそ 041100　君ならでたれにかみせむむめのはな色をもかをもしる人ぞしる 041101　いろかをばおもひもいれずむめのはなつねならぬよによそへてぞみる 041110　あをやぎのいとよりかくるはるしもぞみだれてはなはほころびにけり 041111　春くればしだりやなぎにまがふいとのいもがこゝろによりにけるかな 041112　あをやぎのまゆにこもれるいとなればはるのくるにぞ色まさりける 041123　世中にたえてさくらのなかりせばはるのこゝろはのどけからまし 041124　わがやどのはな見がてらにくる人はちりなむのちぞこひしかるべき 041125　みてのみや人にかたらんやまざくらてごとにおりていへづとにせむ 041131　さくらちるこのしたかぜはさむからでそらにしられぬ雪ぞふりける 041132　とのもりのとものみやつここゝろあらばこのはるばかりあさぎよめすな 041139　おもひいづるときはの山のいはつゝじいはねばこそあれこひしきものを 041142　かはづなくかみなび川に影みえていまやさくらん山ぶきのはな 041143　わがやどのやへのやまぶきひとへだにちりのこらなんはるのかた見に 041135　たごのうらのそこさへにほふふぢなみをかざしてゆかんみぬ人のため 041136　ときはなるまつのなだてにあやなくもかゝれるふぢのさきて散かな 041146　はなの色にそめしたもとのおしければころもかへうきけふにもあるかな 041149　我やどのかきねやはるをへだつらんなつきにけりとみゆるうのはな 041153　なつのよをねぬにあけぬといひをきしひとはものをやおもはざりけむ 041154　ほとゝぎすなくやさつきのみじかよもひとりしぬればあかしかねつも 041155　なつのよのふすかとすればほとゝぎすなく一こゑにあくるしのゝめ 041157　わかごまとけふにあひくるあやめぐさおひをくるゝやまくるなるらん 041158　きのふまでよそにおもひしあやめ草けふわがやどのつまとみるかな 041165　すゞしやと草むらごとにたちよればあつさぞまさるとこなつのはな 041166　したくゝるみづにあきこそかよふらしむすぶいづみのてさへすゞしき 041167　松かげのいは井のみづをむすびあげてなつなきとしとおもひけるかな 041169　夏はつるあふぎとあきのしらつゆといづれかさきにをかんとすらん 041170　ねぎごともきかであらぶる神だにもけふはなごしと人はいふなり 041173　さつきまつはなたちばなのかをかげばむかしの人の袖のかぞする 041181　はちす葉のにごりにしまぬ心もてなにかはつゆをたまとあざむく 041183　さつきやみおぼつかなきにほとゝぎすなくなるこゑのいとゞはるけき 041184　ゆきやらでやまぢくらしつほとゝぎすいまひとこゑのきかまほしさに 041185　さよふけてねざめざりせばほとゝぎす人づてにこそきくべかりけれ 041190　草ふかきあれたるやどのともしびのかぜにきえぬはほたるなりけり 041191　つゝめどもかくれぬものはなつむしの身よりあまれるおもひなりけり 041197　夏山のみねのこずゑのたかければ空にぞせみのこゑはきこゆる 041198　これをみよひともとがめぬこひすとてねをなくむしのなれるすがたを 041201　あまの川かはべすゞしきたなばたにあふぎのかぜをなほやかさまし 041202　あまの河あふぎのかぜに霧はれてそらすみわたるかさゝぎのはし 041203　君が手にまかするあきのかぜなればなびかぬくさもあらじとぞ思ふ 041206　あきゝぬとめにはさやかにみえねどもかぜのをとにぞおどろかれぬる 041207　うちつけにものぞかなしきこのはちるあきのはじめをけふとおもへば 041211　あきたちていくかもあらねどこのねぬるあさけのかぜはたもとすゞしも 041218　あまの川とをきわたりにあらねどもきみがふなではとしにこそまて 041219　ひとゝせにひとよとおもへどたなばたのあひみんあきのかぎりなきかな 041220　としごとにあふとはすれどたなばたのぬるよのかずぞすくなかりける 041228　うづらなくいはれの野べのあき萩をおもふ人ともみつるけふかな 041229　あきはなをゆふまぐれこそたゞならねおぎのうはかぜはぎのした露 041232　をぐらやまふもとのゝべの花すゝきほのかにみゆるあきの夕ぐれ 041238　あしびきのやまどりのおのしだり尾のながヽヽしよをひとりかもねむ 041239　むつごともまだつきなくにあけにけりいづらはあきのながしてふよは 041251　水の面にてる月なみをかぞふればこよひぞあきのもなかなりける 041258　あまのはらふりさけみればかすがなるみかさの山をいでし月かも 041259　しら雲にはねうちかはしとぶかりのかずさへみゆるあきのよの月 041260　よにふればものおもふとしはなけれども月にいくたびながめしつらん 041265　わがやどのきくのしら露けふごとにいくよつもりてふちとなるらん 041272　ひさかたの雲のうへにて見るきくはあまつほしとぞあやまたれける 041273　こゝろあてにおらばやおらむはつしものをきまどはせるしらぎくのはな 041277　やまさびしあきもくれぬとつぐるかもまきの葉ごとにをけるあさしも 041278　くれてゆくあきのかた見にをくものはわがもとゆひのしもにぞありける 041280　をみなへしおほかる野辺にやどりせばあやなくあだの名をやたつべき 041281　をみなへしみるにこゝろはなぐさまでいとゞむかしのあきぞこひしき 041283　あきのゝにはぎかるをのこなはをなみねるやねりそのくだけてぞ思ふ 041284　うつろはむことだにおしきあき萩におれぬばかりもをけるつゆかな 041285　あきのゝにはぎのにしきをわがやどにしかのねながらうつしてしがな 041290　ぬしゝらぬかはにほひつゝあきのゝにたがぬぎかけしふぢばかまぞも 041293　おぼつかなたれとかしらむあきゞりのたえまにみゆるあさがほのはな 041294　あさがほをなにはかなしとおもひけんひとをもはなはさこそみるらめ 041299　塵をだにすへじとぞ思ふさきしよりいもとわがぬるとこなつのはな 041300　はなによりものをぞおもふしらつゆのをくにもいかゞあらんとすらむ 041305　しらつゆもしぐれもいたくもるやまはした葉のこらずもみぢしにけり 041306　むらヽヽのにしきとぞみるさほやまのはゝそのもみぢきりたゝぬまは 041314　あすかゞはもみぢばながるかづらきのやまのあきかぜふきぞしくらし 041315　神なづきしぐれとゝもにかみなびのもりのこのはゝふりにこそふれ 041316　みる人もなくてちりぬるをくやまのもみぢはよるのにしきなりけり 041324　あきかぜにはつかりがねぞきこゆなるたがたまづさをかけてきつらん 041326　はるがすみたつを見すてゝゆくかりははなゝきさとにすみやならへる 041332　今こむとたれたのめけんあきのよをあかしかねつもまつむしのなく 041333　きりヾヾすいたくなゝきそあきの夜のながきおもひはわれぞまされる 041336　もみぢせぬときはのやまにすむしかはおのれなきてやあきをしるらん 041337　ゆふづくよをぐらの山になくしかのこゑのうちにやあきはくるらむ 041340　さをしかのあさたつをのゝあきはぎにたまとみるまでをけるしら露 041344　たがためのにしきなればかあきゞりのさほのやまべをたちかくすらむ 041351　からころもうつこゑきけば月きよみまだねぬ人を空にしるかな 041355　神なづきふりみふらずみさだめなきしぐれぞふゆのはじめなりける 041358　おもひかねいもがりゆけばふゆのよのかはかぜさむみちどりなくなり 041361　ゆくとしのおしくもあるかなますかゞみ見るかげさへにくれぬと思へば 041366　うづみ火のしたにこがれしときよりもかくにくまるゝおりぞわびしき 041373　よをさむみねざめてきけば鴛ぞなくはらひもあへずしもやをくらん 041381　こゝにわがめづらしとみるはつゆきをよしのゝやまはふりやしぬらん 041382　みよし野の山のしらゆきつもるらしふるさとさむくなりまさるなり 041383　ゆきふれば木ごとにはなぞさきにけるいづれをむめとわきておらまし 041386　おほぞらの月のひかりしさむければかげみし水ぞまづこほりける 041390　山河のみぎはまされるはるかぜにたにのこほりはけふやとくらむ 041392　みやまにはあられふるらしとやまなるまさきのかづら色づきにけり 041395　あらたまのとしもくるればつくりけむつみものこらずなりやしぬらん 041396　かぞふればわが身につもるとしつきををくりむかふとなにいそぐらむ 041396　としのうちにつくれるつみもかきくらしふるしら雪とゝもにきえなん 042401　あきかぜのふくにつけてもとはぬかなおぎの葉ならばをとはしてまし 042402　ほのヾヾとありあけのつきの月かげにもみぢふきおろす山おろしのかぜ 042409　よそにのみ見てややみなむかづらきやたかまのやまのみねのしら雲 042415　霞はれみどりのそらものどけくてあるかなきかにあそぶいとゆふ 042420　あかつきのなからましかばしらつゆのをきてわびしきわかれせましや 042427　ときはなるまつのみどりもはるくればいまひとしほの色まさりけり 042428　われみてもひさしくなりぬすみよしのきしのひめまついくよへぬらん 042429　あまくだるあら人がみのあひをひをおもへばひさしすみよしのまつ 042434　よにふればことの葉しげきくれ竹のうきふしごとにうぐひすのなく 042434　しぐれふるをとはすれどもくれ竹のなどよとゝもにいろもかはらぬ 042442　やかずともくさはもえなんかすが野をたゞはるの日にまかせたらなん 042441　おほあらきのもりのしたくさおいぬればこまもすさめずかる人もなし 042451　わかのうらにしほみちくればかたをなみあしべをさしてたづなきわたる 042452　おほぞらにむれたるたづのさしながらおもふこゝろのありげなるかな 042453　天津かぜふけゐのうらにゐるたづのなどかくも井にかへらざるべき 042461　わびしらにましらなゝきそあし曳のやまのかひあるけふにやはあらぬ 042469　ことのねにみねのまつかぜかよふらしいづれのをよりしらべそめけむ 042478　いつはりのなきよなりせばいかばかりひとのことの葉うれしからまし 042490　ありあけの心地去年すれさかづきに日かげもそひていでぬとおもへば 042496　なのみしてやまはみかさもなかりけりあさひゆふ日のさすにぞありける 042497　くものゐるこしのしらやまおいにけりおほくのとしのゆきつもりつゝ 042498　みわたせばまつのはしろきよしのやまいくよつもれるゆきにかあるらん 042509　神なびのみむろのきしやくづるらんたつたの川の水のにごれる 042520　としをへて花のかゞみとなる水はちりかゝるをやくもるといふ覧 042520　みなかみのさだめてければ君が世にふたゝびすめる堀川のみづ 042526　みかきもり衛じのたくひにあらねどもわれもこゝろのうちに去年たけ 042527　こゝにだにひかりさやけきあきの月雲のうへこそおもひやらるれ 042529　いそのかみふるきみやこをきてみればむかしかざしゝはなさきにけり 042538　きみなくてけぶりたえにししほがまのうらさびしくも見えわたるかな 042539　いにしへはちるをやひとのおしみけむいまははなこそむかしこふらし 042553　ぬれてほすやまぢの菊の露のまにいつか千とせをわれはへにけむ 042563　山里はものゝさびしきことこそあれよのうきよりはすみよかりけり 042564　やまざとはふゆぞさびしさまさりける人めもくさもかれぬとおもへば 042569　はるのたを人にまかせてわれはたゞはなにこゝろをつくるころかな 042570　ときすぎばさなへもいたくおいぬべしあめにもたごはさはらざりけり 042571　きのふこそさなへとりしかいつのまにいなばそよぎてあきかぜのふく 042577　きみがやどわがやどわけるかきつばたうつろはむときみむ人もがな 042585　山でらのいりあひのかねのこゑごとにけふもくれぬときくぞわびしき 042586　このもとをすみかとすればをのづからはなみるひとになりぬべきかな 042600　いつしかと君にとおもひしわかなをばのりのためにぞけふはつみつる 042601　ごくらくははるけきほどゝきゝしかどつとめていたるところなりけり 042603　このよにてぼだいのたねをうへつればきみがひくべき身とぞなりぬる 042602　阿のく多羅三みやく三ぼだいの仏たちわがたつそまに冥加あらせたまへ 042610　たらちねはかゝれとてしもむばたまのわがくろかみをなでずやありけむ 042611　よの中にうしのくるまのなかりせばおもひのいへをいかでいでまし 042612　みわがはのきよきながれにすゝぎてしわが名をさらにまたやけがさむ 042623　わがやどはみちもなきまであれにけりつれなき人をまつとせしまに 042630　見わたせばやなぎさくらをこきまぜてみやこぞ春のにしきなりける 042638　おもひやるこゝろばかりはさはらじをなにへだつらん峰のしらくも 042639　としごとのはるのわかれをあはれとも人にをくるゝひとぞしりける 042640　いのちだにこゝろにかなふものならばなにかわかれのかなしかるべき 042647　ほのヾヾとあかしのうらのあさ霧にしまがくれゆく舟をしぞ思ふ 042648　和田のはら八十島かけてこぎ出ぬと人にはつげよあまのつりぶね 042649　たよりあらばいかでみやこへつげやらんけふしらかはのせきはこえぬと 042652　おきなかのえざるかたなきつりぶねはあまやさきだつうをやさきだつ 042652　いかでなを人にもとはむあやしきはおもはぬなかのえさるまじきを 042664　なにはづにさくやこのはなふゆごもりいまははるべとさくやこのはな 042665　散ぬれどまたくるはるはさきぬめりちとせのゝちは君をたのまむ 042673　いかるがやとみのをがはのたえばこそわがおほきみのみなはわすれめ 042680　やまざくらあくまで色をみつるかなはなちるべくもかぜふかぬまに 042688　たまくしげふたとせあはぬ君が身をあけながらやはあらむと思ひし 042692　たかき屋にのぼりてみればけぶりたつたみのかまどはにぎはひにけり 042696　かぞいろはいかにあはれとおもふらんみとせになりぬあしたゝずして 042704　あしびきの山がくれなるほとゝぎすきく人もなきねをやなくらん 042717　あまつかぜ雲のかよひぢ吹とぢよおと女のすがたしばしとゞめむ 042721　しら浪のよするなぎさに世をすぐるあまのこなればやどもさだめず 042732　いづくにか身をばよせましよの中に老をいとはぬひとしなければ 042738　君とわれいかなることをちぎりけむむかしのよこそしらまほしけれ 042739　誰をかもしる人にせむ高砂のまつもむかしのともならなくに 042747　いにしへの野中のしみづぬるけれどもとのこゝろをしる人ぞくむ 042748　むかしをばかけじとおもへどいかばかりあやしくめにもみつるなみだか 042749　世中にあらましかばとおもふ人なきかおほくもなりにける哉 042762　なにをして身のいたづらに老ぬらんとしのおもはむこともやさしき 042763　世中はとてもかくてもおなじことみやもわらやもはてしなければ 042764　かくばかりへがたくみゆるよの中にうらやましくもすめる月かな 042772　うれしさをむかしは袖につゝみけりこよひは身にもあまりぬるかな 042775　君が代は千世にやちよにさゞれ石のいはほとなりてこけのむすまで 042776　よろづよとみかさのやまぞよばふなるあめのしたこそたのしかるらし 042786　わが恋はゆくゑもしらずはてもなしあふをかぎりとおもふばかりぞ 042787　たのめつゝこぬよあまたになりぬればまたじとおもふぞまつにまされる 042788　今こむといひしばかりにながつきの有明の月をまちいでつる哉 042795　世中をなにゝたとへんあさぼらけこぎゆくふねのあとのしらなみ 042795　よの中はゆめかうつゝかうつゝともゆめともみへずありてなければ 042796　手にむすぶ水にやどれる月かげのあるかなきかの世にこそ有けれ 042797　すゑの露もとのしづくやよの中のをくれさきだつためしなるらむ 042803　しらヽヽししらけたるよの月影にゆきふみわけてむめのはなおる 051006　としのうちに春はきにけりひとゝせをこぞとやいはむことしとやいはむ 051007　袖ひちてむすびしみづのこほれるをはるたつけふの風やとくらん 051008　春たつといふばかりにやみよし野ゝやまもかすみて今朝はみゆらむ 051015　いはそゝくたるひのうへのさわらびのもえいづる春になりにけるかな 051016　やまかぜにとくる氷のひまごとにうちいづる浪やはるのはつ花 051017　みわたせばひらのたかねに雪きえてわかな摘べく野はなりにけり 051025　もゝしきのおほみや人はいとまあれやさくらかざしてけふもくらしつ 051026　春はなをわれにてしりぬはなざかりこゝろのどけき人はあらじな 051028　はるのよのやみはあやなしむめのはな色こそみえねかやはかくるゝ 051031　ねのびする野辺にこまつのなかりせばちよのためしになにをひかまし 051032　千とせまでかぎれる松もけふよりは君にひかれてよろづ代や経む 051033　子の日しにしめつる野辺の姫こまつひかでやちよのかげをまたまし 051035　あすからはわかなつませむかたをかのあしたのはらはけふぞやくめる 051036　あすからは若菜つまむとしめし野にきのふもけふも雪はふりつゝ 051037　ゆきてみぬ人もしのべと春のゝのかたみにつめるわかななりけり 050044　三ちとせになるてふもゝのことしよりはなさく春にあひにけるかな 051049　いたづらにすぐる月日はおほけれどはなみて暮すはるぞすくなき 051056　けふのみとはるをおもはぬときだにもたつことやすき花の陰かは 051057　はなもみなちりぬるやどはゆく春のふるさとゝこそなりぬべらなれ 051058　またもこむときぞとおもへどたのまれぬ我身にしあればおしき春かな 051062　さくらばな春くはゝれるとしだにも人のこゝろにあかれやはせぬ 051072　あらたまのとしたちかへるあしたよりまたるゝものはうぐひすのこゑ 051073　浅みどりはるたつそらにうぐひすのはつこゑまたぬ人はあらじな 051074　うぐひすのこゑなかりせばゆきゝえぬやまざといかではるをしらまし 051077　きのふこそとしはくれしか春がすみかすがのやまにはやたちにけり 051078　はるがすみたてるやいづこみよし野ゝよしのゝやまに雪はふりつゝ 051079　あさ日さすみねのしら雪むらぎえてはるの霞はたなびきにけり 051085　さくらがり雨はふりきぬおなじくはぬるともはなの陰にかくれん 051086　青柳のえだにかゝれるはるさめはいともてぬける玉かとぞみる 051093　いにしとしねこじてうへし我やどのわかぎのむめははなさきにけり 051094　わがせこにみせむと思ひしむめのはなそれともみえずゆきのふれゝば 051095　かをとめてたれおらざらんむめのはなあやなしかすみたちなかくしそ 051100　君ならで誰にかみせむむめのはないろをも香をもしる人ぞしる 051101　色かをばおもひもいれずむめの花つねならぬよによそへてぞみる 051110　青柳のいとよりかくる春しもぞみだれてはなはほころびにける 051111　はるくればしだりやなぎにまよふ糸のいもがこゝろによりにけるかな 051112　青柳のまゆにこもれるいとなれば春のくるにぞ色まさりける 051123　よの中にたえてさくらのなかりせばはるのこゝろはのどけからまし 051124　わがやどのはなみがてらにくる人はちりなむのちぞ恋しかるべき 051125　みてのみや人にかたらんやまざくらてごとにおりて家づとにせむ 051131　さくら散木のした風はさむからでそらにしられぬ雪ぞふりける 051132　とのもりのとものみやつここゝろあらばこのはるばかりあさぎよめすな 051135　おもひいづるときはのやまのいはつゝじいはねばこそあれこひしきものを 051138　かはづなく神なび川に影みえていまはさくらんやまぶきのはな 051139　わがやどのやへの山ぶきひとへだにちりのこらなん春のかたみに 051142　田子のうらのそこさへにほふふぢ浪をかざしてゆかむみぬ人のため 051143　ときはなるまつのなだてにあやなくもかゝれるふぢのさきてちるかな 051146　はなのいろにそめし袂のおしければころもかへうきけふにもあるかな 051149　わがやどのかきねやはるをへだつらんなつきにけりとみゆるうのはな 051153　夏のよをねぬにあけぬといひをきし人はものをやおもはざりけむ 051154　ほとゝぎすなくやさつきのみじかよもひとりしぬればあかしかねつも 051155　なつのよのふすかとすればほとゝぎす鳴一こゑにあくるしのゝめ 051157　わかごまとけふにあひくるあやめぐさおひをくるゝやまくるなるらん 051158　きのふまでよそにおもひしあやめぐさけふわがやどのつまとみるかな 051165　すゞしやとくさむらごとにたちよればあつさぞまさるとこなつのはな 051166　したくゝるみづに秋こそかよふらしむすぶいづみのてさへすゞしき 051167　まつかげのいは井のみづをむすびあげて夏なきとしとおもひけるかな 051169　夏はつるあふぎとあきのしら露といづれかさきにをかんとすらむ 051170　ねぎごともきかであらぶる神だにもけふはなごしと人はいふ也 051173　さつきまつはなたちばなのかをかげばむかしの人のそでの香ぞする 051181　はちすばのにごりにしまぬこゝろもてなにかはつゆを玉とあざむく 051183　さつきやみおぼつかなきをほとゝぎすなくなるこゑのいとゞはるけき 051184　ゆきやらで山路くらしつほとゝぎすいまひとこゑのきかまほしさに 051185　さよふけてね覚ざりせばほとゝぎす人づてにこそきくべかりけれ 051190　くさふかきあれたるやどのともしびのかぜにきえぬはほたるなりけり 051191　つゝめどもかくれぬものは夏むしのみよりあまれる思ひなりけり 051197　夏山のみねのこずゑのたかければそらにぞせみのこゑはきこゆる 051198　これをみよ人もとがめぬこひすとてねをなくむしのなれるすがたを 051201　天川かはせすゞしきたなばたにあふぎのかぜをなをやかさまし 051202　あまのがはあふぎのかぜにきりはれてそらすみわたるかさゝぎのはし 051203　君がてにまかするあきのかぜなればなびかぬ草もあらじとぞ思ふ 051206　あきゝぬとめにはさやかにみえねどもかぜの音にぞおどろかれぬる 051207　うちつけにものぞかなしき木の葉ちるあきのはじめをけふぞと思へば 051211　あきたちていくかもあらねどこのねぬる朝けのかぜはたもとすゞしも 051218　あまの川とをきわたりにあらねども君がふなでは年にこそまて 051219　ひとゝせに一夜とおもへどたなばたのあひみる秋のかぎりなきかな 051220　としごとにあふとはすれどたなばたのぬるよのかずぞすくなかりける 051228　うづらなくいはれのゝべの秋はぎを思ふ人ともみつるけふかな 051229　あきはなをゆふまぐれこそたゞならね荻の上風おぎのした露 051232　をぐらやまふもとの野辺のはなすゝきほのかにみゆる秋の夕暮 051238　あし曳のやまどりの尾のしだりおのながヽヽしよをひとりかもねん 051239　むつごともまだつきなくに明にけりいづらはあきのながしてふよは 051251　水の面にてる月なみをかぞふればこよひぞあきの最中なりける 051258　天原ふりさけみれば春日なるみかさのやまに出し月かも 051259　白雲にはねうちかはしとぶかりのかずさへみゆるあきのよの月 051260　よにふればもの思ふとしもなけれども月にいくたびながめしつら 051265　わがやどのきくのしらつゆけふごとにいく世つもりてふちとなるらん 051273　ひさかたの雲の上にてみるきくはあまつほしとぞあやまたれける 051272　心あてにおらばやおらん初しものをきまどはせるしらぎくのはな 051277　やまさびし秋もくれぬとつぐるかも槙の葉ごとにをける朝霜 051278　くれてゆくあきのかたみにをくものはわがもとゆひのしもにぞ有ける 051280　をみなへしおほかる野辺にやどりせばあやなく仇の名をやたゝまし 051281　をみなへしみるにこゝろはなぐさまでいとゞむかしの秋ぞ恋しき 051283　あきのゝにはぎかるおのこなわをなみねるやねりそのくだけてぞ思 051284　うつろはんことだにおしきあきはぎにおれぬばかりもをける露かな 051285　秋のゝのはぎのにしきをわがやどにしかのねながらうつしてしがな 051290　ぬしらぬ香はにほひけりあきのゝにたがぬぎかけしふぢばかまぞも 051293　おぼつかな誰とかしらん秋ぎりのたえまにみゆるあさがほのはな 051294　あさがほを何はかなしとおもふらん人をもはなはさこそ見るらめ 051299　ちりをだにすへじとぞ思うへしより妹とわがぬるとこ夏のはな 051300　はなゆへにものをぞ思ふしらつゆのをくにもいかゞあらんとすらん 051305　しら露もしぐれもいたくもるやまは下葉のこらずもみぢしにけり 051306　むらヽヽのにしきとぞみるさほやまのはゝそのもみぢきりたゝぬまは 051314　あすからはもみぢ流るかづらきのやまのあきかぜふきぞしぬらし 051315　神な月しぐれとともにかみなびの森の木のははふりにこそふれ 051316　みる人もなくてちりぬるおくやまのもみぢはよるのにしきなりけり 051324　あきかぜに初かりがねぞきこゆなるたがたまづさをかけてきつらん 051326　はるがすみたつをみすてゝゆくかりははななきさとにすみやならへる 051332　いまこむと誰たのめけんあきのよをあかしかねつゝ松むしのなく 051333　きりヾヾすいたくなゝきそあきのよのながきおもひはわれぞまされる 051336　もみぢせぬときはのやまにすむしかはをのれなきてや秋をしるらん 051337　ゆふづくよをぐらのやまになく鹿のこゑのうちにやあきはくるらん 051340　さをしかのあさたつをのゝあきはぎに玉とみるまでをけるしらつゆ 051344　たがためのにしきなればか川ぎりのさほの山辺をたちかくすらん 051343　あさ霧のふもとをこめてたちぬればそらにぞあきの山はみえける 051351　からころもうつこゑきけば月きよみまだねぬ人をそらにしるかな 051355　神無月ふりみふらずみさだめなきしぐれぞ冬のはじめなりける 051358　おもひかねいもがりゆけばふゆのよの河かぜさむみ千どりなく也 051361　ゆくとしのおしくもあるかなますかゞみ見るかげさへにくれぬと思へば 051366　うづみ火のしたにこがれしときよりもかくにくまるゝおりぞわびしき 051373　よをさむみねざめてきけばおしぞなくはらひもあへず霜やをくらん 051381　みやこにてめづらしとみるはつ雪のよしのゝやまにふりやしぬらん 051382　みよしのゝ山の白雪積らし古郷さむくなりまさるなり 051383　雪ふれば木ごとにはなぞさきにけりいづれをむめとわきておらまし 051386　おほぞらの月のひかりのさむければかげみし水ぞまづは氷れる 051390　山川のみぎはまされるはるかぜに谷の氷もけふやとくらん 051392　みやまにはあられふるらしとやまなるまさきのかづらいろづきにけり 051395　あらたまのとしもくれなばつくりつる罪ものこらずなりやしぬらん 051397　かぞふればわが身につもるとし月ををくりむかふと何いそぐ覧 051396　としのうちにつくれるつみはかきくらしふるしら雪とともにきえなむ 052401　秋かぜのふくにつけてもとはぬかなおぎのはならばをとはしてまし 052402　ほのヾヾとあり明の月の月かげにもみぢふきおろす山おろしのかぜ 052409　よそにのみみてやゝみなむかづらきのたかまのやまのみねのしら雲 052415　かすみはれみどりの雲ものどけくてあるかなきかにあそぶいとゆふ 052420　あかつきのなからましかばしらつゆのをきてわびしきわかれせましや 052427　ときはなる松のみどりも春くればいまひとしほの色まさりけり 052428　我みてもひさしくなりぬすみよしの岸のひめ松いくよへぬらん 052429　あまくだるあら人がみのあひおひのおもへばひさしすみよしの松 052434　よにふればことの葉しげき呉竹のうきふしごとにうぐひすぞなく 052434　時雨するをとはすれどもくれ竹のなどよとゝもにいろもかはらぬ 052441　おほあらきの森のした草生ぬれば駒もすさめずかるひともなし 052442　やかずとも草はもえなんかすが野をたゞはるの日にまかせたらなむ 052451　和かのうらにしほみちくればかたほ浪あしべをさして田鶴なきわたる 052452　おほぞらにむれたる田鶴のさしながら思ふこゝろのありげなるかな 052453　あまつかぜ吹ゐのうらにゐるたづのなどか雲井にかへらざるべき 052461　わびしらにましらなゝきそあし曳のやまのかひあるけふにやはあらぬ 052469　ことのねにみねのまつかぜかよふらしいづれのおよりしらべそめ剣 052478　いつはりのなきよなりせばいかばかり人のことの葉うれしからまし 052490　ありあけのこゝちこそすれさかづきのひかげもそひていでぬとおもへば 052496　名のみして山はみかさもなかりけりあさ日ゆふひのさすにまかせて 052497　雲のゐるこしのしらやまおひにけりおほくのとしの雪つもりつゝ 052498　みわたせば松の葉しろきよしのやまいくよつもれる雪にかあるらん 052509　神なびのみむろのきしやくづるらんたつたの川の水のにごれる 052520　としをへてはなのかゞみとなるみづはちりかゝるをやくもるといふらん 052520　みなかみのさだめてければきみが代にふたゝびすめる堀川の水 052526　みかきもりそのたくひにはあらねどもわれもこゝろのうちに社たけ 052527　こゝにだにひかりさやけきあきの月雲のうへこそおもひやらるれ 052529　いそのかみふるきみやこをきてみればむかしかざしゝはなさきにけり 052538　君なくてあれたるやどの板間より月のもるにもそではぬれけり 052537　きみまさで煙たえにししほがまのうらさびしくもみえわたる哉 052539　いにしへは散をや人のおしみけん今ははなこそむかしこふらし 052553　ぬれてほす山路のきくの露の間にいつかちとせをわれはへぬらん 052563　山ざとはものさびしかることはあれど世のうきよりはすみよかりけり 052564　やまざとは冬ぞさびしさまさりけり人めもくさもかれぬとおもへば 052569　はるの田を人にまかせてわれはたゞ花に心をつくるころかな 052570　ときすぎばさなへもいたくおひぬべしあめにも田子はさわらざりけり 052571　きのふこそさなへとりしかいつのまにいな葉そよぎて秋かぜぞふく 052577　きみが宿わがやどわくるかきつばたうつろはぬまにみん人もがな 052585　やまでらのいりあひの鐘のこゑごとにけふもくれぬときくぞかなしき 052586　木のもとをすみかとすればをのづから花みる人になりにけるかな 052602　此世にてぼだゐのたねをうへつれば君がひくべき身とぞなりぬる 052603　あのく多ら三みやく三菩提の仏たちわがたつ杣に冥加あらせ給へ 052601　極楽ははるけきほどゝきゝしかどつとめていたるところなりけり 052600　いつしかと君にとおもひし若菜をば法のためにぞけふはつみぬる 052610　たらちねはかゝれとてしもうば玉のわがくろかみをなでずやあるらん 052611　よの中を牛の車のなかりせば思ひの家をいかでいでまし 052612　三輪川のきよきながれにすゝぎてしわが名をさらにまたやけがさむ 052623　わがやどはみちもなきまであれにけりつれなき人をまつとせしまに 052630　みわたせば柳さくらをこきまぜてみやこははるのにしきなりけり 052638　おもひやるこゝろ計はさはらじを何へだつらんみねのしら雲 052639　としごとの春のわかれをあわれとも人にをくるゝ人ぞしりける 052640　いのちだにこゝろにかなふものならばなにかわかれのかなしかるべき 052647　ほのヾヾとあかしのうらの朝ぎりに島がくれゆく舟をしぞおもふ 052648　和田のはら八十島かけてこぎいでぬと人には告よあまの釣舟 052649　たよりあらばいかでみやこへつげやらんけふしら川のせきはこえぬと 052652　おきなかのえざるかたなきつり舟は海人やさきだつ魚や先だつ 052652　いかになをひとりもとはんあやしきはおもはぬなかのえさるまじきを 052664　難波津にさくやこのはな冬籠いまは春辺とさくや此はな 052665　ちりぬればまたこむ春はさきぬべし千とせのゝちは君をたのまん 052673　いかるがやとみのをがはのたえばこそ我おほきみのみなはわすれめ 052680　やまざくらあくまで色をみつるかな花ちるべくもかぜふかぬまに 052688　たまくしげふたとせあわぬ君が身をあけながらやは見んとおもひし 052692　たかきやにのぼりてみればけぶりたつたみのかまどはにぎわひにけり 052696　かぞいろはいかにあわれとおもふらん三とせになりぬあしたゝずして 052704　あし曳の山がくれなるほとゝぎすきく人もなきねをや鳴らん 052717　天津風雲のかよひぢふきとぢよ乙女のすがたしばしとゞめん 052721　しら浪のよするなぎさによをすごすあまの子なれば宿もさだめず 052732　いづくにか身をばよせましよの中おいをいとはぬひとしなければ 052738　君とわれいかなることをちぎりけむむかしの世こそしらまほしけれ 052739　誰をかもしる人にせんたかさごのまつもむかしの友ならなくに 052747　いにしへの野中の清水ぬるけれどもとの心をしる人ぞくむ 052748　むかしをばかけじとおもへどかくばかりあやしくめにもみつなみだかな 052749　よの中にあらましかばとおもふ人のなきはおほくもなりにけるかな 052762　何をして身のいたづらに老ぬらんとしのおもはんこともやさしく 052763　よの中はとてもかくてもおなじことみやもわらやもはてしなければ 052764　かくばかりへがたくみゆるよの中にうらやましくもすめる月かな 052772　うれしさをむかしはそでにつゝみけりこよひは身にもあまりぬるかな 052775　君が代はちよにやちよにさゞれ石のいはほとなりて苔のむすまで 052776　よろづよと三笠のやまぞよばふなる天下こそたのしかるらし 052786　我恋はゆくゑもしらずはてもなしあふをかぎりとおもふばかりぞ 052787　たのめつゝこぬよあまたに成ぬればまたじとおもふぞまつにまされる 052788　いまこむといひしばかりに九月のあり明の月を待出つるかな 052795　よの中をなにゝたとへんあさぼらけこぎゆくふねのあとのしらなみ 052797　すゑの露もとの雫やよの中のをくれさきだつためしなるらん 052796　手にむすぶみづにやどれる月影のあるかなきかのよにもすむかな 052795　よの中は夢かうつゝかうつゝとも夢ともわかずありてなければ 052803　しらヽヽししらけたる夜の月影に雪かきわけてむめのはなおる 061006　としのうちに春は来にけり一とせをこぞとやいはむことしとやいはむ 061007　袖ひちて結びし水のこほれるをはるたつけふの風やとくらむ 061008　春たつといふばかりにやみよしのゝ山もかすみてけさは見ゆらむ 061015　いはそゝくたるひのうへのさはらびのもえいづる春になりにける哉 061016　やまかぜにとくる氷のひまごとにうちいづる浪やはるのはつはな 061017　みわたせばひらのたかねに雪きえてわかなつむべく野はなりにけり 061025　もゝしきのおほ宮人はいとまあれやさくらかざしてけふもくらしつ 061026　はるはなをわれにてしりぬ花ざかり心のどけき人はあらじな 061028　はるのよのやみはあやなし梅のはな色こそみえねかやはかくるゝ 061031　ねのびする野辺にこ松のなかりせばちよのためしになにをひかまし 061032　千とせまでかぎれる松もけふよりは君にひかれてよろづ代やへん 061033　子の日しにしめつるのべの姫小まつひかでや千代のかげをまたまし 061035　あすからはわかなつませんかたをかのあしたのはらはけふぞやくめる 061036　あすからはわかなつまんとしめし野にきのふもけふも雪はふりつゝ 061037　ゆきてみぬ人もしのべと春の野にかたみにつめるわかななりけり 060044　みちとせになるてふもゝのことしよりはなさく春にあひにけるかな 061049　いたづらにすぐる月日はおほけれどはなみてくらすはるぞすくなき 061056　けふのみとはるをおもはぬときだにもたつことやすきはなのかげかは 061057　はなもみなちりぬるやどはゆくはるのふるさとゝこそなりぬべらなれ 061058　またもこむときぞとおもへどたのまれぬ我身にしあればおしきはるかな 061062　さくらばな春くはゝれるとしだにも人のこゝろにあかれやはせぬ 061072　あらたまのとしたちかへるあしたよりまたるゝものはうぐひすのこゑ 061073　浅みどりはるたつそらにうぐひすのはつこゑまたぬ人はあらじな 061074　うぐひすのこゑなかりせばゆきゝえぬやまざといかではるをしらまし 061077　きのふこそとしはくれしか春がすみかすがのやまにはやたちにけり 061078　はるがすみたてるやいづこみよし野ゝよしのゝやまに雪はふりつゝ 061079　あさ日さすみねのしら雪むらぎえてはるの霞はたなびきにけり 061085　さくらがり雨はふりきぬおなじくはぬるともはなの陰にかくれん 061086　青柳のえだにかゝれるはるさめはいともてぬける玉かとぞみる 061093　いにしとしねこじてうへしわがやどのわかぎのむめははなさきにけり 061094　わがせこにみせむと思ひし梅のはなそれともみえずゆきのふれゝば 061095　かをとめてたれおらざらんむめの花あやなしかすみたちなかくしそ 061100　君ならで誰にか見せむむめのはないろをも香をもしる人ぞしる 061101　色香をばおもひもいれずむめの花つねならぬよによそへてぞみる 061110　青柳のいとよりかくるはるしもぞみだれてはなはほころびにける 061111　はるくればしだりやなぎにまよふ糸のいもがこゝろによりにけるかな 061112　青柳のまゆにこもれるいとなればはるのくるにぞ色まさりける 061123　世の中にたえてさくらのなかりせばはるのこゝろはのどけからまし 061124　わがやどのはなみがてらにくる人はちりなむのちぞ恋しかるべき 061125　みてのみや人にかたらんやまざくらてごとにおりて家づとにせむ 061131　さくらちる木のした風はさむからでそらにしられぬ雪ぞ降ける 061132　とのもりのとものみやつここゝろあらばこのはるばかりあさぎよめすな 061135　おもひいづるときはのやまのいはつゝじいはねばこそあれこひしき物を 061138　かはづなく神なび川に影見えていまやさくらんやまぶきのはな 061139　わがやどのやへやまぶきはひとへだにちりのこらなん春のかたみに 061142　田子のうらのそこさへにほふふぢ浪をかざしてゆかむみぬひとのため 061143　ときはなるまつのなだてにあやなくもかゝれるふぢのさきてちるかな 061146　はなのいろにそめしたもとのおしければころもかへうきけふにもあるかな 061149　わがやどのかきねやはるをへだつらんなつきにけりと見ゆるうのはな 061153　夏のよをねぬにあけぬといひをきし人はものをやおもはざりけむ 061154　ほとゝぎすなくやさつきのみじか夜もひとりしぬればあかしかねつも 061155　なつの夜のふすかとすればほとゝぎす鳴ひとこゑにあくるしのゝめ 061157　わかごまとけふにあひくるあやめぐさおひをくるとやまくるなるらん 061158　きのふまでよそにおもひしあやめ草けふわがやどのつまとみるかな 061165　すゞしやと草むらごとにたちよればあつさぞまさるとこなつのはな 061166　したくゝるみづに秋こそかよふらしむすぶいづみのてさへすゞしき 061167　まつかげのいは井の水をむすびあげて夏なきとしとおもひけるかな 061169　夏はつるあふぎとあきのしら露といづれかさきにをかんとすらん 061170　ねぎごともきかずあらぶる神だにもけふはなごしのはらへなりけり 061173　さつきまつはなたちばなのかをかげばむかしの人の袖の香ぞする 061181　はちす葉のにごりにしまぬこゝろもてなにかはつゆを玉とあざむく 061183　五月やみおぼつかなきをほとゝぎすなくなるこゑのいとゞはるけき 061184　ゆきやらで山路くらしつほとゝぎすいま一こゑのきかまほしさに 061185　さよふけてねざめざりせばほとゝぎす人づてにこそきくべかりけれ 061190　草ふかきあれたるやどのともしびのかぜにきえぬはほたるなりけり 061191　つゝめどもかくれぬものはなつむしのみよりあまれるおもひなりけり 061197　夏やまのみねのこずゑのたかければそらにぞせみのこゑはきこゆる 061198　これをみよ人もとがめぬこひすとてねをなくむしのなれるすがたを 061201　天川かはせすゞしきたなばたにあふぎのかぜをなをやかさまし 061202　天河あふぎのかぜにきりはれてそらすみわたるかさゝぎのはし 061203　君が手にまかするあきの風なればなびかぬ草もあらじとぞ思ふ 061206　あきゝぬとめにはさやかにみえねどもかぜのをとにぞおどろかれぬる 061207　うちつけにものぞかなしき木の葉ちるあきのはじめをけふぞとおもへば 061211　あきたちていくかもあらねどこのねぬる朝けのかぜはたもとすゞしも 061218　天河とをきわたりにあらねども君がふなではとしにこそまて 061219　一とせにひと夜とおもへどたなばたのあひみる秋のかぎりなきかな 061220　としごとにあふとはすれどたなばたのぬるよのかずぞすくなかりける 061228　うづらなくいはれの野辺の秋はぎをおもふ人ともみつるけふかな 061229　あきはなをゆふまぐれこそたゞならねおぎのうは風はぎのしたつゆ 061232　をぐらやまふもとの野辺のはなすゝきほのかにみゆるあきの夕暮 061238　あし引の山どりの尾のしだり尾のながヽヽし夜をひとりかもねん 061239　むつごともまだつきなくに明にけりいづらはあきのながしてふ夜は 061251　水の面にてる月なみをかぞふればこよひぞあきの最中なりける 061258　天の原ふりさけみればかすがなるみかさのやまにいでし月かも 061259　白雲にはねうちかはしとぶかりのかずさへみゆるあきのよの月 061260　世にふればもの思ふとしもなけれども月にいくたびながめしつらん 061265　わがやどのきくのしら露けふごとにいく世つもりてふちとなるらん 061273　ひさかたの雲のうへにてみるきくはあまつほしとぞあやまたれける 061272　心あてにおらばやおらん初しものをきまどはせるしら菊のはな 061277　やまさびし秋もくれぬとつぐるかも槙の葉ごとにをけるあさしも 061278　くれてゆくあきのかたみにをくものはわがもとゆひの霜にぞ有ける 061280　をみなへしおほかる野辺にやどりせばあやなく仇の名をやたゝまし 061281　をみなへしみるにこゝろはなぐさまでいとゞむかしの秋ぞ恋しき 061283　あきのゝにはぎかるおのこなはをなみねるやねりそのくだけてぞ思ふ 061284　うつろはんことだにおしき秋はぎにおれぬばかりもをける露かな 061285　秋のゝのはぎのにしきをわがやどにしかのねながらうつしてしがな 061290　ぬししらぬかはにほひつゝ秋のゝにたがぬぎかけしふぢばかまぞも 061293　おぼつかな誰とかしらん秋ぎりのたえまにみゆるあさがほの花 061294　あさがほを何はかなしとおもふらん人をもはなはさこそ見るらん 061299　ちりをだにすへじとぞ思ふうへしよりいもとわがぬるとこなつのはな 061300　はなゆへにものをぞおもふしらつゆのをくにもいかゞあらんとすらん 061305　しら露もしぐれもいたくもるやまは下葉のこらずもみぢしにけり 061306　むらヽヽのにしきとぞみるさほやまのはゝそのもみぢきりたゝぬまは 061314　あすか川もみぢ葉流るかづらきのやまのあきかぜふきぞしぬらし 061315　神無月しぐれとともにかみなみのもりの木の葉はふりにこそふれ 061316　みる人もなくてちりぬるおくやまのもみぢはよるのにしきなりけり 061324　あきかぜにはつかりがねぞきこゆなるたがたまづさをかけてきつらん 061326　はるがすみたつをみすてゝゆくかりははななきさとにすみやならへる 061332　いまこむとたれたのめけんあきの夜をあかしかねつゝまつむしのなく 061333　きりヾヾすいたくなゝきそあきの夜のながきおもひはわれぞまされる 061336　もみぢせぬときはのやまにすむしかはをのれなきてや秋をしるらん 061337　ゆふづく夜をぐらのやまになく鹿のこゑのうちにやあきはくるらん 061340　さをしかのあさたつをのゝあきはぎに玉とみるまでをけるしらつゆ 061344　たがためのにしきなればか秋ぎりのさほの山辺をたちかくすらん 061343　あさ霧のふもとをこめてたちぬればそらにぞあきのやまはみえける 061351　からころもうつこゑきけば月きよみまだねぬ人をそらにしるかな 061355　神無月ふりみふらずみさだめなきしぐれぞふゆのはじめなりける 061358　おもひかねいもがりゆけばふゆのよの河かぜさむみちどりなくなり 061361　ゆくとしのおしくもあるかなますかゞみ見るかげさへにくれぬとおもへば 061366　うづみ火のしたにこがれしときよりもかくにくまるゝおりぞわびしき 061373　よをさむみねざめてきけばおしぞなくはらひもあへず霜やをくらん 061381　みやこにてめづらしとみるはつ雪のよしのゝやまにふりやしぬらん 061382　みよしのゝやまのしら雪つもるらし古郷さむくなりまさるなり 061383　雪ふれば木ごとにはなぞさきにけるいづれをむめとわきておらまし 061386　おほぞらの月のひかりのさむければかげみし水ぞまづは氷れる 061390　山川のみぎはまされるはるかぜに谷のこほりもけふやとくらん 061392　みやまにはあられふるらしとやまなるまさきのかづらいろづきにけり 061395　あらたまのとしもくれなばつくりつる罪ものこらずなりやしぬらん 061397　かぞふればわが身につもるとし月ををくりむかふと何いそぐらん 061396　としのうちにつくれるつみはかきくらしふるしら雪とともにきえなむ 062401　秋かぜのふくにつけてもとはぬかなおぎのはならばをとはしてまし 062402　ほのヾヾとあり明の月の月かげにもみぢふきおろす山おろしの風 062409　よそにのみみてやゝみなんかづらきのたかまのやまのみねのしら雲 062415　かすみはれみどりの空ものどけくてあるかなきかにあそぶいとゆふ 062420　あかつきのなからましかばしら露のをきてわびしきわかれせましや 062427　ときはなるまつのみどりも春くればいまひとしほのいろまさりけり 062428　我みてもひさしくなりぬすみよしのきしのひめまついく代へぬらん 062429　あまくだるあら人がみのあひおひをおもへばひさしすみよしのまつ 062434　よにふればことの葉しげきくれたけのうきふしごとにうぐひすぞなく 062434　時雨するをとはすれどもくれたけのなどよとゝもにいろもかはらぬ 062441　おほあらきの森のした草おひぬれば駒もすさめずかるひともなし 062442　やかずとも草はもえなんかすが野をたゞはるの日にまかせたらなむ 062451　和かのうらにしほみちくればかたほ浪あしべをさして田鶴なきわたる 062452　おほぞらにむれたる田鶴のさしながらおもふこゝろのありげなるかな 062453　あまつかぜ吹ゐのうらにゐるたづのなどか雲井にかへらざるべき 062461　わびしらにましらななきそあし引のやまのかひあるけふにやはあらぬ 062469　ことのねにみねのまつかぜかよふらしいづれのをよりしらべそめけん 062478　いつはりのなき世なりせばいかばかり人のことの葉うれしからまし 062490　ありあけのこゝちこそすれさかづきのひかげもそひていでぬとおもへば 062496　名のみしてやまはみかさもなかりけりあさ日ゆふひのさすにまかせて 062497　雲のゐるこしのしらやまおひにけりおほくのとしの雪つもりつゝ 062498　みわたせば松の葉しろきよしのやまいくよつもれる雪にやあるらん 062509　神なびのみむろのきしやくづるらんたつたの川のみづのにごれる 062520　としをへてはなのかゞみとなるみづはちりかゝるをやくもるといふらん 062520　みなかみのさだめてければきみが代にふたゝびすめるほり川の水 062526　みかきもりそのたくひにはあらねどもわれもこゝろのうちにこそたけ 062527　こゝにだにひかりさやけきあきの月雲のうへこそおもひやらるれ 062529　いそのかみふるきみやこをきてみればむかしかざしゝはなさきにけり 062538　君なくてあれたるやどのいたまより月のもるにもそではぬれけり 062537　きみまさで煙たえにししほがまのうらさびしくもみえわたるかな 062539　いにしへはちるをやひとのおしみけんいまははなこそむかしこふらし 062553　ぬれてほす山路のきくのつゆのまにいつかちとせをわれはへぬらん 062563　山ざとはものゝさびしきことはあれど世のうきよりはすみよかりけり 062564　やまざとは冬ぞさびしさまさりける人めもくさもかれぬとおもへば 062569　はるの田を人にまかせてわれはたゞはなにこゝろをつくるころかな 062570　ときすぎばさなへもいたくおひぬべしあめにも田子はさはらざりけり 062571　きのふこそさなへとりしかいつのまにいな葉そよぎて秋かぜぞふく 062577　きみが宿わがやどわくるかきつばたうつろはぬまにみん人もがな 062585　やまでらのいりあひのかねのこゑごとにけふもくれぬときくぞかなしき 062586　木のもとをすみかとすればをのづからはなみる人になりにけるかな 062602　此世にてぼだゐのたねをうへつればきみがひくべき身とぞなりぬる 062603　あのくたら三みやく三ぼだゐの仏達わがたつ杣に冥加あらせたまへ 062601　極楽ははるけきほどゝきゝしかどつとめていたるところなりけり 062600　いつしかと君にとおもひしわかなをば法のためにぞけふはつみぬる 062610　たらちねはかゝれとてしもうば玉のわがくろかみをなでずや有けん 062611　よの中に牛の車のなかりせばおもひの家をいかでいでまし 062612　三輪川のきよきながれにすゝぎてしわが名をさらにまたやけがさん 062623　わがやどはみちもなきまであれにけりつれなき人をまつとせしまに 062630　みわたせばやなぎさくらをこきまぜて都こぞはるのにしきなりける 062638　おもひやるこゝろばかりはさはらじをなにへだつらんみねのしら雲 062639　としごとのはるのわかれをあはれとも人にをくるゝひとぞしりける 062640　いのちだにこゝろにかなふものならばなにかわかれのかなしかるべき 062647　ほのヾヾとあかしのうらの朝ぎりにしまがくれゆく舟をしぞおもふ 062648　和田の原八十島かけてこぎいでぬと人にはつげよあまのつり舟 062649　たよりあらばいかでみやこへつげやらんけふしら川のせきはこへぬと 062652　おきなかのえざるかたなきつりぶねはあまやさきだつうをや先だつ 062652　いかでかは人にもとはんあやしきはおもはぬなかのえさるまじきを 062664　なにはづにさくやこのはなふゆごもりいまをはるべとさくやこのはな 062665　ちりぬればまたこむはるは咲ぬべし千とせののちはきみをたのまん 062673　いかるがやとみのをがはのたえばこそわがおほきみのみなはわすれめ 062680　山ざくらあくまで色をみつるかな花ちるべくもかぜふかぬまに 062688　たまくしげふたとせあわぬきみが身をあけながらやは見んとおもひし 062692　たかきやにのぼりてみればけぶりたつたみのかまどはにぎわひにけり 062696　かぞいろはいかにあはれとおもふらん三とせになりぬあしたゝずして 062704　あし曳の山がくれなるほとゝぎすきく人もなきねをや鳴らん 062717　あまつかぜくものかよひじふきとぢよをとめのすがたしばしとゞめん 062721　しら浪のよするなぎさによをすぐすあまの子なればやどもさだめず 062731　ますかゞみそこなるかげにむかひゐてしらぬおきなにあふこゝちすれ 062732　いづくにか身をばよせまし世の中におひをいとはぬひとしなければ 062738　きみとわれいかなることをちぎりけんむかしの世こそしらまほしけれ 062739　たれをかもしる人にせんたかさごのまつもむかしのともならなくに 062747　いにしへの野中のしみづぬるけれどもとのこゝろをしる人ぞくむ 062748　むかしをばかけじとおもへどかくばかりあやしくめにもみつなみだかな 062749　よの中にあらましかばとおもふ人のなきはおほくもなりにけるかな 062762　何をして身のいたづらに老ぬらんとしのおもはんこともやさしく 062763　よの中はとてもかくてもおなじことみやもわらやもはてしなければ 062764　かくばかりへがたくみゆるよの中にうらやましくもすめる月かな 062772　うれしさをむかしは袖につゝみけりこよひは身にもあまりぬるかな 062775　君が代はちよにやちよにさゞれいしのいはほとなりてこけのむすまで 062776　よろづよと三笠のやまぞよばふなるあめがしたこそたのしかるらし 062786　我恋はゆくゑもしらずはてもなしあふをかぎりとおもふばかりぞ 062787　たのめつゝこぬよあまたに成ぬればまたじとおもふぞまつにまされる 062788　いまこむといひしばかりに九月のあり明の月をまちいづるかな 062795　よの中をなにゝたとへんあさぼらけこぎ行ふねのあとのしら浪 062797　すゑのつゆもとのしづくや世中のをくれさきだつためしなるらん 062796　手にむすぶみづにやどれる月影のあるかなきかのよにもすむかな 062795　よの中はゆめかうつゝかうつゝともゆめともわかずありてなければ 062803　しらヽヽししらけたる夜の月影に雪かきわけてむめのはなおる 071003　としのうちにはるはきにけりひとゝせをこぞとやいはんことしとやいはん 071007　袖ひちてむすびしみづのこほれるをはるたつけふのかぜやとくらん 071008　春たつといふばかりにやみよし野のやまもかすみてけさは見ゆらん 071015　いはそゝくたるひのうへのさわらびのもえいづるはるになりにけるかな 071016　やまかぜにとくるこほりのひまごとにうちいづるなみやはるのはつはな 071017　見わたせばひらのたかねにゆきゝえてわかなつむべく野はなりけり 071017　みわたせばやなぎさくらをこきまぜてみやこぞはるのにしきなりける 071025　もゝしきのおほみや人はいとまあれやさくらかざしてけふもくらしつ 071026　はるはなをわれにてしりぬはなざかりこゝろのどけきひとはあらじな 071028　はるの夜のやみはあやなしむめのはないろこそみえねかやはかくるゝ 071033　ねのびしにしめつる野辺のひめこまつひかでやちよのかげをまたまし 071031　ねのびする野辺にこまつのなかりせばちよのためしになにをひかまし 071032　千年までかぎれるまつもけふよりはきみにひかれてよろづ代やへん 071035　あすからはわかなつませんかたをかのあしたのはらはけふぞやくめる 071036　あすからはわかなつまんとしめし野にきのふもけふもゆきはふりつゝ 071037　ゆきて見ぬひともしのべとはるの野にかた見とつめるわかななりけり 070044　みちとせになるてふもゝのことしよりはなさくはるにあふぞうれしき 071049　いたづらにすぐる月日はおほかれどはな見てくらすはるぞすくなき 071056　けふのみとはるをおもはぬ時だにもたつことやすきはなのかげかは 071057　はなもみなちりぬるやどはゆくはるのふるさとゝこそなりぬべらなれ 071058　またもこんときぞとおもへどたのまれぬわが身にしあらばおしき春かな 071062　さくらばなはるくはゝれるとしだにもひとのこゝろにあかれやはする 071072　あらたまのとしたちかへるあしたよりまたるゝものはうぐひすのこゑ 071073　あさみどりはるたつそらにうぐひすのはつこゑまたぬひとはあらじな 071074　うぐひすのこゑなかりせばゆきゝえぬやまざといかではるをしらまし 071077　きのふこそとしはくれしかはるがすみかすがのやまにはやたちにけり 071078　はるがすみたてるやいづこみよし野のよし野のやまにゆきはふりつゝ 071079　あさひさすみねのしらゆきむらぎえてはるのかすみはたなびきにけり 071085　さくらがりあめはふりきぬおなじくはぬるともはなのかげにかくれん 071086　あをやぎのえだにかゝれるはるさめはいともてぬけるたまかとぞ見る 071093　いにしとしねこじてうへしわがやどのわか木のむめははなさきにけり 071094　わがせこに見せんとおもひしむめのはなそれとも見えずゆきのふれゝば 071095　かをとめてたれおらざらんむめのはなあやなしかすみたちなかくしそ 071100　きみならでたれにか見せんむめの花いろをもかをもしるひとぞしる 071101　いろかをばおもひもいれずむめのはなつねならぬ世によそへてぞ見る 071110　あをやぎのいとよりかくるはるしもぞみだれてはなはほころびにけり 071112　あをやぎのまゆにこもれるいとなればはるのくるにぞいろまさりける 071123　世の中にたえてさくらのなかりせばはるのこゝろはのどけからまし 071124　わがやどのはなみがてらにくるひとはちりなんのちぞこひしかるべき 071125　見てのみやひとにかたらんやまざくらてごとにおりていへづとにせん 071131　さくらちるこのしたかぜはさむからでそらにしられぬゆきぞふりける 071132　とのもりのとものみやつここゝろあらばこのはるばかりあさぎよめすな 071139　おもひいづるときはのやまのいはつゝじいわねばこそあれ恋しきものを 071142　かはづなく神なみがはにかげ見えていまやさくらんやまぶきのはな 071143　わがやどのやえやまぶきはひとへだにちりのこらなんはるのかた見に 071135　たごのうらそこさへにほふふぢなみをかざしてゆかん見ぬひとのため 071136　ときはなるまつのなだてにあやなくもかゝれるふぢのさきてちるかな 071146　はなのいろにそめしたもとのおしければころもかへうきけふにもあるかな 071149　わがやどのかきねやはるをへだつらんなつきにけりと見ゆるうのはな 071153　なつの夜をねぬにあけぬといひをきしひとはものをやおもはざりけん 071154　ほとゝぎすなくやさつきのみじか夜もひとりしぬればあかしかねつゝ 071155　なつの夜はふすかとすればほとゝすなくひとこゑにあくるしのゝめ 071157　わかごまとけふにあひくるあやめぐさおひをくるゝやまくるなるらむ 071158　きのふまでよそにおもひしあやめ草けふわがやどのつまとなるかな 071165　すゞしやとくさむらごとにたちよればあつさぞまさるとこなつのはな 071166　したくゝるみづに秋こそかよふらしむすぶいづみのてさへすゞしき 071167　まつかげのいは井の水をむすびあげてなつなきとしとおもひけるかな 071169　なつはつるあふぎとあきのしらつゆといづれかさきにをきまさるらむ 071170　ねぎごともきかずあらぶる神だにもけふはなごしのはらへなりけり 071173　さつきまつはなたちばなのかをかげばむかしのひとのそでのかぞする 071174　ほとゝぎすはなたちばなのかをとめてなくはむかしのひとやこひしき 071181　はちす葉のにごりにしまぬこゝろもてなどかはつゆをたまとあざむく 071183　さつきやみおぼつかなきにほとゝぎすなくなるこゑのいとゞはるけき 071184　ゆきやらでやまぢくらしつほとゝぎすいまひとこゑのきかまほしさに 071185　さ夜ふけてねざめざりせばほとゝぎすひとづてにこそきくべかりけれ 071190　くさふかきあれたるやどのともしびのかぜにきえせぬほたるなりけり 071191　つゝめどもかくれぬものはなつむしの身よりあまれるおもひなりけり 071197　なつやまのみねのこずゑのたかければそらにぞせみのこゑはきこゆる 071198　これを見よひともとがめぬこひすとてねをなくむしのなれるすがたよ 071201　あまのがはヽヽせすゞしきたなばたにあふぎのかぜをなをやかさまし 071202　あまのがはあふぎの風にきりはれてそらすみわたるかさゝぎのはし 071203　きみがてにまかするあきのかぜなればなびかぬ草もあらじとぞおもふ 071206　あきゝぬとめにはさやかに見えねどもかぜのをとにぞおどろかれぬる 071207　うちつけにものぞかなしきこのはちるあきのはじめをけふぞとおもへば 071211　秋たちていくかもあらねどこのねぬるあさけのかぜはたもとすゞしも 071218　あまのがはとをきわたりにあらねどもきみがふなではとしにこそまて 071219　ひとゝせにひとよとおもへどたなばたのあひみるあきのかぎりなきかな 071220　としごとにあふとはすれどたなばたのぬるよのかずはすくなかりける 071228　うづらなくいはれのゝ辺のあきはぎをおもふひとゝも見つるけふかな 071229　あきはなをゆふまぐれこそたゞならねおぎのうはかぜはぎのしたつゆ 071232　をぐらやまふもとの野べのはなすゝきほのかに見ゆるあきのゆふぐれ 071238　あしびきのやまどりのをのしだりをのながヽヽしよをひとりかもねん 071239　むつごとのまだつきなくにあけにけりいづらはあきのながしてふよは 071251　みづのおもにてる月なみをかぞふればこよひぞあきのもなかなりける 071258　あまのはらふりさけ見ればかすがなるみかさのやまにいでし月かも 071259　しらくもにはねうちかはしとぶかりのかずさへ見ゆるあきの夜の月 071260　よにふればものおもふとしはなけれ共つきにいくたびながめしつらん 071265　わがやどのきくのしらつゆけふごとにいくよつもりてふちとなるらん 071272　ひさかたのくものうへにて見るきくはあまつほしとぞあやまたれける 071273　こゝろあてにおらばやおらんはつしものをきまどはせるしらぎくのはな 071277　やまさびしあきもくれなばつぐるかもまきの葉ごとにをけるあさしも 071278　くれてゆくあきのかた見にをく物はわがもとゆひのしもにぞありける 071280　をみなへしおほかる野辺にやどりせばあやなくあだのなをやたゝまし 071281　をみなへしみるにこゝろはなぐさまでいとゞむかしのあきぞこひしき 071283　あきの野にはぎかるおのこなはをなみねるやねりそのくだけてぞ思ふ 071284　うつろはんことだにおしきあきはぎをおれるばかりにをけるつゆかな 071285　あきの野にはぎのにしきをふる里にしかのねながらうつしてしがな 071290　ぬししらぬかはにほひつゝあきの野にたがぬぎかけしふぢばかまぞも 071293　おぼつかなたれとかしらんあきゞりのたえまに見ゆるあさがほのはな 071294　あさがほをなにはかなしとおもふらむひとをもはなはさこそみるらめ 071299　ちりをだにすえじとぞ思ふうへしよりいもとわがぬるとこなつのはな 071300　はなゆへにものをぞおもふしらつゆのをくにもいかゞあらんとすらん 071305　しら露もしぐれもいたくもるやまはした葉のこらずもみぢしにけり 071306　むらヽヽのにしきとぞ見るさほやまのはゝそのもみぢきりたゝぬまは 071324　あきかぜにはつかりがねぞきこゆなるたがたまづさをかけてきつらん 071326　はるがすみたつを見すてゝゆくかりははなゝきさとにすみやならへる 071314　あすからはもみぢ葉ながるかづらきのやまのあきかぜふきぞしぬらし 071315　かみな月しぐれとともにかみなみのもりのこの葉はふりにこそふれ 071316　見るひともなくてちりぬるおくやまのもみぢはよるのにしきなりけり 071332　いまこんとたれたのめけんあきの夜をあかしかねつゝまつむしのこゑ 071333　きりヾヾすいたくなゝきそあきのよのながきうらみはわれぞまされる 071336　もみぢせぬときはのやまにすむしかはをのれなきてやあきをしるらん 071337　ゆふづくよをぐらのやまになくしかのこゑのうちにやあきをしるらん 071340　さほしかのあさたつをのゝあきはぎにたまと見るまでをけるしらつゆ 071343　あさぎりのふもとをこめてたちぬればそらにぞあきのやまは見えける 071344　たがためのにしきなればかかはぎりのさほのやま辺をたちかくすらん 071351　からころもうつこゑきけば月きよみまだねぬひとをそらにしるかな 071355　神無月ふりみふらずみさだめなきしぐれぞふゆのはじめなりける 071358　おもひかねいもがりゆけばふゆの夜のかはかぜさむみちどりなくなり 071361　ゆくとしのおしくもあるかなますかゞみ見るかげさへにくれぬとおもへば 071366　うづみ火のしたにこがれしときよりもかくにくまるゝおりぞかなしき 071373　夜をさむみねざめてきけばをしぞ鳴はらひもあへずしもやをくらん 071381　みやこにてめづらしく見るはつゆきのよし野のやまにふりにけるかな 071382　みよし野のやまのしらゆきつもるらしふるさとさむくなりまさるなり 071383　ゆきふれば木ごとにはなぞさきにけりいづれをむめとわきておらまし 071386　おほぞらの月のひかりのさむければかげみしみづぞまづはこほれる 071390　やまかげのみぎはまされるはるかぜはたにのこほりもけふやとくらん 071392　みやまにはあられふるらしとやまなるまさきのかづらいろづきにける 071395　あらたまのとしもくれなばつくりつるつみものこらずなりやしぬらん 071396　かぞふればわが身につもるとし月ををくりむかふとなにいそぐらん 071396　としのうちにつくれるつみはかきくらしふるしらゆきとともにきえなん 072401　あきかぜのふくにつけてもとはぬかなをぎの葉ならばをとはしてまし 072402　ほのヾヾとありあけの月のつきかげにもみぢふきおろすやまおろしの風 072409　よそにのみ見てやゝみなんかづらきのたかまのやまのみねのしらゆき 072415　かすみはれみどりのそらものどけくてあるかなきかにあそぶいとゆふ 072420　あかつきのなからましかばしらつゆのをきてわびしきわかれせましや 072427　ときはなるまつのみどりもはるくればいまひとしほのいろまさりけり 072428　われ見てもひさしくなりぬすみよしのきしのひめまついく代へぬらん 072429　あまくだるあらひとがみのあひおいのおもへばひさしすみよしのまつ 072434　世にふればことの葉しげきくれたけのうきふしごとにうぐひすぞなく 072434　しぐれするをとはすれどもくれたけのなどよとゝもにいろもかはらぬ 072441　おほあらきのもりのしたくさおひぬればこまもすさめずかるひともなし 072442　やかずともくさはもえなんかすが野をたゞはるの日にまかせたらなん 072451　わかのうらにしほみちくればかたをなみあしべをさしてたづなきわたる 072452　おほぞらにむれたるたづのさしながらおもふこゝろのありげなるかな 072453　あまつかぜふけゐのうらにゐるたづのなどかくも井にかへらざるべき 072461　わびしらにましらなゝきそあしひきのやまのかひあるけふにやはあらぬ 072469　ことのねにみねのまつかぜかよふらしいづれのをよりしらべそめけん 072478　いつはりのなき世なりせばいかばかりひとのことの葉うれしからまし 072490　ありあけのこゝちこそすれさかづきのひかりもそひていでぬとおもへば 072496　なのみしてやまはみかさもなかりけりあさひゆふひのさすにまかせて 072497　くものいるこしのしら山をひにけりおほくのとしのゆきつもりつゝ 072498　見わたせばまつのはしろきよし野やまいく世つもれるゆきにかあるらん 072509　神なみのみむろのきしやくづるらんたつたのかはのみかさまさりて 072520　としをへてはなのかゞみとなるみづはちりかゝるをやくもるといふらん 072520　みなかみのさだめてければきみが代のふたゝびすめるほりかはのみづ 072526　みかきもりそのたくひにはあらねどもわれもこゝろのうちにこそまて 072527　こゝにだにひかりさやけき秋の月くものうへこそおもひやらるれ 072529　いそのかみふるきみやこをきて見ればむかしかざしゝはなさきにけり 072537　きみなくてあれたるやどのいたまよりつきのもるにもそではぬれけり 072538　きみなくてけぶりたえにししほがまのうらさびしくも見えわたるかな 072539　いにしへはちるをやひとのおしみけんいまははなこそむかしこふらし 072553　ぬれてほすやまぢのきくの露のまにいかでかわれはちよをへぬらむ 072563　やまざとはものさびしかることはあれどよのうきよりはすみよかりけり 072564　山ざとはふゆぞさびしさまさりけるひとめもくさもかれぬとおもへば 072569　はるの田をひとにまかせてわれはたゞはなにこゝろをつくるけふかな 072570　ときすぎばさなへもいたくおひぬべしあめにもたごはさはらざりけり 072571　きのふこそさなへとりしかいつのまにいな葉もそよとあきかぜぞふく 072577　きみがやどわがやどわくるかきつばたうつろはぬまに見ん人もがな 072585　やまでらのいりあひかたのをとごとにけふもくれぬときくぞかなしき 072586　このもとをすみかとすればをのづからはなみるひとになりにけるかな 072603　このよにてぼだひのたねをうへつればきみがひくべきみとぞなりぬる 072602　あのくたら三みやく三ぼだいの仏たちわがたつそまにみやうがあらせ給へ 072601　ごくらくははるけきほどゝきゝしかどつとめていたるところなりけり 072600　いつしかときみにとおもひしわかなをばのりのためにぞけふはつみつる 072610　たらちねはかゝれとてしもむばたまのわがくろかみをなでずやありけん 072611　世の中のうしのくるまのなかりせばおもひのいへをいかでいでまし 072612　三わ川のきよきながれにすゝぎてしわがなをさらにまたやけがさん 072623　わがやどはみちもなきまであれにけりつれなきひとをまつとせしまに 072630　見わたせばやなぎさくらをこきまぜてみやこぞはるのにしきなりける 072638　おもひやるこゝろばかりはさはらじをなにへだつらんみねのしらくも 072639　としごとのはるのわかれをあはれともひとにをくるゝひとぞしりける 072640　いのちだにこゝろにかなふものならばなにかわかれのかなしかるべき 072647　ほのヾヾとあかしのうらのあさぎりにしまがくれゆくふねをしぞおもふ 072648　わたのはらやそしまかけてこぎ出ぬとひとにはつげよあまのつりぶね 072649　たよりあらばいかでみやこへつげやらんけふしらかはのせきはこえぬと 072652　おきなかのえざるかたなきつりぶねはあまやさきだつうをやさきだつ 072652　いかになをひとりもとはんあやしきはおもはぬなかのへさるまじきを 072664　なにはづにさくやこのはなふゆごもりいまははるべとさくやこのはな 072665　ちりぬればまたこんはるはさきぬべし千とせのゝちはきみをたのまん 072673　いかるがやとみのをがはのたえばこそわがおほきみのみなはわすれめ 072680　やまざくらあくまでいろを見つるかなはなちるべくもかぜふかぬよに 072688　たまくしげふたとせあはぬきみがみをあけながらやはあらんとすらむ 072692　たかき屋にのぼりて見ればけぶりたつたみのかまどはにぎはひにけり 072696　かぞいろはいかにあはれとおもふらん三とせになりぬあしたゝずして 072704　あしびきのやまがくれなるほとゝぎすきくひともなきねをやなくらん 072717　あまつかぜくものかよひぢふきとぢよをとめのすがたしばしとゞめん 072721　しらなみのよするなぎさに世をすぐるあまのこなればやどもさだめず 072731　ますかゞみそこなるかげにむかひゐてしらぬおきなにあふこゝちすれ 072732　いづくにか身をばよせましよの中にをひをいとはぬひとしなければ 072738　きみとわれいかなることをちぎりけんむかしのよこそしらまほしけれ 072739　たれをかもしるひとにせんたかさごのまつもむかしのともならなくに 072747　いにしへの野中のしみづぬるけれどもとのこゝろをしる人ぞくむ 072748　むかしをばかけじとおもへどかくばかりあやしくめにもみつなみだかな 072749　世の中にあらましかばとおもふひとのなきはおほくもなりにけるかな 072762　なにをして身のいたづらにをひぬらんとしのおもはんこともやさしく 072763　世の中はとてもかくてもおなじことみやもわらやもはてしなければ 072764　しばしだにへがたく見ゆるよの中はうらやましくもすめる月かな 072772　うれしさをむかしはそでにつゝみけるこよひは身にもあまりぬるかな 072775　きみがよはちよにやちよにさゞれいしのいはほとなりてこけのむすまで 072776　よろづよとみかさのやまぞよばふなるあめがしたこそたのしかるらし 072786　わがこひはゆくゑもしらずはてもなしあふをかぎりとおもふばかりぞ 072787　たのめつゝこぬよあまたになりぬればまたじとおもふぞまつにまされる 072788　いまこんといひしばかりにながつきのありあけの月をまちいでつるかな 072795　世の中をなにゝたとへんあさぼらけこぎゆくふねのあとのしらなみ 072797　すゑのつゆもとのしづくや世の中のをくれさきだつためしなるらん 072796　てにむすぶみづにやどれる月かげのあるかなきかのよにもすむかな 072803　しらヽヽししらけたるよの月かげにゆきふみわけてむめのはなおる 081003　としのうちにはるはきにけりひとゝせをこぞとやいはむことしとやいはん 081007　袖ひちてむすびしみづのこほれるをはるたつけふのかぜやとくらむ 081008　春たつといふばかりにやみよし野のやまもかすみてけさはみゆらむ 081015　いはそゝくたるひのうへのさはらびのもえいづるはるになりにけるかな 081016　やまかぜにとくるこほりのひまごとにうちいづる波やはるのはつはな 081017　みわたせばひらのたかねに雪消てわかなつむべく野はなりにけり 081017　見わたせばやなぎさくらをこきまぜてみやこぞはるのにしきなりける 081025　もゝしきのおほみや人はいとまあれやさくらかざしてけふもくらしつ 081026　はるはなをわれにてしりぬはなざかりこゝろのどけきひとはあらじな 081028　はるの夜のやみはあやなしむめのはないろこそみえねかやはかくるゝ 081033　ねのびしにしめつる野辺のひめこまつひかでやちよのかげをまたまし 081031　ねのびするのべにこまつのなかりせばちよのためしになにをひかまし 081032　ちとせまでかぎれるまつもけふよりは君にひかれて万代やへむ 081035　あすからはわかなつませむかたおかのあしたのはらはけふぞやくめる 081036　あすからはわかなつまむとしめし野にきのふもけふもゆきはふりつゝ 081037　ゆきてみぬ人もしのべとはるのゝにかたみにつめるわかなゝりけり 080044　みちとせになるてふもゝのことしよりはなさくはるにあふぞうれしき 081049　いたづらにすぐるつきひはおほけれど花みてくらすはるぞすくなき 081056　けふのみとはるをおもはぬときだにもたつことやすきはなのかげかは 081057　はなもみなちりぬるやどはゆく春のふるさとゝこそなりぬべらなれ 081058　またもこむときぞとおもえどたのまれぬわがみにしあらばおしきはるかな 081062　さくらばなはるくわゝれるとしだにもひとのこゝろにあかれやはする 081072　あらたまのとしたちかへるあしたよりまたるゝものはうぐひすのこゑ 081074　うぐひすのこゑなかりせばゆきゝゑぬやまざといかにはるをしらまし 081073　あさみどりはるたつそらにうぐひすのはつこゑまたぬひとはあらじな 081077　きのふこそとしはくれしかはるがすみかすがの山にはやたちにけり 081078　はるがすみたてるやいづこみよしのゝよしのゝやまにゆきはふりつゝ 081079　あさひさすみねのしらゆきむらぎえてはるのかすみはたなびきにけり 081085　さくらがりあめはふりきぬおなじくはぬるともはなのかげにかくれむ 081086　あをやぎのゑだにかゝれるはるさめはいともてぬけるたまかとぞみる 081093　いにしとしねこじてうへしわがやどのわかぎのむめははなさきにけり 081094　わがせこにみせんとおもひし梅の花それともみえずゆきのふれゝば 081095　かをとめてたれおらざらんむめのはなあやなしかすみたちなかくしそ 081100　きみならでたれにかみせんむめのはないろをもかをもしるひとぞしる 081101　いろかをばおもひもいれず梅のはなつねならぬよによそへてぞみる 081110　あをやぎのいとよりかくるはるしもぞみだれてはなはほころびにけり 081112　あをやぎのまゆにこもれるいとなればはるのくるにぞいろまさりける 081123　世中にたえてさくらのなかりせばはるのこゝろはのどけからまし 081124　わがやどのはなみがてらにくる人はちりなむのちぞこひしかるべき 081125　みてのみやひとにかたらむ山ざくらてごとにをりていへづとにせん 081131　さくらちるこのしたかぜはさむからでそらにしられぬゆきぞふりける 081132　とのもりのとものみやつこ心あらばこのはるばかりあさぎよめすな 081135　おもひいづるときはの山の岩つゝじいわねばこそあれ恋しき物を 081138　河津なく神なみがはにかげみえていまやさくらんやまぶきのはな 081139　わがやどのやえ山ぶきはひとへだにちりのこらなむはるのかたみに 081143　ときわなる松のなだてにあやなくもかゝれるふぢのさきてちるかな 081142　たごの浦そこさへにほふふぢなみをかざしてゆかむみぬひとのため 081146　はなのいろにそめしたもとのおしければころもかへうきけふにもあるかな 081149　わがやどのかきねやはるをへだつらむなつきにけりとみゆるうの花 081153　なつの夜をねぬにあけぬといひをきしひとは物をやおもはざりけむ 081154　ほとゝぎすなくやさつきのみじかよにひとりしぬればあかしかねつゝ 081155　なつの夜はふすかとすればほとゝぎすなくひとこゑにあくるしのゝめ 081157　わかごまとけふにあひくるあやめぐさおひをくるゝやまくるなるらん 081158　きのふまでよそにおもひしあやめぐさけふわがやどのつまとなるかな 081165　すゞしやと草むらごとにたちよればあつさぞまさるとこなつの花 081166　したくるゝみづにあきこそかよふらしむすぶいづみのてさへすゞしき 081167　まつかげにいは井の水をむすびあげてなつなきとしとおもひけるかな 081169　なつはつるあふぎとあきのしらつゆといづれかさきにおきまさるらむ 081170　ねぎごともきかずあらぶる神だにもけふはなごしのはらへなりけり 081173　さつきまつはなたちばなのかをかげばむかしのひとの袖のかぞする 081174　ほとゝぎすはなたちばなにかをとめてなくはむかしのひとや恋しき 081181　はちす葉のにごりにしまぬこゝろもてなどかはつゆを玉とあざむく 081183　さつきやみおぼつかなきにほとゝぎすなくなるこゑのいとゞはるけき 081184　ゆきやらで山路くらしつほとゝぎすいまひとこゑのきかまほしさに 081185　さよふけてねざめざりせばほとゝぎすひとづてにこそきくべかりけれ 081190　くさふかきあれたるやどのともしびの風にきえせぬほたるなりけり 081191　つゝめどもかくれぬものはなつむしの身よりあまれるおもひなりけり 081197　なつ山のみねのこずえのたかければそらにぞせみのこゑはきこゆる 081198　これを見よひともとがめぬこひすとてねをなくむしのなれるすがたよ 081201　あまのがはヽヽせすゞしきたなばたにあふぎのかぜをなをやかさまし 081202　あまのがはあふぎのかぜにきりはれてそらすみわたるかさゝぎのはし 081203　きみがてにまかするあきのかぜなればなびかぬ草もあらじとぞおもふ 081206　あきゝぬとめにはさやかにみえねどもかぜのをとにぞおどろかれぬる 081207　うちつけに物ぞかなしきこの葉ちるあきのはじめをけふぞとおもへば 081211　あきたちていくかもあらぬとこのねぬるあさけのかぜはたもとすゞしき 081220　としごとにあふとはすれどたなばたのぬる夜のかずぞすくなかりける 081218　あまの河とをきわたりにあらねどもきみがつなではとしにこそまて 081219　ひとゝせにひとよとおもへどたなばたのあひみるあきのかぎりなきかな 081228　うづらなくいはれのゝ辺のあきはぎをおもふ人ともみつるけふかな 081229　あきはなをゆふまぐれこそたゞならねおぎのうはかぜはぎのした露 081232　おぐらやまふもとの野辺の花すゝきほのかにみゆるあきのゆふぐれ 081238　あしびきのやまどりのをのしだりをのながヽヽしきよをひとりかもねむ 081239　むつごともまだつきなくにあけにけりいづらはあきのながしてふよは 081251　みづのおもにてる月なみをかぞふればこよひぞあきのもなかなりける 081258　あまのはらふりさけみればかすがなるみかさのやまにいでし月かも 081259　しらくもにはねうちかはしとぶかりのかずさへみゆるあきの夜の月 081260　よにふればものおもふとしもなけれどもつきにいくたびながめしつらむ 081265　わがやどのきくのしらつゆけふごとにいく世つもりてふちとなるらん 081272　ひさかたのくものうへにてみるきくはあまつほしとぞあやまたれける 081273　こゝろあてにおらばやおらむはつしものをきまどはせるしらぎくのはな 081277　やまさびしあきもくれなばつぐるかもまきの葉ごとにをけるあさしも 081278　くれてゆくあきのかた見にをくものはわがもとゆひのしもにぞありける 081280　おみなへしおほかる野辺にやどりせばあやなくあだのなをやたゝまし 081281　をみなめしみるにこゝろはなぐさまでいとゞむかしのあきの恋しき 081283　あきの野にはぎかるをのこなわをなみねるやねりそのくだけてぞ思 081284　うつろはむことだにおしきあきはぎをおれるばかりにをけるつゆかな 081285　あきの野にはぎの錦をふる里にしかのねながらうつしてしがな 081290　ぬしゝらぬかはにほひつゝあきの野にたがぬぎかけしふぢばかまぞも 081293　おぼつかなたれとかしらむあきゞりにたえまにみゆるあさがほの花 081294　あさがほをなにはかなしとおもふらむひとをもはなはさこそみるらめ 081299　ちりをだにすへじとおもふうへしよりいもとわがぬるとこなつのはな 081300　はなによりものをぞおもふ白露のをくにもいかゞあらむとすらむ 081305　しら露もしぐれもいたくもる山はした葉のこらずもみぢしにけり 081306　むらヽヽのにしきとぞみるさほやまのはゝそのもみぢきりたゝぬまは 081314　あすかゞはもみぢ葉ながるかづらきのやまのあきかぜふきぞしぬらし 081315　かみな月しぐれとともにかみなみのもりのこの葉はふりにこそふれ 081316　みる人もなくてちりぬるおく山のもみぢはよるのにしきなりけり 081324　あきかぜにはつかりがねぞきこゆなるたがたまづさをかけてきつらむ 081326　はるがすみたつをみすてゝゆくかりははななきさとにすみやならへる 081332　いまこむとたれたのめけむあきの夜をあかしかねつゝまつむしのこゑ 081333　きりヾヾすいたくなゝきそ秋の夜のながきうらみはわれぞまされる 081336　もみぢせぬとき葉のやまにすむしかはをのれなきてやあきをしるらむ 081337　ゆふづくよをぐらのやまになく鹿のこゑのうちにやあきをしるらむ 081340　さほしかのあさたつをのゝ秋はぎをたまとみるまでおけるしらつゆ 081343　あさぎりのふもとをこめてたちぬればそらにぞあきの山はみえける 081344　たがためのにしきなればかかはぎりのさをのやま辺をたちかくすらむ 081351　からころもうつこゑきけば月きよみまだねぬひとを空にしる哉 081355　神無月ふりみふらずみさだめなきしぐれぞ冬のはじめなりける 081358　おもひかねいもがりゆけば冬のよのかわかぜさむみちどりなくなり 081361　ゆくとしのをしくもあるかなますかゞみみるかげさへにくれぬとおもへば 081366　うづみびのしたにこがれし時よりもかくにくまるゝおりぞかなしき 081373　夜をさむみねざめてきけばをしぞなくはらひもあえずしもやをくらむ 081381　みやこにてめづらしく見るはつゆきのよしのゝやまにふりにけるかな 081382　みよしのゝやまのしらゆきつもるらしふるさとさむくなりまさるなり 081383　ゆきふればきごとにはなぞさきにけるいづれをむめとわきておらまし 081386　おほ空の月のひかりのさむければかげ見し水ぞまづはこほれる 081390　やまかげのみぎわまされるはるかぜにたにのこほりもけふやとくらむ 081392　みやまにはあられふるらしとやまなるまさきのかづらいろづきにけり 081395　あらたまのとしもくれなばつくりつるつみものこらずなりやしぬらん 081396　かぞふればわが身につもるとしつきををくりむかふとなにいそぐらん 081397　としのうちにつくれるつみはかきくらしふるしらゆきとともにきえなむ 082401　あきかぜのふくにつけてもとはぬかなをぎの葉ならばおとはしてまし 082402　ほのヾヾとありあけの月のつきかげにもみぢふきをろすやまをろしの風 082409　よそにのみ見てやゝみなんかづらきのたかまの山のみねのしら雲 082415　かすみはれみどりのそらものどけくてあるかなきかにあそぶいとみゆ 082420　あかつきのなからましかばしらつゆのおきてわびしきわかれせましや 082427　とき葉なるまつのみどりも春くればいまひとしをの色まさりけり 082428　われみてもひさしくなりぬ住吉のきしのひめまついく世へぬらん 082429　あまくだるあら人がみのあひをひをおもへばひさしすみよしのまつ 082434　よにふればことの葉しげきくれ竹のうきふしごとにうぐひすぞなく 082434　しぐれするおとはすれどもくれたけのなどよとゝもにいろもかはらぬ 082441　おほあらきのもりのした草おひぬればこまもすさみずかる人もなし 082442　やかずとも草はもゑなむかすがのをたゞはるのひにまかせたらなん 082451　わかの浦に塩みちくればかたをなみあしべをさしてたづなきわたる 082452　おほぞらにむれたるたづのさしながらおもふこゝろのありげなるかな 082453　あまつかぜふけゐのうら浦にゐるたづのなどか雲井にかへらざるべき 082461　わびしらにましらなゝきそ足曳のやまのかひあるけふにやはあらぬ 082469　ことのねにみねのまつかぜかよふらしいづれのをよりしらべそめけむ 082478　いつわりのなき世なりせばいかばかりひとのことの葉うれしからまし 082490　ありあけのこゝちこそすれさかづきのひかげもそひていでぬとおもへば 082496　なのみしてやまはみかさもなかりけりあさひゆふひのさすにまかせて 082497　くものいるこしのしら山をゐにけりおほくのとしのゆきつもりつゝ 082498　見わたせばまつの葉しろきよしの山いくよつもれるゆきにかあるらん 082509　神なみのみむろのきしやくづるらむたつたのかはのみかさまさりて 082520　としをへてはなのかゞみとなるみづはちりかゝるをやくもるといふらむ 082520　みなかみのさだめてければきみがよのふたゝびすめるほりかはのみづ 082526　みかきもりそのたくひにはあらねどもわれもこゝろのうちにこそまて 082527　こゝにだにひかりさやけきあきの月くものうへこそおもひやらるれ 082529　いそのかみふるきみやこをきてみればむかしかざしゝはなさきにけり 082537　きみなくてあれたるやどのいたまよりつきのもるにも袖はぬれけり 082538　きみなくてけぶりたえにし塩がまのうらさびしくもみえわたるかな 082539　いにしへはちるをやひとのをしみけんいまははるこそむかしこふらし 082553　ぬれてほすやまぢのきくのつゆのまにいかでかわれはちよをへぬらん 082563　やまざとはものさびしかることはあれどよのうきよりはすみよかりけり 082564　山里はふゆぞさびしさまさりけるひとめもくさもかれぬとおもへば 082569　はるのたをひとにまかせてわれはたゞはなに心をつくるけふかな 082570　ときすぎばさなへもいたくおひぬべしあめにもたごはさわらざりけり 082571　きのふこそさなへとりしかいつのまにいな葉もそよとあきかぜぞふく 082577　君がやどわがやどわくるかきつばたうつろはぬまにみむ人もがな 082585　やまでらのいりあひのかねの音ごとにけふもくれぬときくぞかなしき 082586　このもとをすみかとすればおのづからはなみるひとになりにけるかな 082600　この世にてぼだひのたねをうへつればきみがひくべき身とぞなりぬる 082601　阿のく多羅三みやく三ぼだいの仏たちわがたつそまにみやうがあらせたまへ 082602　ごくらくははるけきほどゝきゝしかどつとめていたるところなりけり 082603　いつしかと君にとおもひしわかなをばのりのためにぞけふはつみつる 082610　たらちねはかゝれとてしもむばたまのわがくろかみをなでずやありけん 082611　世の中のうしのくるまのなかりせばおもひのいへをいかでいでまし 082612　みわ川のきよきながれにすゝぎてしわがなをさらにまたやけがさむ 082623　我やどは道もなきまであれにけりつれなき人をまつとせしまに 082630　見わたせば柳さくらをこきまぜてみやこぞはるのにしきなりける 082638　おもひやる心ばかりはさはらじを何へだつらんみねのしら雲 082639　としごとの春の別をあはれとも人におくるゝ人ぞしりける 082640　いのちだに心にかなふ物ならばなにかわかれのかなしからまし 082647　ほのヾヾとあかしのうらのあさぎりにしまがくれゆくふねをしぞ思 082648　わたのはらやそしまかけてこぎ出ぬとひとにはつげよあまのつりぶね 082649　たよりあらばいかでみやこへつげやらんけふしらかはのせきはこえぬと 082652　おきなかのえざるかたなきつりぶねはあまやさきだつうをやさきだつ 082652　いかになをひとにもとはむあやしきはおもはぬなかのへさるまじきを 082664　なにはづにさくやこのはな冬ごもりいまははるべとさくやこのはな 082665　ちりぬればまたこむはるはさきぬべし千とせのゝちはきみをたのまむ 082673　いかるがやとみのをがはのたえばこそわがおほきみのみなはわすれめ 082680　やまざくらあくまでいろをみつるかな花ちるべくもかぜふかぬよに 082688　たまくしげふたとせあはぬきみが身をあけながらやはあらんとすらん 082692　たかき屋にのぼりてみればけぶりたつたみのかまどはにぎわひにけり 082696　かぞいろはいかにあはれとおもふらむみとせになりぬあしたゝずて 082704　あしびきのやまがくれなるほとゝぎすきくひともなきねをやなくらん 082717　あまつかぜくものかよひぢふきとぢよをとめのすがたしばしとゞめむ 082721　しらなみのよするなぎさに世をすぐるあまのこなればやどもさだめず 082731　ますかゞみそこなるかげにむかいゐてしらぬをきなにあふこゝちすれ 082732　いづくにか身をばよせましよの中におひをいとわぬひとしなければ 082738　きみとわれいかなることをちぎりけむむかしの代こそしらまほしけれ 082739　たれをかもしる人にせむ高砂のまつもむかしのともならなくに 082747　いにしへの野中のしみづぬるけれどもとのこゝろをしるひとぞくむ 082748　むかしをばかけじとおもへどかくばかりあやしくめにもみつなみだかな 082749　世の中にあらましかばとおもふ人のなきはおほくもなりにけるかな 082762　なにをしてみのいたづらにおひぬらんとしのおもはむこともやさしく 082763　よのなかはとてもかくてもおなじことみやもわらやもはてしなければ 082764　しばしだにへがたくみゆるよのなかにうらやましくもすめる月かな 082772　うれしさをむかしはそでにつゝみけりこよひはみにもあまりぬるかな 082775　きみがよはちよに在さゞれいしのいわほとなりてこけのむすまで 082776　よろづよとみかさのやまぞよばふなるあめのしたこそたのしかるらし 082786　わがこひはゆくゑもしらずはてもなしあふをかぎりとおもふばかりぞ 082787　たのめつゝこぬよあまたになりぬればまたじとおもふぞまつにまされる 082788　いまこむといひしばかりになが月のありあけの月をまちでつるかな 082795　世の中をなにゝたとゑむあさぼらけこぎゆくふねのあとのしら波 082797　すゑのつゆもとのしづくやよの中のをくれさきだつためしなるらむ 082796　手にむすぶみづにやどれるつきかげのあるかなきかのよにもすむかな 082803　しらヽヽししらけたるかな月影にゆきふみわけてむめの花をる 091003　としのうちにはるはきにけりひとゝせをこぞとやいはむことしとやいはん 091007　袖ひちてむすびし水のこほれるをはるたつけふのかぜやとくらむ 091008　春たつといふばかりにやみよし野のやまもかすみてけさはみゆらむ 091015　いはそゝくたるひのうへのさはらびのもえいづるはるになりにけるかな 091016　やまかぜにとくるこほりのひまごとにうちいづる浪やはるのはつ花 091017　みわたせばひらのたかねにゆきゝへてわかなつむべく野はなりにけり 091017　見わたせば柳さくらをこきまぜてみやこぞはるのにしきなりける 091025　もゝ敷のおほみや人はいとまあれやさくらかざしてけふもくらしつ 091026　はるはなをわれにてしりぬはなざかりこゝろのどけき人はあらじな 091028　はるの夜のやみはあやなしむめのはないろこそみえねかやはかくるゝ 091033　ねのびしにしめつる野べのひめこまつひかでやちよのかげをまたまし 091031　ねのびするのべにこまつのなかりせばちよのためしになにをひかまし 091032　ちとせまでかぎれるまつもけふよりは君にひかれてよろづよやへん 091035　あすからはわかなつませむかたおかのあしたのはらはけふぞやくめる 091036　あすからはわかなつまむとしめし野にきのふもけふもゆきはふりつゝ 091037　ゆきてみぬ人もしのべとはるのゝにかたみにつめるわかなゝりけり 091044　みちとせになるてふもゝのことしよりはなさくはるにあふぞうれしき 091049　いたづらにすぐるつきひはおほけれど花みてくらすはるぞすくなき 091056　けふのみとはるを思はぬときだにもたつことやすきはなのかげかは 091057　はなもみなちりぬるやどはゆく春のふるさとゝこそなりぬべらなれ 091058　またもこむときぞとおもえどたのまれぬわがみにしあらばおしき春かな 091062　さくらばな春くわゝれるとしだにもひとのこゝろにあかれやはする 091072　あらたまのとしたちかへるあしたよりまたるゝものはうぐひすのこゑ 091073　あさみどりはるたつそらに鴬のはつこゑまたぬ人はあらじな 091074　うぐひすのこゑなかりせばゆきゝゑぬやまざといかに春をしらまし 091077　きのふこそとしはくれしかはるがすみかすがの山にはやたちにけり 091078　はるがすみたてるやいづこみよしのゝよしのゝやまにゆきはふりつゝ 091079　あさひさすみねのしらゆきむら消てはるのかすみはたなびきにけり 091085　さくらがりあめはふりきぬおなじくはぬるともはなのかげにかくれむ 091086　あをやぎのえだにかゝれるはるさめはいともてぬけるたまかとぞみる 091093　いにしとしねこじてうへしわがやどのわかきのむめははなさきにけり 091094　わがせこにみせんとおもひしむめの花それともみえずゆきのふれゝば 091095　かをとめてたれおらざらんむめのはなあやなしかすみたちなかくしそ 091100　きみならでたれにかみせんむめのはないろをもかをもしるひとぞしる 091101　いろかをばおもひもいれず梅のはなつねならぬよによそへてぞみる 091110　あをやぎのいとよりかくるはるしもぞみだれてはなはほころびにけり 091112　あをやぎのまゆにこもれるいとなればはるのくるにぞいろまさりける 091123　世中にたへてさくらのなかりせばはるのこゝろはのどけからまし 091124　わがやどのはなみがてらにくる人はちりなむのちぞこひしかるべき 091125　みてのみやひとにかたらむ山ざくら手ごとにをりていへづとにせん 091131　さくらちるこのしたかぜはさむからでそらにしられぬゆきぞふりける 091132　とのもりのとものみやつこ心あらばこのはるばかりあさぎよめすな 091139　おもひいづるときはのやまのいはつゝじいわねばこそあれ恋しきものを 091142　河津なく神なみがはにかげみえていまやさくらんやまぶきのはな 091143　わがやどのやえ山ぶきはひとゑだにちりのこらなむはるのかたみに 091135　たごの浦そこさへにほふゝぢなみをかざしてゆかむ見ぬひとのため 091136　ときわなるまつのなだてにあやなくもかゝれるふぢのさきてちるかな 091146　はなのいろにそめしたもとのおしければころもかへうきけふにもあるかな 091149　わがやどのかきねやはるをへだつらむなつきにけりとみゆるうのはな 091153　なつの夜をねぬにあけぬといひをきしひとは物をやおもはざりけむ 091154　ほとゝぎすなくやさつきのみじかよもひとりしぬればあかしかねつも 091155　なつの夜はふすかとすれど郭公なくひとこゑにあくるしのゝめ 091157　わかごまとけふにあひくるあやめぐさこひをくるゝやまくるなるらん 091158　きのふまでよそにおもひしあやめぐさけふわがやどのつまとなる哉 091165　すゞしやとくさむらごとに立よればあつさぞまさるとこなつの花 091166　したくゝるみづに秋こそかよふらしむすぶいづみのてさへすゞしき 091167　まつかげにいは井の水をむすびあげてなつなきとしとおもひけるかな 091169　なつはつるあふぎとあきのしらつゆといづれかさきにおきまさるらむ 091170　ねぎごともきかずあらぶる神だにもけふはなごしのはらへなりけり 091173　さつきまつはなたちばなのかをかげばむかしのひとのそでのかぞする 091174　ほとゝぎすはなたちばなのかをとめてなくはむかしのひとや恋しき 091181　はちす葉のにごりにしまぬこゝろもてなどかはつゆをたまとあざむく 091183　さつきやみおぼつかなきにほとゝぎすなくなるこゑのいとゞはるけき 091184　ゆきやらでやまぢくらしつほとゝぎすいまひとこゑのきかまほしさに 091185　さ夜ふけてねざめざりせばほとゝぎすひとづてにこそきくべかりけれ 091190　草深き荒たるやどのとぼしびのかぜにきえせぬほたるなりけり 091191　つゝめどもかくれぬものはなつむしの身よりあまれるおもひなりけり 091197　なつ山のみねのこずえのたかければ空にぞせみのこゑはきこゆる 091198　これを見よひともとがめぬ恋すとてねをなくむしのなれるすがたよ 091201　あまのがはヽヽせすゞしきたなばたにあふぎのかぜをなをやかさまし 091202　あまのがはあふぎのかぜにきりはれてそらすみわたるかさゝぎのはし 091203　きみがてにまかするあきのかぜなればなびかぬ草もあらじとぞおもふ 091206　あきゝぬとめにはさやかにみえねどもかぜのをとにぞおどろかれぬる 091207　うちつけに物ぞかなしきこの葉ちるあきのはじめをけふぞとおもへば 091211　秋たちていくかもあらぬとこのねぬるあさけのかぜはたもとすゞしも 091218　あまの河とをきわたりにあらねどもきみがふなではとしにこそまて 091219　ひとゝせにひとよとおもへどたなばたのあひみるあきのかぎりなきかな 091220　としごとにあふとはすれどたなばたのぬる夜のかずぞすくなかりける 091228　うづらなくいはれのゝ辺のあきはぎをおもふ人ともみつるけふかな 091229　あきはなをゆふまぐれこそたゞならねおぎのうはかぜ萩のした露 091232　おぐら山ふもとのゝ辺の花すゝきほのかにみゆるあきの夕ぐれ 091238　あしひきのやまどりのをのしだりをのながヽヽしよをひとりかもねむ 091239　むつごとのまだつきなくにあけにけりいづらはあきのながしてふよは 091251　みづのおもにてる月なみをかぞふればこよひぞあきのもなかなりける 091258　あまのはらふりさけみればかすがなるみかさのやまにいでし月かも 091259　しらくもにはねうちかはしとぶかりのかずさへみゆるあきの夜の月 091260　よにふればものおもふとしはなけれどもつきにいくたびながめしつらむ 091265　わがやどのきくのしらつゆけふごとにいく世つもりてふちとなるらむ 091272　ひさかたのくものうへにてみる菊はあまつほしとぞあやまたれける 091273　こゝろあてにおらばやおらん初霜のをきまどはせるしらぎくのはな 091277　やまさびしあきもくれなばつぐるかもまきの葉ごとにをけるあさしも 091278　くれてゆくあきのかた見にをくものはわがもとゆひのしもにぞありける 091280　おみなへしおほかる野辺にやどりせばあやなくあだのなをやたゝまし 091281　をみなめし見るに心はなぐさまでいとゞむかしの秋ぞ恋しき 091283　秋のゝにはぎかるをのこなわをなみねるやねりそのくだけてぞ思 091284　うつろはむことだにおしきあきはぎをおれるばかりにをけるつゆかな 091285　あきの野にはぎのにしきをふるさとにしかのねながらうつしてしがな 091290　ぬしゝらぬかはにほひつゝあきのゝにたがぬぎかけしふぢばかまぞも 091293　おぼつかなたれとかしらむあきゞりにたえまにみゆるあさがほの花 091294　あさがほをなにはかなしとおもふらむひとをもはなはさこそみるらめ 091299　ちりをだにすえじとおもふうへしよりいもとわがぬるとこなつのはな 091300　はなによりものをぞおもふしらつゆのをくにもいかゞあらんとすらむ 091305　しら露もしぐれもいたくもる山はした葉のこらずもみぢしにけり 091306　むらヽヽのにしきとぞ見るさほ山のはゝそのもみぢきりたゝぬまは 091314　あすかゞはもみぢ葉ながるかづらきの山のあきかぜふきぞしぬらし 091315　かみな月しぐれとゝもにかみなみのもりのこのははふりにこそふれ 091316　見る人もなくて散ぬるおく山のもみぢはよるのにしきなりけり 091324　あきかぜにはつかりがねぞきこゆなるたがたまづさをかけてきつらん 091326　はるがすみたつをみすてゝゆくかりははなゝきさとにすみやならへる 091332　いまこむとたれたのめけむ秋の夜をあかしかねつゝまつむしのこゑ 091333　きりヾヾすいたくなゝきそ秋のよのながきうらみはわれぞまされる 091336　もみぢせぬ常盤の山にすむしかはをのれなきてや秋をしるらん 091337　ゆふづくよをぐらのやまになくしかのこゑのうちにやあきをしるらむ 091340　さほしかのあさたつをのゝあき萩にたまと見るまでおけるしらつゆ 091343　あさぎりのふもとをこめてたちぬればそらにぞ秋のやまはみえける 091344　たがためのにしきなればかゝはぎりのさほの山辺をたちかくすらん 091351　からころもうつこへきけば月きよみまだねぬ人をそらにしるかな 091355　神無月ふりみふらずみさだめなきしぐれぞ冬のはじめなりける 091358　おもひかねいもがりゆけば冬のよのかわかぜさむみちどりなくなり 091361　ゆくとしのをしくも有哉ますかゞみみるかげさへにくれぬとおもへば 091366　うづみびのしたにこがれし時よりもかくにくまるゝをりぞかなしき 091373　夜を寒みね覚てきけばをしぞ鳴はらひもあへず霜やをくらん 091381　都にてめづらしとみるはつゆきのよしのゝ山にふりにけるかな 091382　みよしのゝやまのしらゆき積らしふるさとさむくなりまさる也 091383　ゆきふればきごとにはなぞさきにけるいづれをむめとわきておらまし 091386　おほぞらの月の光のさむければかげ見し水ぞまづはこほれる 091390　山かげのみぎわまされるはるかぜにたにの氷もけふやとくらむ 091392　みやまにはあられふるらしとやまなるまさきのかづらいろづきにけり 091395　あらたまのとしもくれなばつくりつるつみものこらずなりやしぬらん 091396　かぞふればわが身につもるとしつきををくりむかふとなにいそぐらむ 091396　としのうちにつくれるつみはかきくらしふるしらゆきとゝもにきえなむ 092401　あきかぜのふくにつけてもとはぬ哉をぎの葉ならばおとはしてまし 092402　ほのヾヾとありあけの月のつきかげにもみぢふきをろすやまをろしの風 092409　よそにのみゝてやゝみなむかづらきのたかまの山のみねのしら雲 092415　かすみはれみどりの空ものどけくてあるかなきかにあそぶいといふ 092420　あかつきのなからましかばしらつゆのおきてわびしきわかれせましや 092427　とき葉なるまつのみどりも春くればいまひとしをの色まさりけり 092428　われ見てもひさしくなりぬ住吉のきしのひめまついく世へぬらん 092429　あまくだるあら人がみのあひをひのおもへば久しすみよしのまつ 092434　よにふればことの葉しげきくれたけのうきふしごとにうぐひすぞなく 092434　しぐれするおとはすれどもくれたけのなどよとゝもにいろもかはらぬ 092441　おほあらきのもりの下草をひぬればこまもすさめずかるひともなし 092442　やかずとも草はもえなむかすがのをたゞはるのひにまかせたらなむ 092451　わかの浦にしほみちくればかたをなみあしべをさしてたづなきわたる 092452　おほぞらにむれたるたづのさしながらおもふこゝろのありげなるかな 092453　あまつかぜふけゐのうらにゐるたづのなどか雲井にかへらざるべき 092461　わびしらにましらなゝきそあし曳のやまのかひあるけふにやはあらぬ 092469　ことのねにみねのまつかぜかよふらしいづれのをよりしらべそめけむ 092478　いつはりのなき世なりせばいかばかりひとのことの葉うれしからまし 092490　ありあけのこゝちこそすれさかづきのひかげもそひていでぬとおもへば 092496　なのみしてやまはみかさもなかりけりあさ日ゆふひのさすにまかせて 092497　くものいるこしのしら山をゐにけりおほくのとしのゆきつもりつゝ 092498　見わたせばまつの葉しろきよしの山いく世つもれるゆきにかあるらん 092509　神なみのみむろの岸やくづるらむたつたの川のみかさみかさまさりて 092520　としを経て花のかゞみと成水は散かゝるをや曇といふらむ 092520　みなかみのさだめてければ君が代のふたゝびすめるほり川の水 092526　御垣守そのたくひにはあらね共われもこゝろのうちにこそまて 092527　こゝにだにひかりさやけき秋の月雲のうへこそおもひやらるれ 092529　いそのかみふるきみやこをきてみればむかしかざしゝはなさきにけり 092537　きみなくてあれたるやどのいたまよりつきのもるにも袖はぬれけり 092538　きみなくてけぶりたえにししほがまのうらさびしくも見えわたる哉 092539　いにしへは散をやひとのおしみけむ今ははなこそむかしこふらし 092553　ぬれてほす山路の菊のつゆのまにいかでかわれはちよをへぬらん 092563　やまざとはものさびしかることはあれどよのうきよりはすみよかりけり 092564　やまざとはふゆぞさびしさまさりけるひとめもくさもかれぬとおもへば 092569　はるのたをひとにまかせてわれはたゞ花にこゝろをつくるけふかな 092570　ときすぎばさなへもいたくおひぬべしあめにもたごはさはらざりけり 092571　きのふこそさなへとりしかいつのまにいなばそよとあきかぜぞふく 092577　君がやどわがやどわくるかきつばたうつろはぬまにみむ人もがな 092585　やまでらの入相のかねの音ごとにけふもくれぬと聞ぞかなしき 092586　このもとをすみかとすればおのづから花見る人になりにけるかな 092603　この世にてぼだひのたねを植つればきみがひくべき身とぞなりぬる 092602　阿のく多羅三みやく三ぼだいの仏たちわがたつそまにみやうがあらせ給へ 092601　ごくらくははるけきほどゝ聞しかどつとめていたるところなりけり 092600　いつしかと君にとおもひしわかなをばのりのためにぞけふはつみつる 092610　たらちねはかゝれとてしもむば玉のわがくろかみはなでずや有けん 092611　世の中のうしの車のなかりせばおもひのいへをいかでいでまし 092612　みわ川のきよきながれにすゝぎてしわがなをさらにまたやけがさむ 092623　わが宿はみちもなきまで荒にけりつれなき人をまつとせし間に 092630　見わたせば柳桜をこきまぜて都ぞ春のにしきなりける 092638　おもひやる心計はさはらじをなにへだつらん峰の白雲 092639　としごとの春の別をあはれともひとにをくるゝ人ぞしりける 092640　いのちだにこゝろにかなふものならばなにかわかれのかなしかるべき 092647　ほのヾヾとあかしのうらのあさきりにしまがくれゆくふねをしぞ思 092648　わたのはらやそしまかけて漕出ぬとひとにはつげよあまのつりぶね 092649　たよりあらばいかで都へつげやらむけふしらかはのせきはこえぬと 092652　おきなかのへざるかたなきつりぶねはあまやさきだつうをやさきだつ 092652　いかになを人にもとはむあやしきはおもはぬなかのへさるまじきを 092664　なにはづにさくやこのはな冬ごもりいまははるべとさくやこのはな 092665　ちりぬればまたこむ春は咲ぬべし千とせのゝちはきみをたのまむ 092673　いかるがやとみのをがはのたえばこそわがおほきみのみなはわすれめ 092680　やまざくらあくまでいろをみつるかな花ちるべくもかぜふかぬまに 092688　たまくしげふたとせあはぬ君が身をあけながらやはあらんとすらむ 092692　たかきやにのぼりてみれば煙たつたみのかまどはにぎわひにけり 092696　かぞいろはいかにあはれとおもふらん三とせになりぬあしたゝずして 092704　あしびきのやまがくれなるほとゝぎすきくひともなきねをやなくらん 092717　あまつかぜ雲のかよひぢ吹とぢよおとめのすがたしばしとゞめん 092721　白浪のよするなぎさに世をすぐるあまのこなればやどもさだめず 092731　ますかゞみそこなるかげにむかひゐてしらぬをきなにあふこゝちすれ 092732　何くにか身をばよせまし世の中にをひをいとはぬひとしなければ 092738　きみとわれいかなることを契けむむかしの代こそしらまほしけれ 092739　たれをかもしる人にせん高砂のまつもむかしの友ならなくに 092747　いにしへの野中のしみづぬるけれどもとのこゝろをしるひとぞくむ 092748　むかしをばかけじとおもへどかくばかりあやしくめにもみつなみだ哉 092749　世の中にあらましかばとおもふ人のなきはおほくもなりにけるかな 092762　なにをして身のいたづらに老ぬらんとしのおもはむこともやさしく 092763　よの中はとてもかくてもおなじことみやもわらやもはてしなければ 092764　しばしだにへがたくみゆるよのなかにうらやましくもすめる月かな 092772　うれしさをむかしは袖につゝみけりこよひは身にもあまりぬるかな 092775　きみがよはちよにやちよにさゞれいしのいはほとなりてこけのむすまで 092776　万よとみかさのやまぞよばふなるあめのしたこそたのしかるらし 092786　我恋はゆくゑもしらずはてもなしあふをかぎりとおもふ計ぞ 092787　たのめつゝこぬよあまたに成ぬればまたじとおもふぞ待にまされる 092788　今来むといひしばかりに長月のありあけの月をまち出つる哉 092795　世の中をなにゝたとへむあさぼらけこぎゆくふねの跡のしら浪 092797　すゑのつゆもとの雫やよの中のおくれさきだつためし成らむ 092796　手にむすぶみづにやどれる月かげのあるかなきかの世にもすむかな 092803　しらヽヽししらけたる夜の月かげにゆきふみわけてむめの花をる